新明和工業株式会社様のターボブロワ遠隔監視サービス“KNOWTILUS(ノーチラス)”の基盤として、当社の Microsoft Azure を基盤とした IoT Core Connect(以下、ICC)を導入いただきました。
“KNOWTILUS” は、ばっ気装置ターボブロワの遠隔監視サービスとなり、設備管理業務における人手不足の解消や予防保全による安定稼働を実現する一助となる仕組みです。運転データや各種情報を数値化することで、機器トラブルが発生した際の初動対応の迅速化や故障原因の早期特定、ダウンタイムを極小化することが可能になります。
今回は、“KNOWTILUS”開発プロジェクトの中心となった、新明和工業株式会社 流体事業部 小野工場 設計部 山田 和也氏 と、流体事業部 業務部 IT管理課 角野 浩司氏 に導入の背景や将来の展望について、プロジェクトに携わったソフトバンク株式会社 徳永 和紀氏 と、当社 中平 頼孝 がお話をお伺いしました。
新明和工業株式会社
流体事業部
小野工場
設計部 流体機器第2グループ
山田 和也氏
新明和工業株式会社
流体事業部
業務部
IT管理課
角野 浩司氏
<徳永氏>
最初に“KNOWTILUS”開発の経緯を教えていただけますか?
※ “KNOWTILUS”についてはこちら(動画 再生時間:3分22秒)
<山田氏>
2017年ごろから「排水処理設備全般を見守るためにIoTを使う」という構想があり別システムで運用をしていました。運用する中で大きく3つの課題が出てきました。
<徳永氏>
価格見合いというのは、機能とコストの相関にもなると思います。強いて1つだけ挙げるとすると、ICC を選ばれた理由は何でしょうか?
<山田氏>
1つあげるとすれば、価格に見合った拡張性ですね。
今回の導入にあたって論点は、3つありました。
1つ目は「クラウド全般の知見の有無」という点です。まず当社内部で、「どのクラウドを選ぶか?」を議論しました。拡張性を考えた場合、その都度コストが上がっていくという状況や、乗り遅れたインフラを選んでしまった場合のリスクは容易に想像できました。
ただ、私たちはメーカーであり、クラウドの専門企業ではないため知見がふんだんにあるわけではありません。この点を担保するために開発をお願いする「企業という単位」だけでなく、「当社の窓口となる担当の方のスキル」が重要だと考えました。クラウドビジネスの知見を補完してくださる「道先案内人」のような方がいらっしゃるかどうかでした。
2つ目は「クラウドでの商用構築実績を多く持つ企業か?」という点です。
他社に先んじてサービスをリリースするにはそれなりの精度と対応速度が重要です。また開発前より、2019年度の下水道展に出展することも考えていたため期日通りに開発できうるか?という点も重視しました。
3つ目は「SaaSであるか」という点です。社内の情報システム部門や、流体事業部にクラウドサービスを開発する、運用するためのエンジニアが多くいるかというとメーカーではなかなか難しい面があります。
ICC は SaaS であったため、自社でアプリケーションの開発や保守をすることなく、サービス開発や、営業部門や保守管理部門との連携スキームを作ることに専念できるため、大変大きなポイントでした。
<徳永氏>
ICC を含めたプロジェクト全般で特徴を感じられた点はありますか?
