昨今、多くの企業がクラウドへの移行を進めています。しかし、クラウドの導入に際しては、セキュリティや既存システムとの整合について課題を抱える企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、オンプレミスとクラウドのメリット・デメリット、移行時の注意点、おすすめのサービスを紹介します。
クラウドとオンプレミスの違い
クラウドとオンプレミスの大きな違いの1つは、システムの運用に必要なサーバーなどの IT 機器を自社保有するかどうかです。ここでは両者の違いが分かるように、それぞれの特徴を解説します。
クラウドとは
クラウドの基本形態は IT 機器を自社で保有せずに、システム運用をすることです。しかし、オンプレミス型のクラウドもあるため、自社に IT 機器を設置する場合もあります。
クラウドシステムではインターネットを経由して、社内システムを運用します。システム運用に必要な IT 機器やサーバーなどが格納されているのは、クラウドを提供する企業が管理するデータセンター内です。
クラウドで社内システムを運用する具体例として、基幹システムのクラウド化による BCP 対策が考えられます。BCP 対策とは、自然災害や人的災害などのトラブルが発生した場合でも、業務の停滞を防ぐ取り組みです。クラウドサーバーに社外データをバックアップして、BCP 対策を行えます。
オンプレミスとは
オンプレミスでは自社が所有するデータセンター内に IT 機器を設置して、システム運用をします。略称で、オンプレと呼ばれることもあります。
2007年あたりにクラウドサービスが登場するまでは、オンプレミスでシステム運用するのが一般的でした。クラウドが存在しない当時は、オンプレミスとクラウドの区別が必要なかったため、オンプレミスの言葉もありませんでした。つまりクラウドと区別するために、オンプレミスという言葉が生まれたのです。
クラウドのメリットやデメリット
ここではクラウドのメリットやデメリットを紹介します。
クラウドのメリット
クラウドは導入が容易な点が魅力です。その他にも、低コストやデータの閲覧や編集の際に場所を選ばない点などのメリットもあります。
導入が容易
クラウドは、サービス提供者とインターネット上で契約を結ぶとすぐに利用可能です。一方でオンプレミスを導入する場合は、通信機器の設置やサーバーの準備など利用環境が整うまでにある程度の期間を要します。
簡単に導入できるクラウドを利用すると、新規事業の立ち上げまでの期間を短縮できるメリットもあります。
低コストで導入と運用が可能
クラウドを導入する場合、システム構築に必要な IT 機器の購入が不要なため、導入時の初期費用を抑えられます。従量課金制で、用途や目的に合わせた柔軟なコスト調整が可能です。サーバー管理費が、オンプレミスほどにはかからない点も魅力です。
利用場所を選ばない
データを持ち運びしなくても、どこからでもサーバー内の情報確認や編集が可能です。サーバー内の情報もリアルタイムに更新されるため、最新の情報が手に入る利点もあります。
クラウドのデメリット
クラウドにはカスタマイズの制限や、リスク管理の他社への依存などのデメリットがあります。
カスタマイズが制限される
クラウドを利用する場合、クラウド提供者が決めたシステム環境に、ある程度は沿う必要があります。そのため、自社のシステムに合わせてカスタマイズがしづらい点がデメリットです。
対応策として、パブリック型ではなくプライベート型のクラウドを利用すると、カスタマイズ性が高くなります。プライベートクラウドとは、自社専用で構築されたクラウド環境のことです。
リスク管理をクラウド提供企業に依存する
クラウドを利用すると、リスク管理はサービスの提供企業に依存します。なぜなら、クラウド環境を提供するサーバーは、サービス提供者が所有するデータセンターにあるからです。
つまり、クラウドを提供する企業のセキュリティ対策が脆弱だと情報漏えいのリスクがあります。セキュリティ管理について信頼のおけるクラウド企業の選定が重要です。
オンプレミスのメリットやデメリット
ここでは、オンプレミスのメリットやデメリットを紹介します。
オンプレミスのメリット
オンプレミスのメリットは、高いカスタマイズ性を備えている点やセキュリティ対策を自社で行える点です。
カスタマイズ性が高
いオンプレミスの場合、自社にエンジニアが在籍していると、システムに改善を加えカスタマイズがしやすいです。自社でクラウド環境を隅々まで構築したい場合は、オンプレミスが向いているといえます。
自社でセキュリティ対策ができる
オンプレミスを利用すると、自社でセキュリティ対策をして、情報漏えいのリスクに備えられる点も魅力です。
つまり、クラウドを提供する企業に、セキュリティ対策を依存せずに済みます。そのためオンプレミスは、セキュリティの外部依存に不安を持つ企業向きといえるでしょう。自社にエンジニアがいれば、トラブル時も自社で問題の解決に取り組めるメリットもあります。
オンプレミスのデメリット
オンプレミスは、コストがかかる点や運用開始までに時間がかかる点がデメリットです。
初期費用や運用費にコストが必要
自社内にサーバーや IT 機器を設置する必要があるため初期費用がかかります。またサーバーを設置するためのスペースも必要です。
