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機械学習とディープラーニングの違いとは?活用分野や展望を解説

コラム

掲載日:2024/10/29

近年、AIは目覚ましい進歩を遂げ、さまざまな分野で実用化が進んでいます。急激な進歩の中心となっている技術が、機械学習とディープラーニングです。2つの技術の特徴や違いを理解することで、AIに対する理解がさらに深まるでしょう。

本記事では、機械学習とディープラーニングの基本的な仕組みや違い、それぞれの活用分野をわかりやすく解説します。AIをより深く学びたい方、ビジネスでの活用を検討している方はぜひ参考にしてください。

機械学習とディープラーニングの違い

2022年11月にOpenAIによって公開されたChatGPTによって、空前のAIブームが到来し、AI技術に興味をもつ人が増えたのではないでしょうか。

AI技術について調べ始めると、『機械学習』と『ディープラーニング』という言葉をよく耳にします。この2つを同じものと理解していたり、違いがよくわからないまま使っていたりする人も多いのではないでしょうか。機械学習とディープラーニングの違いを理解すると、いま注目のAI技術の全体像が把握しやすくなります。

このあとそれぞれについて解説していきますが、まずは前提としてAIと機械学習、ディープラーニングの関係性を理解しておきましょう。この3つは、『AI>機械学習>ディープラーニング』という関係にあります。つまり、AIの一分野として機械学習があり、機械学習の手法のひとつがディープラーニングになります。

そもそもAI(人工知能)とは

AIとは「ArtificialIntelligence」の略で、日本語では「人工知能」と訳されます。実は、AIの定義はまだ明確に確立されていません。一般的には、人間のような知能をコンピュータで実現する技術というような意味合いで使われています。

過去にも2度のAIブームがありましたが、当時はコンピュータの処理能力の問題もあり、期待はずれに終わりました。しかし、現在も続く第3次AIブームではコンピュータの処理能力が飛躍的に向上し、機械学習の実用化やディープラーニングの登場もあいまって大幅な進歩を遂げています。

SFの世界に登場するような汎用的なAIはまだ登場していないものの、特定の領域ではすでに人間をはるかに超える能力を発揮していることはご存じのとおりです。

機械学習とは

機械学習とは、コンピュータがデータからパターンを学習し、そのパターンを基に予測や判断を行う技術のことです。

機械学習のコンセプト自体は新しいものではなく、以前のAIブームの頃から存在していました。しかし近年、コンピュータの処理能力が飛躍的に向上したことにより、機械学習が実用可能な技術となり、現在のAI進化の中核を担うまでになっています。

機械学習の基本的な仕組み

機械学習は、従来のプログラミングのように、人間がルールを明示的に記述しません。代わりに大量のデータをコンピュータに与え、コンピュータ自身がルールを見出す技術です。

機械学習には大きく分けて、『教師あり学習』『教師なし学習』『強化学習』の3つのタイプがあります。

『教師あり学習』は、正解ラベル付きのデータを使ってモデルを訓練する方法です。例えば、大量の犬と猫の画像にそれぞれ「犬」「猫」という正解ラベルを付けて与え、画像の特徴とラベルの関係を学習し、新しい画像がどちらなのかを予測します。

『教師なし学習』は、正解ラベルのないデータからパターンや構造を見出す方法です。例えば、購買履歴データから、どのような商品が一緒に購入される傾向があるかを自動的にグルーピングする場合などに用いられます。

『強化学習』は、処理結果に与える報酬を最大化するように学習する方法です。例えば、ロボットアームを制御するタスクで、目標地点に到達できた場合に報酬を与えることで、より精緻な制御を学習します。

機械学習では、データ中で予測の手掛かりとなる変数である特徴量を人間が設計し、それに基づいてアルゴリズムが学習する点が特徴です。適切な特徴量を設定することで、学習精度が向上します。

ディープラーニングとは

ディープラーニングは、人間の脳の神経回路を模倣した多層のニューラルネットワークを使用して、複雑なパターンを自動的に学習する技術です。深層学習とも呼ばれます。

2006年に多層ニューラルネットワークを用いたオートエンコーダが発表され、2010年代に大きく進化、普及しました。従来の機械学習手法では困難だった高度なパターン認識や抽象化を可能にし、画像認識や自然言語処理、音声認識など多くの分野で革新的な成果を上げています。

ディープラーニングの基本的な仕組み

ディープラーニングでは、人間の脳の神経回路を模した多層ニューラルネットワークを使用します。入力層でデータを受け取り、複数の層が重なる中間層でデータの特徴を自動的に抽出し、出力層から最終的な予測や分類結果を出力する仕組みです。

