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『シンギュラリティ』とは? 言葉の意味と影響・変化をわかりやすく解説

コラム

掲載日:2024/03/21

『シンギュラリティ(技術的特異点)』は、AI(人工知能)の性能が人間の知性を超える転換点を指す言葉です。近年では、ChatGPTなどAIを使ったサービスを利用する機会も多くなってきており、AIが人間社会にどのような影響をもたらすのか注目されています。

『シンギュラリティ』の到来をむやみに恐れるのではなく、正しく理解をしたうえで柔軟に対応していくことが求められているといえるでしょう。この記事では、『シンギュラリティ』の基本的な概念の確認と社会に与えるといわれている影響などをわかりやすく解説します。

『シンギュラリティ』とは

技術的特異点とも呼ばれる『シンギュラリティ』は、AIが飛躍的な進化を遂げることによって、人間の知性を上回る転換点のことです。アメリカの数学者であるヴァーナー・ヴィンジ氏は、1993年に発表した著書において、30年以内に技術的に人間を超える知能がつくられると予想しています。

急速にAIの性能が向上していくことで、それまで人が担っていたビジネス活動や社会生活に大きな影響が出てくると考えられています。特に雇用の面では、AIやロボットが多くの業務を担えるようになると、多くの人が仕事を失ってしまう可能性あります。

『シンギュラリティ』はいつ訪れるのか?

AI研究の第一人者とされているレイ・カーツワイル氏は、「2030年代にはコンピューターの計算能力が人類の生物学的な知能の総容量に等しい量に達する」と主張しており、また「2045年には1,000ドルのコンピューターの計算能力が、10ペタフロップスの人類の脳の100億倍になる」と述べています。

レイ・カーツワイル氏の主張は、いわゆる2045年問題として取り上げられているものです。2045年に『シンギュラリティ』を起こすAIが初めて登場するというより、それよりも早い段階でAIの進化が進むと考えられています。

『シンギュラリティ』に関する2つの法則

前述のレイ・カーツワイル氏の予測の根拠として、ムーアの法則と収獲加速の法則が挙げられます。ムーアの法則とは、アメリカの大手半導体メーカーであるインテルの創業者であるゴードン・ムーア氏によって提唱されました。

ムーアの法則によれば、集積回路に使われているトランジスタの数が、18ヶ月ごとに2倍に増えていくことになります。つまり、15年が経過すると1,024倍の容量を備えたメモリチップができる計算です。

また、収獲加速の法則とは、技術進歩における性能は直線的に向上するものではなく、指数関数的に向上していくという法則をいいます。新たな技術が開発されることによって、技術革新のスピードが従来よりも速くなっていくことを表す法則です。

ムーアの法則によって半導体はやがて物理的な限界を迎えることになりますが、新たな技術の登場によってさらなる発展を遂げていくものとされています。この2つの法則に沿って技術革新が起こるとすれば、AIの性能は飛躍的に向上していくでしょう。

『シンギュラリティ』が到来する時期などを考えるうえで、AIの性能がどの程度のスピードで進んでいくかは重要なポイントです。そのため、この2つの法則が『シンギュラリティ』を巡る議論において、たびたび注目されているといえます。

『シンギュラリティ』に否定的な意見もある

AIの権威として著名なジェリー・カプラン氏は、ロボットには独立した目標および欲求がないため、AIの能力はあくまで人間のためにあると主張しています。2023年時点ではシンギュラリティが起こっていないため、AIが人間と同じような自我を持てるのか、科学的な証明は行えません。

確かなエビデンスに基づいた議論ではなく、あくまで仮説によって意見が交わされている状態であるため、『シンギュラリティ』については肯定的な意見がある一方で、否定的な意見も見られるといえるでしょう。

『シンギュラリティ』が与える社会的な影響・変化

『シンギュラリティ』が仮に起こった場合、わたしたちの社会生活にどのような影響が出てくるのかも把握しておくことが大切です。ここでは、ビジネスや社会制度、体や健康に関わる領域におけるそれぞれの影響・変化を解説します。

ビジネスの領域

『シンギュラリティ』が起こったとき、さまざまな技術レベルが従来よりも向上するため、ビジネスにおける多くの業務がAIなどによって自動化されることが予測されています。テクノロジーの進歩によって働く人の労働負担が軽減される一方で、一部の仕事においては雇用の機会が失われてしまうのではないかと懸念されています。

しかし、人間の感性が重視されるクリエイティブの領域や、他者とのコミュニケーションによって成り立つサービス業などの分野においては、人の役割を完全に代替するのは難しいとされています。

社会制度の領域

『シンギュラリティ』が起こると、社会制度にも変化が生じてくるといわれています。AIによって仕事を失う人が増加した場合には、今まで以上に経済的な格差が広がっていくと考えられているのです。

