SBテクノロジー CX ユニットの児玉です。
昨今、動画をコーポレートサイトにアップする機会も多くなったかと思います。Web サイトのアクセシビリティ対応ついては必要性を認識されている方も多いと思いますが、動画についてはどうでしょうか。
2010年には全米ろう者協会(NAD)がストリーミングビデオに字幕が付いていないものがあるとして、Netflix を相手取って訴訟を起こしました。このように近年ではテキストや静止画だけでなく、動画についてもアクセシブルであることが求められています。
今回は動画をアップする際にアクセシビリティの観点から気を付けたいキャプションを中心にお伝えしたいと思います。
多様なユーザーに動画の内容を届けるにはどのような方法があるのでしょうか。デジタル庁による「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」では WCAG に基づき、音声・映像コンテンツに対するアクセシビリティ対応を下記のようにまとめています。
動画を設置する Web サイトや、再生するプレイヤーのアクセシビリティを確保するとともに、動画そのものにキャプション(字幕)や音声解説などの代替コンテンツを付与することが推奨されています。
それでは動画の代替コンテンツとは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。WCAG に沿って考えると次のようなものがあげられます。
1. キャプション
キャプション(字幕)は主に音声が聞こえない・出せない場合に有用な手段です。字幕というと外国映画の日本語字幕のように、動画内の会話やナレーションを文字に起こしたものを想像されるかもしれません。しかしアクセシビリティに配慮したキャプションでは、拍手、笑い声、効果音、音楽など、動画の理解に必要な情報であれば、人物が話した内容以外であっても文字として表す必要があります。
2. 書き起こしテキスト
書き起こしテキストは動画の内容をテキスト形式で表したもので、音声が聞こえない・出せない場合、画面が見にくい・見えない場合のいずれにも有用な手段です。後述する音声解説よりも多くの情報を提供することができ、またプレイヤーなどの機能的な制限でキャプションがつけられない場合にも利用されます。会話やナレーションはもちろん、音楽などの音声情報、登場人物の動きや表情などあらゆる視覚的な情報についても時系列で説明します。動画の脚本をイメージしていただくとよいかもしれません。動画プレイヤーのすぐ近くに、テキストデータへのリンクを設置するのがよいでしょう。
達成基準 1.2.3 音声解説、又はメディアに対する代替 (収録済)
3. 音声解説
音声解説は画面が見にくい・見えない場合に有用な手段です。テレビの副音声をイメージしていただければと思いますが、主音声では説明されていない動き、登場人物、シーンの変化、画面上の文字に関する情報を、会話の切れ目に音声で補足説明する方法です。副音声の機能を有しているテレビとは異なりWeb サイトではブラウザ上で複数の音声を切り替えるような動画再生機能の開発は難易度が高いため、音声解説ではなく書き起こしテキストで代替されることも多いです。
参照:
Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.1 ガイドライン 1.2 時間依存メディア
それではここからはキャプションについて詳しく見ていきたいと思います。Web 上の動画にキャプションを表示する方法はクローズドキャプションとオープンキャプションの2通りがあることをご存じでしょうか。
クローズドキャプションとは、プレイヤーの機能で動画に別データを重ねキャプションを表示する方法です。クローズドキャプションであれば、キャプション表示のオンオフや文字サイズの変更をユーザーが選択できます。また YouTube の自動字幕起こし機能など機械学習アルゴリズムによる自動化も始まっており、今後さらに提供が容易になることが期待されています。
一方オープンキャプションとは、動画編集の段階でキャプションの文字を画像として映像に埋め込む方法です。画像として作成することができるため、フォントのサイズや色など、デザインについても工夫することができます。
アクセシビリティの観点からオープンキャプションのデザインに対してできることは、基本的には Web サイトのデザインと同様になります。文字と背景の色のコントラスト比を4.5:1以上確保することが WCAG 2.1(JIS X 8341-3:2016)のレベル AAで定められているため、まずはその点を意識していただければと思います。ただし動画の場合は背景が変化するため、文字と背景の間に帯を敷く、文字に境界線をつけるなどの工夫が必要になります。境界線を用いる場合は、背景と境界線、または文字と境界線で4.5:1のコントラスト比が確保されていれば問題ないと考えられます。
いかがでしたでしょうか。動画のアクセシビリティ対応、中でもキャプションの役割について改めて整理できたかと思います。Web サイトだけではなく動画についても配慮をすることで、信頼感をさらに高めていくことができます。是非参考にしていただければと思います。
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