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『リーガルテック』とは? サービスの種類と導入時の注意点を紹介

コラム

掲載日:2024/01/04

『リーガルテック』によって、法律にまつわる業務や手続きをIT技術の活用で効率化できます。リモートワークの普及などにより、日本においても『リーガルテック』に関するサービスは拡大を続けています。

現在、成長分野として注目されている『リーガルテック』ですが、サービスの種類や導入のメリット、注意点などわからない方も多いのではないでしょうか。本記事では、『リーガルテック』が注目される背景や市場規模と絡めて概要を解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

『リーガルテック』とは

『リーガルテック』について知るには、まず何ができるのかを押さえておく必要があります。『リーガルテック』が注目される背景、市場規模の予測と併せて解説します。

『リーガルテック』の概要

『リーガルテック』とは、法律と技術を組み合わせた言葉であり、法律業務や各種手続きにIT技術を活用することで、業務効率化やコスト削減につなげられるサービスまたはツールをいいます。具体的には、電子署名サービスや契約書の管理サービスなどがあげられます。

『リーガルテック』は2000年初頭の急速なインターネットの普及に伴って、アメリカを中心に広がっていきました。日本においても、リモートワークの普及によって電子契約サービスへの需要が拡大したことによって広がりを見せています。

『リーガルテック』が注目される背景

『リーガルテック』が注目される背景として、日本においては働き方改革が推進されている状況があげられます。『リーガルテック』のサービスを活用すれば、契約書の作成や管理、確認などの法律業務や各種手続きに関する業務を効率化できます。

定型化された業務については、ITやAIを用いることで自動化できる部分も多くあり、積極的に活用することで従業員の負担軽減につながるため、注目されているといえます。また、リモートワークの普及によって会社以外の場所でも業務を行う機会が増えたため、『リーガルテック』のサービスを取り入れる必要性が増しているといえるでしょう。

『リーガルテック』の市場規模

株式会社矢野経済研究所[A1] が取りまとめた「電子契約サービス市場に関する調査(2022年)」によると、国内の電子契約サービス市場(事業者売上高ベース)は順調に伸びていることがわかります。2018年は39億円でしたが、2025年には市場が395億円まで拡大すると予測されており、今後も普及していくものと考えられています。(※)これを参考にすると、『リーガルテック』の市場規模も拡大すると考えられます。

『リーガルテック』のサービスが多くの企業で導入されているのは、デジタル化の推進やDX(デジタルトランスフォーメーション)への関心の高まりが理由としてあげられるでしょう。電子契約サービスの導入は、業務効率化の効果がわかりやすいため、DXの実現につなげる一つの方法として取り入れやすいといえるでしょう。

(※)出典:株式会社矢野経済研究所「電子契約サービス市場に関する調査(2022年)」(2022年10月5日発表)

『リーガルテック』のおもなサービス

『リーガルテック』の基本的なポイントを理解したら、次にどのようなサービスがあるのかを把握しておきましょう。『リーガルテック』にまつわるサービスは数多くありますが、おもなものは以下の通りです。

・電子契約
・文書管理、文書作成
・申請、出願のサポート
・紛争、訴訟のサポート
・フォレンジック
・検索サービス

それぞれのサービスについて、特徴を解説します。

電子契約

電子契約のサービスを導入すれば、紙の書面でやりとりを行っていた契約手続きをWeb上で行うことが可能になります。電子署名やタイムスタンプ(手続きを行った日時を証明する技術)を用いることで、法的に有効な契約となります。

電子契約はWebに接続できる環境であれば、すぐに導入できるので業務効率化につなげやすいでしょう。また、紙の書類を多く扱わずに済むため、ペーパーレス化も推進できます。

一部電子化が認められていないものがあるものの、2020年に内閣府・法務省・経済産業省は「押印についてのQ&A」でリモートワーク推進などを目的として、契約書に押印がなくても契約そのものが有効であるとの見解を示しています。契約が成立した経緯を裏付ける資料やその他の方法によって証明できれば、契約の効力に影響は生じないとしている点も押さえておきましょう。

文書管理・文書作成

契約書や請求書といった事業活動における様々な書類をWebで管理・作成できるサービスもあります。業務量と比例して紙の書類は多くなりがちであり、印刷の手間や保管場所の確保など付随する業務も増えてしまいがちです。

また、いざ必要な書類を探そうとしても、きちんとファイリングできていなければ、文書を見つけ出すにも時間がかかります。文書管理機能を備えたサービスを利用することによって、必要な書類のデータをすぐに見つけることができ、書類の保管場所に悩むこともありません。

そして、文書作成機能を活用すれば、契約書などの法的なチェックが必要な文書も作成することが可能です。作成された契約書をアップロードすることで、AIが自動的にリーガルチェックを行ってくれるサービスもあります。AIによるレビュー機能と併用すれば、精度の高い文書を作成しやすくなるでしょう。

申請・出願のサポート

『リーガルテック』のサービスのなかには、様々な申請や出願などをサポートしてくれるものもあります。登記や商標などに関する業務は、ある程度定型化されているためIT技術の活用によって業務の効率化につなげられます。

