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【入門編】Julia言語とは?成り立ちからメリット・デメリットまでを解説

コラム

掲載日:2023/12/26

プログラミング言語『Julia』は、2009年に開発が始まり、2012年にオープンソースとして公開された比較的新しいプログラミング言語です。主に統計処理や機械学習に活用されており、ChatGPTなどのAIチャットサービスが次々登場する中で注目度が高まっています。

本記事では、『Julia』の成り立ちやメリット・デメリットについて解説します。機械学習で同じように用いられる『Python』との違いも取り上げるため、どちらを学ぼうか悩まれている方も参考にしてみてください。

プログラミング言語『Julia』とは?

『Julia』は、シンプルなコードで高性能な演算が可能なプログラミング言語です。本章では、『Julia』開発の経緯や、特徴、難易度について解説します。

MIT(マサチューセッツ工科大学)で生まれる

『Julia』は2009年にMIT(マサチューセッツ工科大学)で開発が始まりました。「高度な数値解析や科学技術計算が可能で実行速度も速く、他の言語の良いところだけを組み合わせた言語を目指した」と開発者たちは述べています。

実際、『Python』のような汎用性の高さや、『C言語』のような処理速度の速さなど他の言語の特徴をいくつも兼ね備えています。

2012年に『Julia』はオープンソース化され、現在は機械学習の分野を中心に人気が高まっている言語です。

統計処理、科学技術計算、機械学習に強み

『Julia』は、高速処理が可能かつ科学技術計算に特化した文法である点が特徴です。そのため、データサイエンティストやAIエンジニアからの人気が高いです。

例えば、文法がPythonと比較してシンプルで直感的に理解しやすいという点や、組み込み関数が多数用意されており統計処理や行列演算、数値計算の機能を活用しやすい点が挙げられます。

難易度が高いプログラミング言語

『Julia』の学習難易度は、他のプログラミング言語と比較するとやや高いです。理由は『Julia』特有の構文を覚える必要があることと、学習方法の少なさです。

『Julia』は多重ディスパッチなど特有の概念を有するため、理解するのに時間がかかる方も少なくありません。基本的な構文については『Python』などと似ている部分もあるため、他の言語を扱える方であればスムーズに進められるでしょう。

また、『Julia』は海外で開発された新しい言語であるため、日本語で学べるサイトや教材が少ないことも学習難易度が高い要因です。

『Julia』の3つのメリット

『Julia』を活用するメリットは次の3点です。

・無料のオープンソース言語
・動的言語かつシンプルな文法
・外部連携が優秀

それぞれのポイントについて解説します。

オープンソース言語

『Julia』は誰でも無料で利用できるオープンソース化された言語です。ソースコードはGitHubで公開されているため、すぐに学習を始められます。オープンソース言語は世界中のユーザーがバグの修正や改良を行うため、安定性が高いです。

また、統計処理や科学技術計算用の有料のソフトウェアライブラリ(MATLABやMathematicaなど)を購入する必要がありません。初期費用なしで開発に取り組め、個人で学習する際もGitHub上にユーザーが公開したガイドブックもあるため無料で学習を始められます。

動的言語かつシンプルな文法

動的言語でシンプルな文法を取っていることも『Julia』のメリットです。動的言語とは、コード実行時に変数の型やプログラムの構造を自動で調整してくれるプログラミング言語です。静的言語では、コードの中であらかじめ型を宣言する必要があり、コード量が増えてしまいます。

『Julia』は動的言語で文法もシンプルなため、コードが短く済み、開発工数の短縮にもつながります。型の宣言が不要で、計算式などを直感的にコーディングできるシンプルな文法が『Julia』の持ち味です。

外部連携に優れている

『Julia』は『Python』や『C言語』と外部連携可能で、拡張性が高いのがメリットです。『Java』など汎用性の高い言語ほどライブラリは豊富ではありませんが、他言語のライブラリやモジュールを呼び出すことで機能を補完できます。

組み込み関数の『ccall』を使えば、『C言語』の関数を呼び出して最適化されたコードの高速実行が可能です。また、『PyCall』パッケージを利用して『Python』のライブラリやモジュールを直接呼び出しながら、『Julia』で並列処理が可能です。

このように、ライブラリの少なさを補うための外部連携に優れたところも『Julia』の利点です。

『Julia』の3つのデメリット

『Julia』のデメリットは次の3点です。

・認知度が低い
・情報量が少ない
・アップデートの頻度が高い

それぞれ詳しく解説します。

認知度が低い

『Julia』はまだ歴史が浅いプログラミング言語であるため、『Java』や『C言語』のように認知度が高くありません。多くの人に知られていないため、開発者や開発事例も少なく、案件も少ないのが現状です。

しかし、AIやビッグデータの活用ニーズが高まっていることから、機械学習や数値計算に適した『Julia』を利用できるエンジニアの需要も高まることが見込まれます。

情報量が少ない

『Julia』はアメリカで比較的最近に開発されたため、日本では使用するエンジニアが少なく、情報があまり出回っていません。特に、学び始めの頃は教材や先輩エンジニアからの指導によってエラーや疑問点を解消しながら成長していきますが、解決策に出会えない可能性があります。

