エン・ジャパン株式会社は2022年9月22日、「最低賃金改定」についての調査結果を発表した。調査期間は2022年9月8日~13日で、企業の人事担当者432名から回答を得ている。これにより、同年10月1日に改定された「最低賃金改定」の認知度や給与の変動予定、および企業への負担や影響度などが明らかとなった。

「最低賃金改定」を認知している企業のうち半数以上が「給与の変動予定あり」
2022年10月より最低賃金(時給)が約31円引き上げられ、過去最高額となったが、企業ではどの程度認知されているのだろうか。まず、エン・ジャパンが「最低賃金が引き上げられることを知っているか」を尋ねたところ、「よく知っている」が62%、「概要だけは知っている」が33%で、合計95%が認知していることがわかった。

また、最低賃金改定について「知っている」とした回答者に対し、「最低賃金引き上げを受け、自社では給与を変動させるか」を聞くと、「最低賃金を下回るため、最低賃金額まで賃金を引き上げる」が24%、「最低賃金を下回るため、最低賃金額を超えて賃金を引き上げる」が17%、「最低賃金は上回っているが、賃金を引き上げる」が14%で、合計55%が給与を引き上げる予定であることがわかった。一方で、「最低賃金を上回っているため、賃金の引き上げは行わない」との回答は36%だった。

業種別では「最低賃金を下回り、かつ賃金を引き上げる」のは「メーカー」が最多に
続いて、「最低賃金改定に合わせて給与を変動させる」とした企業を業種別に見ると、「最低賃金を下回っており、かつ賃金を引き上げる」としたのは、「流通・小売関連」が50%でトップだった。以下、「サービス関連」が49%、「メーカー」が44%で続いた。

最低賃金の引き上げに対するコメントを自由回答で募ると、「最低賃金アップは良いが、全体の賃金が上がるわけでなく、一部にしか効果がない」(商社)や「世界情勢を鑑みて、タイミングは良いと考える」(その他)、「人件費増加は否めないが、人材確保の面からはプラスの効果もあると思う」(サービス関連)といった声があがった。
賃金引き上げの理由には「人材の確保・採用」や「社員モチベーション向上」も
さらに、同社が「賃金を引き上げる」とした回答者に対してその理由を聞くと、「最低賃金がアップするため」が73%で最多だった。以下、「人材の確保・採用」が48%、「社員のモチベーション向上」が45%で続いた。

6割が「最低賃金の引き上げが負担」と回答。「アルバイト・パート社員の多さ」を懸念
次に、同社が「最低賃金が引き上げられる場合の、自社への負担や影響度」について質問した。すると、「大いに負担になっている」が23%、「多少は負担になっている」が41%で、合計64%が「負担になっている」と感じていることがわかった。

また、最低賃金引き上げが「負担になっている」とした回答者に対し、「その理由」を聞くと、「アルバイト・パート社員が多い」が47%で最も多かった。以下、「扶養限度がある社員の勤務時間減少」が38%、「同業他社など各社が賃金を引き上げることで、採用難度が上がる」が37%、「賃上げ対象にならない社員のモチベーション低下」が26%となった。

今後の最低賃金改定について「職種別の賃金設定など柔軟な制度を導入すべき」との回答も
最後に、同社が「今後の最低賃金改定に対する考え」について尋ねると、「引き上げるべき」が37%、「職種別の最低賃金設定など柔軟な制度を導入すべき」が34%、「引き上げはせず、現在の金額を維持すべき」が15%となった。

本調査より、ほとんどの企業が「最低賃金改定」について認知しており、そのうち半数以上が給与を引き上げる予定であることがわかった。給与の変動については既存社員のモチベーションや新規の人材獲得にも関わってくることから、他社の動きを見つつ自社での計画を立てたい。
取材・制作:HRプロ編集部