こんにちは、SBテクノロジー (以下、SBT) セールスコンサルティングチームの久保です。
日本の製造業において、新型コロナウィルス影響をはじめとする不確実性が高まるなか、グローバル競争力強化に向けて、サプライチェーンの可視化・強靭化を進めている企業が多くなっています。一方で製造業の人材不足が年々深刻化しており、若年層においては急減しています。少ない人材でどうやって競争力を強化していき、顧客に付加価値を与えることができるか紐解いていきたいと思います。
経済産業省のものづくり白書によると、日本の製造業就業者数は2002年以降約20年間で157万人減少、なかでも若年層においては125万人減少しており、高齢化による技術継承リスクは言うまでもない事実です。また意外と知られていない事実があります。確保が課題となっている人材として、技能工に次いで営業・販売、アフターサービス部門の人材不足の課題感が急速に高まっています。
製造業にとって、最も重要なことは「ものづくり」で間違いありません。ただ、優れた製品や技術を開発し、顧客に提供することで企業が成長できる「プロダクトアウト」の時代は終焉しています。顧客の要望は多様化し、「モノ」ではなく製品以外のサービスなど 「体験」に価値を求めるようになりました。このような「マーケットイン」の時代に、改めて営業・販売、アフターサービス部門の重要性が増しており、限られた人材で顧客要望に応えるための変革に真剣に取り組むべき時を迎えています。
技術継承の課題は技能分野だけではありません。顧客対応する営業・販売、アフターサービス部門は、ものづくりに関する深い知識が求められます。自社製品、技術に対する知識はもちろん、顧客固有の用途や稼働条件にも精通しなければなりません (知識×経験×ノウハウ) 。
つまり、製品知識があっても、顧客への提案やトラブル解決ができるわけでないということです。それが故、顧客に関する情報、ノウハウは個人の「頭」の中にだけ蓄積されてきました。また、特定顧客に売上が依存している企業が多いことも要因です。それぞれの顧客との強い信頼関係で安定した収益基盤がある一方で顧客要望が多様化している現代ではリスクでもあります。新規開拓を行う時に、プロセス資産がないと商品紹介にとどまり、効果が出ません。何度も言いますが、顧客は「もの」ではなく「体験・ノウハウ」に価値を求めています。個人のノウハウに頼る顧客対応は限界がきているのです (人材の量的不足+質的不足) 。
人材不足問題の対策観点から、生産性を向上するべく、目指すべき「現場力」「経営力」の定義に新たな要素が加わっています。
「現場力」 | 従来 | 素晴らしいものをつくる技術力・創造力 |
現在 | 属人的な知見を組織化するデジタル力 (業務効率) | |
「経営力」 | 従来 | 原価低減を軸とした低コスト、高品質 |
現在 |
データに基づくビジネスモデル変革 (コト売り)
データドリブン型のジャッジメント 社員の付加価値の高い業務へのシフト |
このように日本の製造業ではデジタル資産を利活用できるスキルを持つ人材確保が命題となっていますが、現状の人材をどうやって「個人取得の情報は組織で持つ」というマインドに変革させるかがポイントです。営業・アフターサービス部門では、顧客接点に基づき業務プロセスを洗い出し、非効率となる属人業務をシステムによる自動化、あるいは組織対応による負荷分散で対策を進めていきます。システムや人事評価と連動した情報蓄積の強制化・促進化を進める企業も増えています。デジタルスキルを持つ人材が増えたとしても、組織で情報を持たなければデータの利活用ができません。よって、今目指すべき「現場力」とは属人的な知見を組織化するマインドなのです。
製造業では、技能人材だけでなく営業・アフターサービス部門の高齢化によりノウハウ継承への危機感が強まっています。特に、アフターサービス部門などの現場は、3K のイメージが未だ根強く残っており、新たな人材の確保が困難なだけでなく、人手不足により OJT を計画的に実施できません。このような危機的状況を踏まえ、有識者が持つノウハウを目に見える形で残しておくことが急務です。
そこで、有識者によるオンラインミーティングやウェアラブルカメラを活用したリモート現場作業支援や作業支援の動画化での新しい人材育成が効果的です。また、顧客対応が属人化しており、誰も対応できず、レスポンス (サービス品質) にも影響が出てきています。チーム・組織で顧客対応できる分業体制の推進と顧客軸に問合せやトラブルなど、ユースケースに対応したナレッジを蓄積する環境が急務です。現場作業の手順を動画化していつでも参照できる、顧客軸で情報を蓄積する、環境がこれからのアフターサービス現場に必要と考えます。
製造業における人材不足は、「量」だけでなく「質」の問題も大きくなっています。「質」とは組織で活用できるデータです。マーケティング部門が獲得したデータをセールス部門が顧客折衝に活用、アフターサービス部門が獲得したデータをマーケティング部門の施策やセールス部門の顧客折衝へフィードバックすることを指します。
個別最適ではなく全体最適、つまり「オペレーションDX」に向けた各部門の取り組み案を下記関連ページにてご紹介しておりますので、引き続きご覧下さい。
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