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製造業の収益拡大にはアフターサービス起点のアップセル!?

こんにちは、SBテクノロジー (以下、SBT) セールスコンサルティングチームの久保です。

日本の製造業において、技能工の次に営業・アフターサービス部門の人材不足に課題意識が高まっていることについては「製造業における DX 検討で重要な顧客接点領域」でお話させて頂きました。「高品質、低価格」こそ正義という時代は変わり、今では当たり前の要素になっています。技術と製品力では差別化、収益拡大が難しくなっているということです。そうした中、収益の高い会社もあり、いずれもアフターサービス部門での売上収益が大きい会社です。ここでは、製造業のアフターサービス部門はどうあるべきか説明していきたいと思います。




これまでのアフターサービス

大型機械や産業機械では定期メンテナンスによる予防も古くからありますが、製造業全般的にやはり「壊れたら修理する」という顧客発信が起点となる受け身スタイルが中心でした。またアフターサービス業務は現場作業を伴うため、ロケーションの観点から地域の代理店や販売子会社にアフターサービス業務を委託するあるいは販売まで一貫して委託する企業も多いです。サービス業務の地域カバレッジではメリットがある一方、メーカーからエンドユーザが見えにくいという商流上の課題があります。

商流上の課題イメージ
商流上の課題イメージ

エンドユーザ情報をグリップできないことで、製造業観点で取りこぼしてしまっているサプライ販売はかなり多く、エンドユーザにとっての導入済設備・メーカーのアドバンテージが希薄になってしまうのです。製品を生産すれば、売れる時代は問題ありません。昨今では競争も激化しており、エンドユーザ情報をどうやって獲得して、ビジネス創出するかのシフトチェンジが求められます。


これからのアフターサービス

まずエンドユーザへの価値提供は、「製品」ではなく「製品を活用してビジネス貢献する」カスタマーサクセスの考え方に変化しています。例えば、エンドユーザの生産活動を止めないとか。これを実現するには、「壊れる前に予防する」事前アクション型のアフターサービス展開やダウンタイムを極小化するトラブル解決率の向上策が必要です。

  • エンドユーザの設備情報を日々の点検作業や IoT 化によるデータ蓄積
  • 蓄積したデータをもとにサービス訪問計画化、エンドユーザ接点を増加
  • メンテナンス未契約のエンドユーザに対する契約のアプローチ (アフターサービスにおけるセールスアプローチ)
  • エンドユーザの問合せ情報を都度データ化 (サービス担当者へ直接投げられるケースは非属人化の対策が必要)

組織を跨いだエンドユーザ情報の収集と活用イメージ
組織を跨いだエンドユーザ情報の収集と活用イメージ

このカスタマーサクセス活動は、エンドユーザ情報を採取するきっかけにもなり、サプライビジネスの取りこぼしを防ぐことにつながります。加えて、エンドユーザへのプッシュ型のカスタマーサクセス活動はヒューマンアクションだけではありません。よくあるトラブル事案の解決手順や他のエンドユーザの活用例を照会するなど、メーカーからエンドユーザに情報発信することもカスタマーサクセスに有効です。


アフターサービスの起点は何か

これからのアフターサービスに向け、改善ポイントを整理していきます。

まず、アフターサービスの起点はどこにあるかです。よくあるケースでは、エンドユーザからの問合せと定期メンテナンス等セールスからの契約情報です。エンドユーザからの問合せは、現状どのようなチャネルがあるか?それぞれの課題箇所を整理します。ここでは、コミュニケーションロス、情報の属人化、業務負荷の観点で抽出します。特にサービス担当者に直接問合せが行くケースは情報の属人化リスクが高く、エンドユーザ向け問合せページや自己解決を促進するサポートページ開設等、回避ルートを検討します。

また問合せ窓口がある場合は、切り分けや事象の把握を的確に行うためのエンドユーザ情報を参照できるかどうか確認します。一方、定期メンテナンスの場合は、契約内容に基づき訪問計画を立てますが、予実がセールス含めた担当チームで可視化できているか確認します。

最後に、アフターサービスで獲得したエンドユーザ情報や対応履歴をセールスが活用できるようになっているかが重要です。

個人に依存しないアフターサービスとセールス連携のアップセルフローイメージ
個人に依存しないアフターサービスとセールス連携のアップセルフローイメージ

アフターサービス情報はビジネス創出の極めて重要なファクターで、セールスへのフィードバックがビジネス拡大の肝になります。


アフターサービスを強化支援する"デジタルフィードバックループ"

アフターサービスの起点である、カスタマーサポートとフィールドサポート、加えてセールスとも共通の顧客情報を持ち、各部門のワーク情報を相互にフィードバックする仕組み (CRM) が必要です。

CRM に必要と考える機能要素例を以下の通り列挙致します。

目的・狙い カテゴリ CRM 機能要素
属人化を阻止 問合せ受付
切り分け
機械設備に関する FAQ 情報、契約情報や過去対応履歴が参照できる
受付と現地対応の分業 受付内容から現地対応者をアサインできる
業務負荷軽減 報告業務 現地の検査データをレポート出力できる
事前アクションの促進 機械・設備情報の蓄積 現地の検査データを蓄積し、アラート機械設備を通知する
部門を跨いだフィードバック セールスへ引継ぎ 問合せ、現地作業指示からセールス案件に変換できる
エンドユーザ情報への付加価値提供 問合せ・サポート依頼 エンドユーザ専用サイトから問合せ、サポート依頼を投稿できる
リモートサポート支援ができる
トラブル自己解決 エンドユーザ専用サイトからトラブル解決手順や機械設備に関するナレッジを公開できる

なお、ほとんどの場合ステークホルダーが多岐に渡るため、必ずしもこれらの機能要素を同時に実現する必要はなく、運用状況を見据えた段階的な拡張計画を準備することがポイントです。


サービタイゼーションで付加価値提供 (収益拡大)

CRM のデータ活用からエンドユーザ向けにサービタイゼーションが徐々に進んでいます。いわゆる製品が生み出す付加価値に着目した、アフターサービスにおけるサブスクリプションモデルです。海外では、先行して製品稼動情報を収集し、故障を予測してサービスエンジニアを配置する、プロアクティブケアの事例が増えています。まさに CRM のデータを活用したビジネス創出と言えます。たとえば、CRM のエンドユーザ専用ポータル機能を活用し、製品メンテナンス情報や稼働情報の照会をサブスクリプション提供する。また、ウェアラブルカメラ等の併用で、エンドユーザとメーカーがつながり、現地メンテナンス作業をリモート支援するプロアクティブケアをメニュー化する。このようにアフターサービスにおける CRM データの活用は、新たなビジネス創出の宝庫と言えるのです。


まとめ

今や製品力・技術力ではコモディティ化が進み、「モノ売り」での差別化が難しくなっています。日本の製造業はどの企業も「モノ売り」から「コト売り」へのシフトを模索しています。だからこそ、アフターサービスを起点としたアップセルが手っ取り早いのです。つまり、アフターサービスにおける CRM 活用は製造業の売上収益拡大のキーサクセスドライバーと言えるのです。


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