ソフトウェアの購入やライセンス取得のための費用もかかります。運用を開始した場合も、IT機器設置のスペースを借りるための賃料や、機器の修理やメンテナンスに必要な費用なども自社で負担する必要があります。
利用するまでに時間が必要
オンプレミスは機器の調達や設置の必要があるため、利用開始までに時間がかかります。社内にエンジニアがいない場合は、システム運用に詳しい専門家を雇う必要もあります。
システム管理を担当する技術者と導入システムの選定に時間を要する点もデメリットです。サービスの提供元との協議なども含めると、数週間から数ヶ月かかることもあります。
多くの企業がクラウドへの移行を進めている
総務省は、平成23年以降からクラウドサービスの利用状況を「通信利用動向調査(企業編)」で発表しています。ここでは、総務省の資料をもとに、企業のクラウド導入状況を解説します。
各企業のクラウド導入の状況
企業におけるクラウド導入の状況は次のとおりです。
全社的に利用している | 一部で利用している | |
---|---|---|
平成30年 | 32.9% | 25.4% |
令和元年 | 36.0% | 28.5% |
令和2年 | 39.3% | 29.2% |
クラウドを導入する企業は増加傾向です。さらに令和2年の調査では、クラウドサービスを利用した企業のうち、82.5%は効果があったと回答しています。高い企業の満足度から、今後もクラウドを導入する企業の増加が予想されます。
多くの企業がクラウドを導入する理由
令和2年の調査では、企業は次の理由からクラウドを導入していることがわかりました。
クラウドを導入する理由 | 割合 |
---|---|
場所、機器を選ばずに利用できるから | 45.5% |
資産、保守体制を社内に持つ必要がないから | 42.3% |
災害時のバックアップとして利用できるから | 38.1% |
安定運用、可用性が高くなるから | 37.3% |
サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなどの対策) | 29.3% |
導入の理由を確認すると、災害時のバックアップや安定運用、情報漏えい対策などの回答が上位を占め、クラウドへの信頼性の向上が伺えます。従来はクラウドの安全面への不安から導入が見送られましたが、テクノロジーなどの進歩に伴い、現在は状況が変化したと考えられます。
信頼性の向上は、過去の調査との比較からも伺えます。たとえば総務省が平成23年に行った「通信利用動向調査(企業編)」では、サービスの信頼性が高いと答えた企業は21.2%でした。それに対し、令和2年は29.3%への上昇です。
また同調査で行われたクラウドサービスの用途についてのアンケートでも、企業のクラウドに対する意識の変化がみられます。ファイル保管・データ共有でクラウドを利用する企業が、平成23年の32.1%から令和2年は59.3%へと増加したのです。
情報やデータの保管場所としてクラウドサービスを利用する企業が増加した点でも、クラウドの安全性に対する信頼は向上したと考えられます。
クラウドに移行する際の注意点
クラウドに移行する際の注意点は次のとおりです。
- 複数のクラウドサービスの中から、必要なサービスを絞る
- 従業員にクラウド環境で情報を扱う際のルールを周知して、情報漏えいを予防する
- セキュリティ対策が万全なクラウド企業を選ぶ
- クラウドの利用方法への従業員理解を促すために、サポートが充実した企業を選ぶ
- 自社システムに沿ったクラウド環境を構築したい場合は、プライベートクラウドやハイブリッドクラウドも検討する
現在は、さまざまなタイプのクラウドサービスが存在するため、自社のシステムに適したクラウドを選択するようにしましょう。選択肢の1つとして、次に紹介するハイブリッドクラウドもおすすめです。
Microsoft Azure のハイブリッドクラウドもおすすめ
ハイブリッド運用とは、オンプレミスとクラウドを併用したシステム運用です。自社所有のサーバーや IT 機器を利用して、既存システムも活用したい企業はハイブリッドクラウドが適しています。
中でも Microsoft Azure は、次の点でおすすめです。
- すでに Windows 関連(Windows Server や SQL Server)のオンプレミスライセンスを持っている場合は低コストで導入可能
- ハイブリッドによる利用を前提としたクラウドで既存システムとの連携がしやすい
- クラウド環境の提供元となるデータセンターのセキュリティ対策が万全
自社システムのクラウド化のために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
クラウドのメリットは導入が安価で簡単、場所を選ばずに情報共有できる点です。それに対し、オンプレミスは高いカスタマイズ性が魅力です。
従来のクラウドはセキュリティ面で不安がありましたが、現在はクラウドの安全面について見直す企業も増加しています。安全なクラウドサービスを自社システムに導入して、業務効率化も図る流れは、今後も拡大するでしょう。
クラウド導入の選択肢の1つとして、Microsoft Azure のハイブリッドクラウドもおすすめです。クラウドとオンプレミスを適切に組み合わせて、安全なシステムのクラウド化を目指せます。
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