導入事例：株式会社HARP様

株式会社HARP は、2004年に北海道と市町村の共同アウトソーシングによる電子自治体の推進を目的とした北海道の政策「HARP構想」により設立された。

同社では、北海道と市町村が共同で構築した共同プラットフォーム「HARP基盤」を活用し、自治体職員や地域住民が利用する各種クラウドサービスの企画・開発から自治体向け IT コンサルティングまで、デジタルネットワーク社会にふさわしい自治体運営をサポートしており、現在では、北海道から沖縄まで、全国約400もの自治体が同社のサービスを利用している。

2020年からのコロナ禍以降、自治体においてもさまざまな業務のデジタル化、DX 化という動きが活発化している中、同社は自治体 DX 化のサポートを行うと同時に、自社の DX 化推進にも注力し、Microsoft 365 の利活用による情報共有、Web 会議のための環境整備などにも積極的に取り組んでいる。そのような取り組みの中でも重要な位置づけの一つに電子契約の導入があった。

「当社は年間約1,300件の契約をクライアントの自治体や民間企業と締結しています。紙の契約書は印刷、製本、押印、印紙税、郵送料、保管場所の確保などが必要かつ作業ややり取りにかかる時間的ロスもあります。やり取りは必ず人の手を介しますし、紛失や破損のリスクもあります。これらを軽減できないか検討した結果、契約書の電子化に着目しました」（総務部長 山崎氏）

同社では契約の電子化を図るため、まずは弁護士ドットコム株式会社が提供する『クラウドサイン』など複数の電子契約システムをピックアップし、比較検討を進めていくことにした。

電子契約システムの比較検討にあたり、同社では使い勝手とコスト、そして重要視していた Microsoft Teams（以下、Teams）との連携ができるかを確認していった。

比較検討のための情報収集は Web サイトを中心に行い、弁護士ドットコム主催の『クラウドサイン』に関するウェビナーと併せて SBテクノロジー（以下、SBT）主催の『クラウドサイン for Microsoft Teams』のウェビナーにも参加した。

「社内では Microsoft 365 の利活用が進んでいたこともあり、電子契約検討以前からワークフローの書類は全て Teams に取り込んでいました。電子契約書類の保管でも Teams 連携はマスト要件だったのです」（企画営業部長 山田氏）

「ウェビナーに参加して有意義だったのは、電子契約の法律に関する話を聞けたことです。純粋に勉強になりましたし、社内で導入説明するための説得材料にもなりました。また、複数社のシステムを検討していく中でどのような方式が当社に一番合うのかも分かりました。具体的には、電子契約システムには、契約を交わす当事者の電子署名を付与する「当事者型」と、契約を交わす当事者ではない中立の第三者が当事者の指示に基づいて電子署名を付与する「立会人型（事業者署名型）」の2タイプあり、前者の場合、契約相手が同一の電子契約システムを利用する必要があるということでした。そうなると、相手企業にシステム導入させるという負担をかけてしまうので、当社の場合は、契約相手が同一の電子契約システムを導入していなくても契約を結べる「立会人型」であることが必須でした」（企画営業部 畠山氏）

また、SBT 主催のウェビナーでは、重要視していた Teams との連携ができることを確認。Teams 画面から「クラウドサイン」をシームレスに使用できることが分かったため、『クラウドサイン for Microsoft Teams』の導入を決定した。

同社での導入検討開始は2021年4月、その後7月には『クラウドサイン for Microsoft Teams』の導入を決定している。

「通常なら物事を試案するのは年度区切りで行うのですが、本件に限っては業務効率化、人件費など各コスト負担を考えたとき、明らかに一刻も早く電子契約システムを導入するのが得策だと分かりました。ざっと導入コストと比較しても、導入効果はその10倍以上はあると考えられたので、最短スケジュールである2021年9月から運用を開始しました」（総務部長 山崎氏）

『クラウドサイン for Microsoft Teams』のシステム導入は、SBT のサポートに頼ることなく同社のみで作業を行えるほど分かりやすいものだったことも、スピーディに利用開始できたポイントだった。
この導入作業と並行して、契約先の各社には電子契約に切り換える旨を Web サイトやメール、依頼文書で告知・説明を行っていった。同社のサービスを利用している自治体は、自治体ごとの条例などに沿った契約書でないと契約できないこともあり、まずは民間企業との契約、約300件を対象に取り組んだ。

「電子契約は相手企業の合意なく実施できないので、実は当初は、合意が得られなければ仕方ない、完全に切り換わるにはもっと時間がかかるだろう、と長い目で見ていました。しかし実際には、契約先の各社からは思いのほかスムーズに了承してもらうことができ、運用を開始してから約半年で、対象とした約300件のうちほぼ全てを『クラウドサイン for Microsoft Teams』での電子契約に切り換えることができました」（企画営業部長 山田氏）

約300件の契約が紙から電子に切り換わったことで、同社ではどのような導入効果が表れたのだろうか。

「紙の契約の場合のコストを計算してみると、1契約あたり計1,460円（内訳：人件費1,000円程度＋レターパックなど郵送代360円＋封筒・印刷時の紙やインク代100円程度）、それが300件だと43万8,000円にもなります。また、印紙税が年間合計約100万円なので、合算すると、年間約143万8,000円の費用を節約できたことになります」（企画営業部 畠山氏）

また、契約に要する時間も、紙の場合は長いと半月かかっていましたが、電子契約だと一日で完了することも少なくないうえ、中には送信したら数時間で返送されてくるケースもあるという。

「電子契約を導入したメリットはコスト面のほか、押印もあります。以前は押印する立場の上席者の出勤に合わせて回覧スケジュールを立てていましたが、電子契約ではその必要もなくなりました。上席者がテレワークでも、ワークフローに則って承認してもらえるので、一連の作業が滞ることなく契約相手に送信することができるようになりました」（総務部 齊藤氏）

「電子契約を検討した背景には、コロナ禍によるテレワークで出社人数が限られた結果、業務が滞ってしまう問題を解決したいということもありました。いざ電子契約を導入してみると、業務効率化をはじめさまざまな部分に効果が出ているので、『クラウドサイン for Microsoft Teams』の利便性を非常に高く評価しています。また、効率化により空いた時間は、これまで手が回らなかった契約業務全体を俯瞰する管理作業もできるようになりました」（総務部長 山崎氏）

今後はサービス利用者である約400の自治体との契約も電子化を進めたいと同社は考えている。

「現在、実証事業として電子契約のプロトタイプを作って検証を進めている自治体や団体もあります。ここ約2年の間に全国的に試行されているので、その進展に期待したいと思います。電子契約は導入メリットが多いため、国や業界全体でもっと啓蒙活動して後押ししてもらえることも期待しています」（企画営業部長 山田氏）