貧困の拡大は社会の不安定化につながる部分があるため、時代の変化にあわせて新たな社会保障制度の導入などが検討される必要があるでしょう。また、AIは多くのデータを取り扱うため、個人情報の保護といった点からも法制度の見直しが求められています。

体や健康に関わる領域

『シンギュラリティ』は、体や健康といった私たちの生活に密接な部分に影響をもたらす可能性があります。例えば、技術の進歩によって人間の脳や臓器などの仕組みがすべて明らかになり、AIが病気の診断を行うといったこともあるでしょう。

人間の体や健康にまつわる部分をどこまでAIに委ねるのか、といった点は法整備を含めて慎重に検討していく必要があります。

『シンギュラリティ』とAIの関係性

『シンギュラリティ』はいきなり到来するものではなく、AIを巡る議論や技術の進歩はこれまでも繰り返されています。AIそのものはすでに1950年代には登場していたといわれており、現在に至るまでのブームは3回ほどあったといわれています。

第1次AIブームが起こった1950年代では、人間のような思考ができる機械のことをAIと呼ぶようになり、さまざまな研究や開発が行われるようになりました。ただし、第1次AIブームでは、特定の決められたルールの下で最善の答えを導き出すといった範囲に限られており、人々の暮らしに直結する部分の技術ではなかったといえます。

次に話題となった第2次AIブームの1980年代は、コンピューターに知識を入れるための研究が盛んに行われたことに特徴があります。専門分野の知識を組み込んだシステムであるエキスパートシステムが大きな注目を集めるようになり、質問に対して適切な回答を行ってくれる点が特徴的です。

そして、現在に続く第3次AIブームにおいては、AI自らが学習を行い最適解を導き出す機械学習に注目が集まっています。過去の膨大なデータを大量に読み込ませることでAIが学習し、データに基づいた予測を行うことが可能になりました。

人間が一からコンピューターに知識を覚えさせなくてもよくなり、飛躍的に情報処理能力が高まったといえます。

『シンギュラリティ』が到来しても求められるスキル

『シンギュラリティ』が仮に到来したとしても、AIにすべてのことが行えるわけではないと考えられています。主なものとして、対人コミュニケーションや創造力といった点が挙げられます。また、今後新しくAIを活用、管理していく必要も生じるでしょう。

それぞれのスキルについて、さらに詳しく解説します。

対人コミュニケーション能力

『シンギュラリティ』が起こった場合であっても、人と人同士のコミュニケーションが失われるわけではありません。仕事や日常生活を送るうえで、コミュニケーションの重要性はむしろAIの時代であればこそ、重視されるでしょう。

AIによって業務効率化や自動化などは推進できても、人と協力をしながら新しいものを生み出していく力は、人間しか発揮できない部分があります。特にビジネスの領域においては、組織を引っ張っていくリーダーシップなどはAIの時代においてもなくなるものではなく、コミュニケーション能力が重視されていくはずです。

オリジナリティを生み出す創造力

AIは学習したデータを分析して、適切な回答を導き出すことに向いていますが、どれだけ正しい答えであってもあくまで過去のデータに基づくものである点を押さえておきましょう。ゼロから一を生み出すようなオリジナリティをAIは備えているわけではありません。

今後はますます変化の激しい時代になることが予測されているため、柔軟な考え方で豊かな発想力を実現できる創造力はAIの時代だからこそ高めていくことが大切です。AIに仕事を奪われてしまわないためにも、オリジナリティを生み出せる創造力はますます重要になっていくでしょう。

AIに関する幅広い知識

『シンギュラリティ』が起こる時代においては、単にAIを脅威と感じるだけでなく、AIを上手に使いこなしていく能力が求められます。AIの活用や、適切に管理する職業が新たに生まれてくる可能性があるでしょう。

そのため、AIに関する知識を今から蓄積しておくことは、将来に対する備えとして有効な手段だといえます。AIに関する情報やツールは日々発信されているため、たえず情報のアンテナを立てておくことが大切です。

まとめ:『シンギュラリティ』の基本を押さえて、確かなスキルを身につけよう

『シンギュラリティ』とは技術的特異点を表す言葉であり、人間よりも賢い知能を持ったAIが仕事や社会におけるさまざま領域で使われることをいいます。新たな技術の急速な進展は、日々の暮らしに大きな影響をもたらすものであるため、AIなどをはじめとした最新技術についての理解を深めておくことは大切です。

また、仮に『シンギュラリティ』が起こった場合に備えて、必要とされるスキルが何かを押さえておきましょう。時代の変化に応じて、柔軟な思考でとらえていくことが重要です。

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