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導入事例:学校法人 龍谷大学様

データプラットフォーム構築サービス、Power BI 利活用支援

農業データを Microsoft Azure で一元管理。データ分析基盤の構築により、アグリ DX 人材育成のための準備が整いました

事例のポイント
  • 複数のセンサーデータを誰もが容易に分析できる Azure データ基盤の構築
  • 過去に収集したデータも統合可能なユーザビリティの高い基盤を確立
  • 取得データを Power BI で可視化、作物生育と環境の定量的な解析が可能に
企業情報
お客様名 学校法人 龍谷大学
業種 官公庁・自治体・医療・教育
企業規模 5001人以上
目的・課題 データ分析 , ITインフラ構築 , クラウド活用
キーワード データ分析・活用 , BI , Microsoft Azure , Active Directory

抱えていた課題、解決したかったこと

アグリ DX 人材育成に向けたデータプラットフォーム構築が必要

龍谷大学
農学部長
農学部 教授
大門 弘幸 氏(※)
※役職は2023年3月時点の情報です。

龍谷大学は、1639年(寛永16年)に西本願寺境内に設けられた教育施設「学寮」を出発点とし、「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」ことのできる人間の育成に努めてきた。戦後の研究の高度化推進事業、仏教系大学初の理工学部および農学部の創設など、「先進性」や「進取」を尊ぶ気風が大きな特徴である。本学が有するキャンパスの1つ、瀬田キャンパスでは農学部、先端理工学部、社会学部の3つの学部を開設している。

農学部では、農業を取り巻く「就業人口の高齢化」や「経験や感覚に基づく技術の伝承方法」などの課題を踏まえ、農業を持続可能な成長産業とするためには、デジタル技術を用いて感覚的なことを数値化できる人材育成が必要であると考えていた。まずは実習を高度化すべく IoT やデータサイエンスなどの分野の教育を展開する先端理工学部と協議を重ねていったという。そして、瀬田キャンパス全体のビジョンとして両学部が協働して推進することとなった。

「多くの産業でデジタル技術の活用は一般的になりつつあります。農業も例外ではなく、データ駆動型で物事を進めることができる“デジタルマインド・スキル”を持つ人材の育成が次世代の農業を成長産業とするためには必要不可欠です。そこで、具体的な計画を先端理工学部と協議していたところ、文科省の大学改革推進等補助金『デジタルと専門分野の掛け合わせによる産業 DX をけん引する高度専門人材育成事業』を知りました。この事業は、専門性の高い実習と DX 教育をクラウド技術によって実現し、低炭素社会を実現する『アグリ DX』人材を育成するというものですが、我々のビジョンと合致していたため応募したところ、採択されました」(大門氏)

農学部では、従来、農場の環境データを収集・管理し日々の実習を行ってはいたが、データの一元化ができておらず、データ管理や共有に課題があった。そこで農業データを一元管理する基盤、そして学生が簡単にデータを可視化し、分析できるシステムを必要としていた。

「これは先端理工学部の学生にとっても、サンプルデータではなく生の農業データを扱うことで現場感覚を学べるというメリットがあります。可視化によって得られる知見を農場へフィードバックすることで、データサイエンティストとしての物事の見方やマインドを持つ人材育成に繋がるのではないかと考えました」(外村氏)

  • 農業を取り巻く課題解決の一助として“デジタルマインド・スキル”を持つ人材育成が必要
  • これまで収集した農業データの一元管理、可視化ができていなかった


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導入の経緯

提案されたシステムアーキテクチャと設計思想から技術力を評価し、採用を決定

龍谷大学
先端理工学部長
先端理工学部 教授
外村 佳伸 氏(※)
※役職は2023年3月時点の情報です。

農学部では、学部創設直後から定期的に農場に訪れてセンサーから手動でデータを収集していたが、集約する基盤がなかった。まずは農業データを一元管理する分析基盤の選定、そして構築、収集、可視化、分析まで総合支援が可能なベンダー選定を開始した。先端理工学部では、教育基盤に Microsoft Teams(以下、Teams)を取り入れており、Microsoft 365 のさらなる利活用を推進していた背景から、データの構築基盤として Microsoft Azure(以下、Azure)の採用を決めた。

