お客様名 | 新明和工業株式会社 |
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業種 | 製造業 |
企業規模 | 1001人~5000人 |
目的・課題 | IoT によるビジネスの加速 , クラウドを活用した業務プロセスの改善と自動化 , 業務プロセス効率化(技術系) , ビッグデータ活用 , データ分析 |
キーワード | IoT・AI・機械学習 , 業務効率化 , ビッグデータ , データ分析・活用 , Microsoft Azure |
ターボブロワの運転状態・異常がひと目で把握できないことに課題
航空機、特装車、流体、産機システム、パーキングシステムの5つの分野を中心に、モノづくりからアフターサービスまでグループ一体となって事業を展開する新明和工業は、2020年2月に、川西機械製作所に飛行機部を設置したときから起算して、創業100周年を迎える企業である。
中核を担う流体事業部では、下水道を中心とした水まわりの環境改善のための高品質な水中ポンプや製造機器の提供・メンテナンスを行っており、2017年からはメンテナンスや設備管理業務における人手不足の解消や予防保全による安定稼働の実現にむけた構想として、『排水処理設備全般を見守るために IoT を使う』を掲げ、IoT を活用した遠隔監視サービスを取り入れていた。
同社が提供しているターボブロワ「TurboMAX」でも遠隔監視サービスを取り入れていたが、ターボブロワの設備管理業務は、日常の管理業務や各種帳票作成業務などの負荷が大きいといった課題が挙がっていた。
「従来の遠隔監視サービスを運用していくうちに『自社が見たい形で運転状態のグラフ表示ができず、一目で状態が把握できない』『異常通知メールのテンプレートが固定のため、詳細な情報を記載できない』『点検・保守報告書を変更できないため加工に手間がかかる』などの課題が出てきました」(山田氏)
従来のシステムはクラウドサービスを導入していたが、標準機能の範囲内で利用していたため、運転状況を可視化するグラフを見やすい形で表示できず、ひと目で状況を把握することが難しかった。また、ターボブロワの異常を検知した場合、機器の保守・点検サービスを行う新明和アクアテクサービスの担当者へ通知メールが送られていたが、詳細情報をメールに記載できなかったため現地へ駆けつけてから原因究明にあたり、解消に時間がかかることがあった。課題解決に向け既存システムでの追加開発を検討したがコストに見合わず、熟考の結果、新たなシステムを導入する決断をした。
本業に専念でき、自社でシステム開発・維持の必要がないクラウドサービス
新たなターボブロワ遠隔監視サービスは、大量のデータを蓄積する必要があることからクラウドで提供されるサービスを前提とした。また、これまでの課題を解決し、自社仕様に合わせたカスタマイズが可能であることも選定において重要なポイントであった。
「新たなシステムを内製し、維持するためのエンジニアが自社に豊富にいるわけではありません。クラウドサービスを採用することによりシステムの開発・維持を意識しなくても良くなるため、お客様に向けた新たなサービス開発や、営業部門や保守管理部門との連携スキームを作ることに専念できると考えました」(山田氏)
さらに、他社に先んじてサービスをリリースするためには要件整理の精度と対応速度が重要であると考え、商用での構築実績を多く持ち、クラウドに対する知見が豊富な SI ベンダーであることも選定の要件となった。
コストに見合った柔軟性・拡張性のバランスを評価
IoT Core Connect(以下、ICC)を最も評価した点は、コストに見合った柔軟性・拡張性であった。Microsoft Azure を基盤とした ICC はクラウドサービスでありながら、必要な情報を集約するためのダッシュボードや運転状況を把握するためのグラフ表示画面のカスタマイズが可能である。今回、ターボブロワの利用企業が見るためのグラフ表示、新明和工業の開発部門が製品の状態確認や改善をするために見るグラフ表示を、自社の要件にあわせてカスタマイズできたことを評価した。カスタマイズの柔軟性や保守業務を行う企業への導入実績に加え、利用者ごとに閲覧権限を制御できる機能や、通知メールに記載される情報や通知を出す閾値を画面上で容易に設定できる機能が標準で備わっている点も評価のポイントであった。
「お客様にサービスを提供するにあたり、基盤となるシステムのコストを最小限に抑えることができるのは非常に重要だと考えました。利用者に合わせたグラフ表示のデータ粒度を決めることで、トランザクションに応じた月額利用料金プランを選べる点も良かったと感じています」(山田氏)
ICC の最適化と AI を活用した故障検知による予防保全に向け、さらなるサービス向上を目指す
今回の導入プロジェクトは、5G、LPWA 対応や、閉域ネットワーク、セキュリティーを含む Microsoft Azure との最適な通信環境の要件定義、IoT による業務プロセスの要件整理をソフトバンク株式会社が実施し、ICC での開発・導入をソフトバンク・テクノロジーが実施、2019年9月よりサービスを開始した。
ICC の画面レイアウトは、ターボブロワに搭載されている実際の操作パネルを模して開発し、違和感なくターボブロワの運転データを確認することが可能となった。点検・保守報告書も画面上からボタンひとつで自社仕様の形に出力できるように改善。また、機器の異常を知らせる通知メールには原因特定に必要な詳細情報を記載することができるようになったため、保守を行う担当者が現地に駆けつけた際の初動対応が迅速化し、ダウンタイムの極小化が可能となる。これらの実現により今後、確認作業の負荷低減と管理コストの削減に繋がると期待されている。
「サービス開始から半年間は重要な期間だと認識しているため、利活用を進めるために ICC の運用フローをより実業務に即した形に最適化していく予定です。ICC を利用する現場や、新明和アクアテクサービスの声を反映し、例えば画面ごとにどの部署や人単位まで見せるかの権限を変えていくことや、アラートメッセージのタイミングや文章を変更していこうと思っています」(角野氏)
新明和工業は今後、予防保全に向けた取り組みを計画している。ICC に AI を活用した故障検知のアルゴリズムを導入し、故障の傾向を機械学習させることで、事前に部品交換や修理を行えるようになり、工場や施設におけるターボブロワのさらなる安定稼働を目指す。また、自社の排水処理にかかわるさまざまな製品の監視システムと API 連携を行い、分析することで排水処理設備全般の予防保全に繋げていき、サービス向上を目指していく。
「サービスをさらに良いものにするため、お客様のご要望を伺いつつ、流体事業の製品群を繋ぎ、より高い付加価値をご提供できるようなビジネスモデルを考えています」(山田氏)
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