申請や出願に必要なデータの送受信をWeb上で行えるため、手続きにかかる時間を短縮できるでしょう。

紛争・訴訟のサポート

紛争や訴訟に関する『リーガルテック』のサービスも提供されています。社内での不正を検知してくれるサービスや、訴訟を行うために必要な証拠を収集してくれるサービスなど様々です。

また、チャットツールを活用してオンライン上で弁護士などが仲介して紛争や訴訟の解決に結びつけているものもあります。

フォレンジック

フォレンジック(forensics)は直訳すると「科学捜査」「裁判証拠収集」などと訳されます。IT用語としてのフォレンジックは、コンピュータや端末に記録された法的証拠を集めることによって調査・解析を行う手法のことを指します。デジタルフォレンジックと称されることもあります。

ハードディスクを分析して、必要なデータを抽出するといったことも行えるので、訴訟に関連した地道な作業を行わなければならないときに役立ちます。

検索サービス

検索サービスとして、法令・特許・商標・判例・登記などに関する情報提供サービスがあげられます。民間企業のサービスだけでなく、官公庁や海外の大学などが提供している無料のサービスもあり、法律書や過去の裁判例などの情報が検索可能です。

また、弁護士を検索できるサービスもあり、法律相談や見積書の依頼などをすぐに行うことができます。

『リーガルテック』の導入で得られるメリット

『リーガルテック』を導入することで、業務効率化をはじめとした多くのメリットが得られます。それぞれのメリットについて見ていきましょう。

業務の効率化・標準化

『リーガルテック』のサービスを導入することで、文書作成や管理、チェックといった業務の手間を軽減でき、業務効率化につなげられます。例えば、書類作成時において人の手で確認していたものをAIにチェックしてもらうことで、作業時間の大幅な短縮につながります。

リソースに余裕が生まれることによって、他の作業に取り組める他、残業時間の削減なども実現できます。また、AIによるチェックであれば従業員の能力に結果が左右されないため、業務の標準化も推進可能です。

リモートワークへの対応

『リーガルテック』においては、Webに接続できる環境さえあれば利用できるものが多いので、リモートワークの推進にも役立つでしょう。自宅で契約書の作成や出先で書類のチェックなどを行えるので、場所や時間にとらわれずに多様な働き方を実現できます。

法律に関する業務は出社が欠かせなかったものでしたが、『リーガルテック』のサービスを活用することで、会社以外の場所から業務を行えるようになりました。

書類管理・情報収集の効率化

『リーガルテック』においては、Web上で書類の管理が行えるので、書類の保管場所に悩んだり、必要な書類を探し出すためにかけていた時間が不要になります。また、『リーガルテック』のサービスを提供している企業は、高いセキュリティ体制を構築しているので、書類管理の安全性についても問題ないといえるでしょう。

『リーガルテック』の注意点

『リーガルテック』は多くのメリットを備えていますが、導入にあたってあらかじめ注意しておくべき点がいくつかあります。どのような点に気をつければよいかを解説します。

すべての書類が電子契約に対応しているわけではない

『リーガルテック』の電子契約サービスを利用するときに注意しておきたいのは、あらゆる書類が電子契約を行えるわけではないという点です。契約の種類によっては電子契約が認められていないものもあるため、事前に確認が必要だといえます。

具体的には、公正証書が必要とされる事業用定期借地契約などが、電子化できないものとしてあげられます。そのため、サービスを導入する際はどのような契約であれば電子契約を行えるのかを把握しておきましょう。

取引先への説明と理解が必要

『リーガルテック』のサービスを導入するときは、自社の都合だけで進めてしまうと取引先などに混乱を招く恐れがあります。例えば、電子契約サービスを利用する場合、自社だけでなく取引先も対応していなければ使うことができません。

そのため、取引先などへ丁寧に説明をして理解を得るか、自社が紙の契約書と併用するかといった対応が必要にもなります。

トラブル時の対応をあらかじめ検討しておく

『リーガルテック』のサービスを導入すれば、すべての問題が解決するわけではなく、少なからずトラブルが発生する恐れがあることも事前に認識しておきましょう。例えば、AIによるチェックはあくまで過去のデータに基づくものであり、チェックを行った時点での最新の情勢を反映しているわけではありません。

また、サーバーがダウンするような状況ではサービスそのものが使えなくなるので、すべてをAIに任せきりにしてしまうのはリスクが高くなります。『リーガルテック』のサービスを導入するときは、リスク管理も踏まえた上で十分に検討してみましょう。

まとめ:『リーガルテック』は今後も注視するべき分野

昨今、法律業界で大きな注目を集めている『リーガルテック』は、文書管理・文書作成への活用だけでなく、訴訟における法的証拠の情報収集や登記登録など様々な業務の効率化を実現できます。

『リーガルテック』に携わる可能性のある業界の方は、その動向を注視して常に最新の情報をキャッチアップしましょう。

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