クラウドサービスの中では、Microsoft が提供する「Azure」と Amazon が提供する「AWS」がよく知られており、シェアでトップの AWS を、2位の Azure が猛追しています。Azure と AWS にはそれぞれ特徴や強みがあるため、自社の環境や用途に応じて適切なサービスを選択することが望まれます。
本記事では Azur eと AWS の特徴や強み、それぞれの利用に適しているシーンなどを解説します。どちらを導入したらよいか迷っている場合や、クラウドサービスの導入・変更を検討している担当者は、ぜひ参考にしてください。
Azure と AWS の基本情報
最初に、Azure と AWS の基本的な特徴や強み、料金体系などを解説します。
Azure の特徴
まずは Azure について概要や強みなどを解説します。
Microsoft 社が提供する「Azure」
Azure の正式名称は「Microsoft Azure」で、Microsoft 社が提供するクラウドサービスです。2010年にサービスを開始してから10年経った2020年の IaaS パブリッククラウドサービス市場では、19.7%のシェアとなり、AWS に次ぐ2位となっています。特にその急成長ぶりがめざましく、2020年の売上が前年比60%増の成長率となりました。
Microsoft Officeなど、さまざまな Microsoft 社製品との親和性がこの躍進を後押ししており、シェアトップの AWS を猛追するところまで来ています。
Azure の強み
Azure の強みとしては、以下が挙げられます。
Microsoft 社既存サービスとの連携が簡単
Azure の最大の特徴は、Office や Microsoft 365 など、Microsoft 社が提供する既存サービスとの親和性が高いことです。これらと簡単に連携できることから、システムの導入や移行にかかる作業がスムーズで、導入・移行のコスト削減にもつながります。
高いセキュリティ
Azure のもう一つの強みは、セキュリティの高さです。世界で約3,500名のセキュリティ専門家が、Azure のデータセンターやインフラ設備に対して常に監視を行っています。また、Microsoft 社の最新テクノロジーを活用して、政府機関や企業と連携したサイバー犯罪対策の研究拠点であるサイバークライムセンターを世界の5都市に展開しており、警察機関と直接連携した対応で、非常に高いセキュリティレベルを保持しています。
世界最大規模のネットワークがもたらす可用性と拡張性
Microsoft 社では、世界最大規模のグローバルネットワークを保有しており、世界60か所以上(2021年5月時点)にデータセンターを置くことで、全世界のユーザーに安全・迅速にサービスを提供しています。Azure はこのネットワークを通じて提供されるので、各種障害にも耐えられる可用性や、何兆もの要求に応えられる拡張性など、パフォーマンスの高さが強みとなります。
Azure の料金体系
Azure の料金は、システム導入時の初期費用は発生せず、機能を利用した分だけ課金される従量課金制となっています。最初の1ヶ月は無料のお試し版を利用できるので、機能や使いやすさなどを確認した上で導入できます。
料金については、料金計算ツールを利用して、利用する製品やサービスごとに使用環境などを入力して計算します。従量課金だけではなく、1年予約、3年予約など、長期契約をすることで割引率が高くなるメリットもあります。このほか、ライセンス購入などのリセラー経由の料金体系もあります。
AWS の特徴
続いて、AWS について、概要や強みを解説します。
Amazon が提供する「AWS」
AWS の正式名称は「Amazon Web Services」で、Amazon.com 社が提供するクラウドサービスです。2006年7月に EC2 の公開を開始して以来、常に業界のトップシェアを誇るパイオニア的存在です。2020年の IaaS パブリッククラウドサービス市場におけるシェアは40.8%で世界No.1であり、2位の Azure(19.7%)の2倍以上のシェアを誇ります。
AWS の強み
AWS の強みとしては、以下が挙げられます。
クラウドコンピューティングのリーダー
AWS は、Gartner Research により、2021 マジッククアドラントのクラウドインフラストラクチャとプラットフォームサービス(CIPS)部門において、リーダーに選ばれました。この調査は、クラウドインフラストラクチャとプラットフォームサービスの両軸を対象としており、AWS を実行能力とビジョンの完全性の両評価軸で、最上位のリーダーと評価しています。
最も厳しい要件を満たす包括的なセキュリティ機能
AWS は、国内規格である ISO27001 や、世界中のセキュリティ規制にも対応しており、組織をあげて高度なセキュリティ対策に取り組んでいることの証となっています。また、サーバ-を安全性が非常に高い世界各国のデータセンターに分散しており、独自のインフラストラクチャを形成しています。信頼性が高いことから、最高レベルのセキュリティが必要な金融機関も AWS を採用しています。
AWS の料金体系
AWS の料金体系は、Azure と同様に、導入などにかかる初期費用は無料で、利用料に応じた従量課金型となっています。必要なときに必要な分だけの利用ができ、1年または3年単位の契約にすると割引価格となります。また、使用量が増えるほどボリュームディスカウントが適用されるので、使うほどお得になります。無料オファーも3種類用意されており、それぞれ利用できるサービスが制限されるものの、機能や使い勝手を確認するには充分な内容となっています。