ただし、海外を含めるとユーザー数は一定存在するため、英語でのやり取りが可能であれば、公式のコミュニティ『JuliaDisucourse』や公式Slackで情報が得られます。また、今後需要が高まるにつれ、日本でも普及し情報発信者が増えてくるでしょう。

アップデートの頻度が高い

『Julia』はリリースから日が浅く、発展途上にあるためアップデートの頻度が高いです。アップデートが入ると仕様や操作感が変わることもあり、学習中の人にとって大きなストレスになるでしょう。

また、ある程度スキルを身につけてからも、アップデートが起こる度に変更箇所への対応をしなけらばならないため、開発に集中できない点が『Julia』のデメリットです。ただし、今後仕様が安定していく中で、少しずつアップデートの回数も減ってくることが予想されます。

JuliaとPythonの違いは?

機械学習やデータサイエンスの分野で、『Julia』と同じように使われている言語が『Python』です。一般的には『Python』の方がメジャーな言語ですが、両者にはそれぞれ特徴があります。『Julia』と『Python』の違いは主に次の3点です。

・実行速度
・ライブラリの種類
・外部連携

それぞれ順番に見ていきましょう。

実行速度

コードの実行速度は、『Julia』の方が『Python』よりとても速いです。『Julia』は『C言語』よりも速いため、『Python』の30倍近い速度で実行されるとも言われています。

『Julia』の速さは、先ほど紹介したJIT(Just In Time)コンパイルによるものです。実行速度が速いと、プログラム自体の処理速度も上げられるため、利便性の高いシステムが開発できます。

一方で、プログラムをまとめてコンパイルするため、完成まで実行結果を確認できないことやエラー箇所が特定しにくいといったデメリットもあります。

ライブラリの種類

ライブラリの種類は『Python』の方が圧倒的に豊富です。『Python』にはデータ分析に使えるNumpyやPandas、scikit-learnなど多くのライブラリがあります。

『Python』には、Webアプリケーション開発に用いられるDjangoやFlaskなど、データ分析以外に使えるライブラリも多いです。その汎用性の高さからChatGPTにPythonコードの実行機能が搭載されています。

一方『Julia』のライブラリは少なく、画像を扱うJuliaImagesなど数は限定的です。今後の普及によって種類が増えていくことが期待されます。

外部連携

外部連携機能については『Julia』が優れています。『Julia』は先ほど紹介したように『Python』や『C言語』を呼び出して、機能の拡張が可能です。『Julia』は外部連携によって、ライブラリの少なさをカバーしています。

『Julia』から『Python』を呼び出すにはPyCall.jlをインストールした上で、『PyCall』モジュールを読み込むだけです。これでNumpyなどの高度な数値計算が可能な機能を『Julia』でも利用できます。

『Julia』とあわせて習得しておきたい言語

ここからは『Julia』とあわせて習得しておきたいおすすめのプログラミング言語を紹介します。どれも汎用性が高く、案件も多い言語のため、学習時間に余力のある方は挑戦してみてください。『Julia』とあわせて学習をおすすめする言語は次の3つです。

・Python
・JavaScript
・GO

それぞれ特徴を解説します。

Python

『Python』は、YoutubeやInstagramなどのWebアプリケーション開発にも用いられている人気の高いプログラミング言語です。『Julia』と同じように機械学習やデータ分析にも利用できますが、『Python』の方がライブラリが豊富です。

そのため、『Python』で学習したライブラリを『Julia』の外部連携で呼び出して、両者の長所を組み合わせながら開発を進めると作業効率化につながります。

また、『Python』は認知度の高い言語であるため、学習に使える資料や書籍も多く、取り組みやすいのも魅力の一つです。

JavaScript

『JavaScript』は、フロントエンド開発に用いられ、ブラウザに動きをつけるためのプログラミング言語です。Webサイトにポップアップ画面などの動作をつけるために用いられています。

バックエンド開発に用いられる『Julia』とあわせて習得すると、フロントとバックエンドの両方を開発できるエンジニアとして活躍の幅を広げられます。

また、自分でコードを書いて動かすと、動作が視覚的にわかるため、モチベーションを保ちながら学習可能です。

Go

『Go』言語は、Googleが開発したWebアプリケーションなどのバックエンドに用いられるプログラミング言語です。シンプルな構文で複数のエンジニアが同時に開発しても混乱を避けられる上に、コンパイル型言語でコードの高速実行も可能です。

作業効率が高いことから日本でも『メルカリ』や『ぐるなび』など、多くのWebサービスで用いられています。

『Go』言語は作業効率が高い反面、機能が最小限に抑えられています。そのため、データ分析や数値計算を行うのであれば『Julia』を活用するなど、目的に応じた使い分けが必要です。

まとめ|機械学習には『Julia』がおすすめ

今回は『Julia』の特徴やメリット・デメリットについて解説しました。『Julia』は今後、需要が高まる機械学習やデータ分析において用いられ、実行速度の速さに定評があるプログラミング言語です。

エンジニアとしてのキャリアップを目指す場合は、ニーズの増加が見込まれる『Julia』の学習も行ってみてください。

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