「学部の方針として Microsoft 365 を活用する一環で、マイクロソフト社と連携し、『クラウドコンピューティング演習』という科目を新たに立ち上げていました。そして、Microsoft 365 を利用する中でシステムの安定性にも信頼感がありました。Power BI による可視化を視野に入れていたことや、学生が使う環境で重要視していた認証も Azure AD を使えるという点で、Azure 一択でした」(外村氏)

ベンダー選定においては、マイクロソフト社からの紹介をきっかけにSBテクノロジー(以下、SBT)の採用に至ったという。

「Azure を基盤とした難易度の高いスクラッチ開発への対応や比較的短い納期で信頼してお任せできる企業として SBT を紹介してもらいました。これまで取引はありませんでしたが、Azure の知識や Microsoft 365 の設定関連の疑問を解決するためには、SBT のブログは技術力が高く参考になると、他の担当職員から聞いていました。そして、提案されたシステムアーキテクチャは、期待通りの技術力でした」(外村氏)

最終的にベンダーは SBT を採用し、学生が自由にアクセスできるデータ基盤の構築を進めていった。

  • コミュニケーション基盤である Microsoft 365 の導入効果を最大化するために Microsoft Azure、Power BI を採用
  • Azure の豊富な実績を裏付ける技術者ブログも日頃から参考に


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SBテクノロジーの評価ポイント

「データの民主化」に向けて、データ利活用基盤の構築から内製化支援まで幅広く対応

本プロジェクトは、SBT からの提案を基に、フェーズ1としてこれまで収集してきたデータをクラウド技術で「民主化」すべくデータ基盤を構築し、実習や研究に使用するセンサーなどのデータ収集を自動化した。システム構成は、学生がアクセスしやすく、万が一データを削除しても復元可能となるよう、収集基盤、蓄積基盤、加工基盤の3層構造の構成とした。そしてフェーズ2では、センサーの数を増やし収集データを拡充、その後データを可視化し学生に向けて公開、演習の機会を設けた。

「SBT の提案では、プロジェクトに関わるメンバーの役割を提示し、作業工程の中では、SBT 側のタスクはもちろんのこと本学側がすべきタスクも示してくれました。いつ誰が何をしなければならないのかが提案段階で明確になった点は、技術力の高さや費用感という点に加えて、高評価でした」(大門氏)

「構築時には、センサー類の納期遅れがあったことや、本学の要望を作業しながら決めていくことも多かったのですが、それらに関してもスケジュール含めて柔軟に対応してもらえたので助かりました」(外村氏)

プロジェクトには、同校の農学部・先端理工学部、そして SBT 以外の企業など多くの関係者が関わっており、円滑にプロジェクトを進行できるか懸念があったが、SBT のプロジェクトマネジメントを高く評価しているという。

「週に1回の定例会議では、技術面で気になることを頻繫に質問しましたが、ほとんどは即答してくれましたし、即答できない場合には、会議後すぐに Teams で回答があるなど、コミュニケーションがとてもスムーズでプロジェクトは円滑に進みました」(外村氏)

「プロジェクトが行き詰まったタイミングでは、ただできないと断るのではなく、柔軟な対応で折衷案を提示してもらい、双方納得して進めることができました」(大門氏)

実際に構築したシステムはデータの民主化に向けて多くの考慮がされている。農学部の農場や水田に設置したセンサーで収集したさまざまなデータの蓄積基盤は、自動収集に特化せず、過去の収集データも統合できるよう手動によるアップロード手段も用意し、拡張性を高めた。そして、データ加工基盤には、農学部、先端理工学部の学生や教職員が自身で開発できるよう「Azure Data Factory」を活用していることが、今回の教育プロジェクトに適していたという。