学習過程では、ネットワークの重みを調整して精度を向上させます。ディープラーニングの強みは、人間が特徴量を設計する必要がなく、データから自動的に特徴を抽出できる点です。

代表的なアルゴリズムには、画像認識に用いられる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、自然言語処理に適した再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、時系列データ処理に効果的なLSTM(LongShortTermMemory)などがあります。これらの技術により、ディープラーニングは複雑なパターンの認識や予測が可能です。

機械学習とディープラーニングの違い

ここで、機械学習とディープラーニングの違いを整理します。

両者の大きな違いは、機械学習が人間の設計した特徴量に基づいて学習するのに対して、ディープラーニングは特徴抽出も含めてコンピュータが自動的に行う点です。そのため、機械学習は比較的少ないデータでも学習可能ですが、ディープラーニングは大量のデータと高い計算能力を必要とします。

こうした特徴から、ディープラーニングはより複雑なパターンを学習でき、人間が把握できないようなデータの深い関係性の理解が可能です。

自動運転を例に、機械学習とディープラーニングの違いをわかりやすく見てみましょう。機械学習は、道路標識や車線の検出など人間が定義した特徴を基に判断するため、複雑な道路環境や予期せぬ状況への対応に限界があります。一方、ディープラーニングは大量の走行データを学習することで、複雑な交通状況や歩行者の検知など突発的な事態にも迅速に対応できるため、より安全で効率的な自動運転が可能です。

機械学習とディープラーニングの活用分野の違い

機械学習とディープラーニングの学習方法や特徴の違いを踏まえて、活用分野の違いを見ていきましょう。

機械学習の活用分野

機械学習は、数値データからパターンを学習し、予測や分類などを行う処理に適した技術です。この特徴を活かして、以下のような分野で活用されています。

活用分野 活用例
需要予測 小売業や製造業での在庫管理や生産計画の最適化
故障予測 製造業や運輸業での機器の予防保全
顧客セグメンテーション マーケティングでの効果的な戦略立案
不正検知 金融業でのクレジットカード不正利用の検出
レコメンド ECサイトや動画・音楽配信サービスでの商品・コンテンツ推奨

これらの分野で機械学習は、多様なデータを解析して人間の意思決定を支援し、業務効率の向上やコスト削減、顧客満足度の向上に大きく貢献しています。

ディープラーニングの活用分野

ディープラーニングは、複雑なデータパターンを自動的に学習し、画像、音声、自然言語などの非構造化データの解析に強みを持つ技術です。この特徴を活かして、以下のような分野で活用されています。

活用分野 活用例
画像認識 医療画像診断、顔認識システム、製品の品質検査
音声認識 音声アシスタント、自動字幕生成、音声翻訳
自然言語処理 機械翻訳、感情分析、チャットボット
自動運転 周囲環境の認識、経路計画、運転制御
異常検知 製造ラインでの不良品検出、ネットワークセキュリティ

これらの分野でディープラーニングは、人間の能力を超える精度や効率を実現し、新たな価値創造や問題解決に大きく貢献しています。

関連記事:構造化データと非構造化データの違いは?長所や注意点についても解説!

機械学習とディープラーニングの今後の展望

機械学習とディープラーニングは、今後ますます多くの分野で革新的な変化をもたらすことが期待されています。

例えば、医療分野の早期診断や個別治療、教育分野の学習の個別最適化、製造・物流分野の自動化やロボティクスによる生産性向上など、私たちの生活をより便利で豊かなものにしてくれるでしょう。

一方で、AIの進化に伴う多くの課題も無視できません。例えば、AIに代替される雇用への影響や、AIが人間の知能を超える『シンギュラリティ』が訪れた際の制御や倫理的問題、AIの悪用やプライバシーの侵害が懸念されています。

これらの課題に対処しつつ、技術の発展と社会の調和を図りながら、AIがもたらす恩恵を最大限に活かす道を探っていくことが重要です。

関連記事:『シンギュラリティ』とは?言葉の意味と影響・変化をわかりやすく解説

まとめ|機械学習とディープラーニングの違いを理解しよう

機械学習とディープラーニングは、AIの進歩を支えている重要な技術です。

機械学習は、コンピュータがデータからパターンを学習して、予測や判断を行います。一方、ディープラーニングは機械学習の手法の1つで、ニューラルネットワークを使って自動的にデータのパターンを抽出することで、より複雑なパターン認識や予測が可能です。両者はそれぞれの特性を活かして、さまざまな分野で活用されています。

本記事で機械学習とディープラーニングの特徴や違いを理解し、さらにAIへの興味が深まるきっかけになれば幸いです。

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