<山田氏>
サービスデザインと徳永さんはお話しされますが、この点です。
私の中で今回リリースした“KNOWTILUS”のサービスデザインは、2年弱従来のシステムを利用してきた中で定義できていました。ただクラウドや AI という技術的な観点を入れ、将来の拡張性も踏まえてサービスデザインを作る点では課題を感じていました。
ICC 導入に向けた要件定義を進める中で、画面ごとに「誰が、なぜ見るのか?」という問いをいただき、それに答え、整理をしていただくことができたので、課題だった部分を払拭することができました。また、お客さまが安心される粒度のグラフ表示、当社の開発部門が製品をより良くするために見るグラフ表示、利用者の定義に沿って閲覧情報の階層管理ができる機能が標準で搭載されていることにも魅力を感じました。さらに利用者に合わせたグラフ表示の粒度を決めることで、トランザクションに応じた月額利用料金プランを最適に選べる点も良かったと感じています。
ただ単に、SaaS と機能と価格だけを言われても魅力を感じられません。当社の課題解決に向けたサービスデザインや要件定義を、ソフトバンクとソフトバンク・テクノロジーで議論してまとめ上げていく過程の対応スピードが速く、サービスデザインや Microsoft Azure 構築の経験が豊富なチームだと感じました。
知見がないと質問に即答はできませんからね。
<中平>
複数プロジェクトをエンジニアとして対応させていただいてきた中で、お客様の要件定義の判断精度と速度が課題になる場合があります。それには業務に詳しい方が必須になるわけですが、御社はかなり迅速に要件整理をしていただきました。
ソフトバンク・テクノロジー株式会社
ソリューション統括
ソリューションエンジニアリング本部
プロダクトエンジニアリング部
中平 頼孝
<徳永氏>
通常は要件を持ち帰っていただいても回答までに1週間ほどかかるのですが、御社は2営業日以内に回答をいただいていました。
サービスデザインは、「ビジネスモデルが成立するか」「技術的に実現可能か」「利用者の定義が明確でデータ利用が循環するか」という3つの視点が主に重要となります。御社のビジネスモデルの実現において重要な点はどのようにお考えですか?
<山田氏>
月額のランニングコストです。お客様にサービスを提供するにあたり、インフラとなるコストは最小限に抑えられるといいですよね。まだ詳細はお伝えできませんが、お客様のご要望を伺いつつ、流体事業の製品群を繋ぎ、より高い付加価値をご提供できるようなビジネスモデルを考えています。
<徳永氏>
今後 ICC の利活用に向けて取り組まれることはありますか?
<角野氏>
はい、今後さらに利活用を進めるため ICC の運用フローを最適化していこうと考えています。
ICC を利用する現場や、保守会社であるグループ会社の新明和アクアテクサービスの声を反映し、例えば画面ごとにどの部署や人単位まで見せるかの権限を変えていくことや、アラートメッセージのタイミングや文章を変更していき、ICC をより実業務に即した形にしていこうと思っています。
<徳永氏>
ICC を他の導入企業でもご評価いただいているのは、導入いただく企業様ごとの運用フローにあわせて、容易に機能やレポートごとの閲覧権限を細かく制限できる点です。ただ、システム上変更しやすいとはいえ、現場の求めるタイミングと頻度で変更を行うというのが肝心ですね。
一度現場の方に「使えない」という印象を与えるとその後の信頼回復に時間がかかってしまうため、やはり角野様がおっしゃるように現場の方の意見を取り入れて改善を行っていくということはとても重要に感じます。
<角野氏>
その通りです。サービス開始から半年間は重要な期間だと認識しています。
机上の空論ではなく、入念に準備したうえで、営業部門や新明和アクアテクサービスと議論しながら、決めていこうと思います。
<徳永氏>
最後に、“KNOWTILUS”の今後の展望を教えてください。
<山田氏>
冒頭に申し上げた、「排水処理設備全般を見守るために IoT を使う」という構想を形にしていくにあたり、今後は予防保全のために、 AI を活用した故障検知のアルゴリズムを導入したいと考えています。故障の傾向を機械学習させることで、事前に部品交換や修理を行えるようになり、ターボブロワのさらなる安定稼働を実現できると考えています。
また、自社の排水処理にかかわる他製品の監視システムと API 連携を行い、分析することで排水処理設備全般の予防保全に繋げられると考えています。
これを機にいろいろなサービス向上を実現していきたいですね。
<中平>
ICC は今後全国に点在する工場に設置するデバイスに OTA 越しにアルゴリズムをアップデートできる機能があります。
保守員が全国を行脚して設定変更をすることは困難ですし、こうした遠隔で設定ができるIoTの利活用をしっかりとサポートして参ります。
また、ICC は SaaS サービスでありますが、カスタマイズが可能で“KNOWTILUS”もカスタマイズさせていただいています。
今後、パートナー企業様やグループ会社様の既存システムと API 連携によるさらなるサービス開発をする際に、ICC はフロント側で API 処理できるデザインのため、システムとしての拡張性を担保しています。
<徳永氏>
新明和工業様の今後のさらなる IoT を利活用した新たなビジネスモデルの実現にご協力していきたいと考えています。
本日はありがとうございました。
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