Azure と AWS を使い分ける方法
続いて、Azure と AWS が適しているシーンをそれぞれ解説します。
Azure が適している使い方
Azure が適しているシーンとしては、以下が挙げられます。
Microsoft の得意分野を活用したい場合
Azure は、Offic eや Microsoft365 などとの親和性が高いことから、WindowsServer の環境をクラウドに移行したい場合や、Microsoft 製のサービスを主に利用しているユーザーにお勧めです。Azure と既存サービスとの連携が簡単にでき、両者の相乗効果でそれぞれの良さやメリットを最大化できます。
高度なセキュリティが必要な場合
Azure には、前述したように、高度なセキュリティ対策が組まれており、政府機関や金融サービス、医療機関などでも多く導入されています。非常に高いセキュリティレベルを誇ることから、内外からの攻撃やコンプライアンスを重視する場合は、Azure が向いているといえます。
AWS が適している使い方
続いて、AWS が適している利用シーンを紹介します。
たくさんの国で利用したい場合
海外にも自社の拠点がある、ないしは、製品・サービスの海外進出を考えているなら、提供する国や地域によって、導入するクラウドサービスを検討する必要があります。AWS は、245の国と地域で利用でき、25のリージョンと81のアベイラビリティゾーン(2021年11月現在)を展開していることから、アカウントを開設後時間をかけずに、世界中のデータセンターにシステム展開が可能となります。
他製品と連動して利用したい場合
AWS は、Microsoft 社のサービスだけではなく、他製品や多様な分野に対応しているので、汎用性が高いのも魅力です。また、トップメーカーとして、さまざまなエラーやトラブルを解消してきた実績と経験があり、安心して利用できるといえます。
豊富な機能を必要としている場合
AWS は、200を超えるサービスを提供しており、その中から必要な機能を選択できるので、目的に応じて最適な組み合わせを利用できます。その90%以上が全世界のユーザーのリクエストをもとに実装されているので、自社が求める機能が見つかる可能性が高くなります。
用途別に充実している Azure のサービス
ここからは、多くの企業や個人が利用している Microsoft 社製品との親和性でシェアを拡大している Azure の各種サービスの中で、代表的なものを紹介します。
AI + machine learning
Azureの「AI + machine learning」サービス群では、機械学習モデルの構築や膨大なドキュメントやイメージの分析、ボットサービスの作成などが簡単にできるようになります。
主なサービスとしては、発生前に問題を予測するための AI サービス「Anomaly Detector」、顧客向けの会話型 AI エクスペリエンスを構築する「Azure Bot Service」などがあります。
DevOps
「DevOps」は、開発と運用を効率的に行うためのプラットフォームサービス群です。効率的でスピーディなソフトウェア開発をサポートします。
このサービス群には、「Azure DevOps」や、顧客のアプリ、インフラストラクチャ、ネットワークを監視する「Azure Monitor」などが含まれます。
Web サービス
「Web サービス」は、Web アプリケーションを効率的に開発して、スケーリングすることを目的にしたサービス群です。クラウドアプリや検索サービスを、簡単に作成できるようになります。
アプリを作成する「App Service」や、「Azure Maps」などが含まれます。
ストレージサービス
仮想マシンに必要なストレージの確保や、データ移行の際に利用するサービスです。仮想マシンのバックアップを取りたい、安全性の高いクラウド上のファイル共有をしたいなどのニーズに応えるサービスが用意されています。
主なサービスには、データ保護を簡素化しランサムウェアから保護する「Azure Backup」やスケーラブルで安全なオブジェクトストレージの「Azure Blob Storage」などがあります。
コンピューティングサービス
仮想マシンを必要に応じてスケーリングして、アプリのコンテナ化や管理を行うためのサービス群です。
「Azure Kubernetes Service」や、「Virtual Machine Scale Set」などが含まれます。
セキュリティサービス
脆弱性の発見や、サイバー攻撃対策、セキュリティ管理を統合するためのサービスが用意されています。
マルチクラウド環境とハイブリッド環境を保護する「Security Center」、安全なクロスプレミス接続を確立する「VPN Gateway」などが含まれています。
まとめ
クラウドサービスの中で1位・2位のシェアを誇る AWS と Azure ですが、Azure が Office など Microsoft 社のサービスとの親和性が高いのに対し、AWS は他製品との連携もしやすく、多くの国や地域で利用できることが特徴です。それぞれ強みに違いがあり、自社の利用シーンや目的に合わせて選ぶことが重要です。
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