「多くの方にデータを利用してもらうには、センサーから送信されてきた JSON などのデータを、利用しやすい CSV 形式に変換する作業が必要になります。その加工作業をプログラミング言語で一から書くことになると、ハードルが高くなります。実現したいことがあっても手順が難しいとやらなくなってしまいます。今回のプロジェクトは、プログラムを書くこと、書けるようになることが目的ではないので、実現したいことをローコードでできることは重要なことだと思いました」(外村氏)

取得したデータは Power BI で可視化し、作物生育と環境の量的把握からの解析が可能になった。この実際に収集したデータを用いた、レポート作成演習の講義を SBT が学生向けに行い、本プロジェクトの最終目標までが完了した。

  • データ加工を視覚化できる「Azure Data Factory」を採用し、学内関係者が利用しやすいシステム構成を実現
  • 高いコミュニケーション力による円滑なプロジェクト進行で成功へ導く


システム構成<抜粋>
システム構成<抜粋>
農場に設置された水田センサーと田植えの実習風景
農業データを用いたレポート作成講義の様子


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導入効果と今後の展望

農業分野の発展に“デジタルマインド・スキル”を活用できる教育プログラムの構築を目指す

龍谷大学
農学部
資源生物科学科
中田 正紀 氏

龍谷大学
理工学研究科修士課程
中世古 真吾 氏

本プロジェクトは教育プログラムであることから、学生もプロジェクトメンバーに加わっている。

「私はセンサーをデータ収集基盤に新しく登録する際の設定や、データ収集の状況確認、また不備があった場合には、関係者に共有しながら、正しく稼働するように修正する一連の作業を担当しました。データの収集から分析まで行うのは貴重な体験でした。今後は分析結果のフィードバックなどもできれば良いと考えています」(中世古氏)

「今回の取り組みが多くの学生に広まることで、データ活用のマインドが高まるのではないかと思います。また、今まで研究室で個別に保有していたデータも一元化し、必要な時に必要な情報を活用できるようになったので時間の有効活用にも繋がります」(中田氏)

ほかにも、農学部と先端理工学部の学生がコラボレーションして、データを活用した研究に取り組んでおり、今後も継続した学部横断のコラボレーションの機会増加に対する期待が高まっている。今回のプロジェクトは開始して1年、基盤整備が完了し、アグリDX人材育成のスタート地点ともいえる。今後はさらなるデータを集積し、本格的にさまざまな取り組みを行っていく予定である。例えば、生物や自然に興味を持ち農学部に入学した学生に対して、いかに敷居を上げずにデータ活用に取り組んでもらえるか、今回 SBT が講義した「クラウドコンピューティング演習」なども活用しながら教育プログラムを構築していくという。

「農事組合法人や行政関係者などの学外者で構成された外部評価委員会から、本プロジェクトの評価を受け、今後どのような人材を育成すべきか、そのためにはどのようなデータ基盤や教育環境が必要なのかを、さらに検討し進化させていく予定です」(大門氏)

「農業生産は、常に環境保全や環境調和を意識して行っていく必要があります。このことは生産者も消費者も意識しなければいけません。この背景をふまえると、どのくらいの肥料に対して、どれだけの一酸化二窒素が排出されるのかなど、数値化することはとても重要です。このようなことを学生がモチベーション高く考え、挑める仕組みを構築し、教育プログラムを充実させていきたいと考えています」(大門氏)

⿓⾕⼤学は、2022年に「カーボンニュートラル宣言」を発出し、2039年までの「ゼロカーボンユニバーシティ」の実現に向け、さまざまな取り組みを実施している。その一環として、瀬田キャンパスではアグリ DX 人材育成の取り組みを継続し、最終的には地域に根差した大学として、環境保全に関する情報発信による地域貢献を学生と共に行うことを見据えているという。

  • データを活用した研究において、継続的な学部横断コラボレーションの増加に期待が高まる
  • 地域貢献に向けた活動の継続として、環境保全に関する情報発信なども見据える


SBテクノロジー株式会社(写真左から)伊崎 敏生、水野 克俊、八木 真理奈
SBテクノロジー株式会社(写真左から)伊崎 敏生、水野 克俊、八木 真理奈

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