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『レガシーシステム』の問題点は?そこからわかる脱却のための対策も解説

コラム

掲載日:2023/11/20

DXを実現するうえで、大きな障壁となるのが、古い技術や仕組みのまま運用され続けている『レガシーシステム』の問題です。『レガシーシステム』を使い続けることで、企業にはさまざまな損失が生じるとされており、DXを実現するうえで避けては通れない課題ともいえます。

今回は、『レガシーシステム』による具体的な問題と解決策、脱却に向けて求められる人材のタイプなどを詳しく見ていきましょう。

『レガシーシステム』とは

『レガシーシステム』とは、主に大企業などで古くから利用されている旧型のシステムのことです。IT業界では、1980年代に多くの企業がオフィスコンピューターやメインフレームを導入したこともあり、政府系機関や金融機関などでは現在でもその時代のシステムが使い続けられるケースが多いです。

レガシーには本来、『遺産』という意味がありますが、ITの分野では『時代遅れ』や『旧態依然』といったネガティブなイメージで用いられることも少なくありません。それは、20世紀後半から現在に至るまで、特に著しい成長を遂げた分野でもあり、旧来のシステムや技術による弊害が生じやすいためでもあります。

『レガシーシステム』も法改正や環境の変化に応じて、さまざまな改修を重ねながら使用されてきましたが、基礎となる技術や仕組みが旧式のままであることには変わりありません。このように幾度となく改修を重ね、利用し続ける企業もある一方で、システム刷新の必要性を実感している企業も増えてきています。

『レガシーシステム』の問題点

企業が『レガシーシステム』を使い続けることで、具体的にはどのような問題が起こるのでしょうか。ここでは、『レガシーシステム』が引き起こす5つの問題点について見ていきましょう。

大規模なシステム障害

『レガシーシステム』に依存し続ける状態は、大規模なシステム障害のリスクを招きます。古いシステムは老朽化や情報処理能力不足から、膨大なデータ処理などを行う際にダウンしてしまうリスクが高くなります。

システム障害が起これば、業務をストップさせてしまうため、事業への影響も甚大です。顧客や取引先にまで損害が広がれば、企業としての信用を失ってしまうことにもつながるでしょう。

コストの増加

環境の変化に応じて『レガシーシステム』を使い続けるには、定期的な改修を行う必要があります。老朽化による不具合の発生頻度も高くなるため、メンテナンス費用や改修コストがかかってしまうのも大きなデメリットです。

また、『レガシーシステム』の保守・運用に人員が割かれてしまうことから、貴重なIT人材資源を適切に活用できなくなる点も大きな問題といえます。

コンプライアンスに対応できない

『レガシーシステム』が抱える問題点のひとつには、『コンプライアンスへの対応が難しい』というポイントもあげられます。ビジネスやITに関連する法制度は細かな頻度で改正されており、それに合わせて企業も柔軟に仕組みの改善を行っていく必要があります。

しかし、『レガシーシステム』では法改正のための改善が追い付かず、対応のためにさまざまな手間がかかるのが難点です。新たなシステムを補助的に利用したり、多くの人手をかけて対処したりしなければならないケースもあり、業務効率やコストパフォーマンスが大きく低下してしまうのです。

最新システムとの互換性がない

古いシステムは新しいシステムとの互換性がなく、連携がしにくくなるのもデメリットです。たとえば、取引先が最新のシステムを導入していた場合、自社のシステムとの互換性がないという理由から、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあるでしょう。

IT人材の不足

『レガシーシステム』は仕組みそのものが古く、部分改修を繰り返しながら存続しているため、中身がブラックボックス化してしまうのも大きな問題となっています。すべての経緯を把握している従業員が退職すると、旧システム用のプログラミング言語を扱える人材がいなくなり、機能しなくなってしまう可能性もあるでしょう。

実際のところ、経済産業省の『DXレポート』によれば、『レガシーシステム』の保守・運用の属人化により、約6割の事業者が『継承が困難』と回答していることが明らかにされています。また、古いシステムを使い続けている企業は、IT人材の採用時にも不利になってしまう可能性があります。

若手の優秀な人材は、最新のシステムを想定してスキルを身につけているため、古いシステムへの対応が難しく、またその必要性も感じません。そのため、自身のスキルを活用できないという点で、就職先としての候補から外れやすくなってしまうのです。

出典:経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)」

『レガシーシステム』問題を脱却するための対策

これまで見てきたように、『レガシーシステム』はさまざまなリスクをはらんでおり、そのまま放置すれば大きなトラブルや損害につながる可能性があります。しかし、システムの入れ替えには大きなコストや労力が発生するため、実現に至らない企業が多いのも現実です。

ここでは、『レガシーシステム』が引き起こす問題から脱却するための改善方法を3つご紹介します。

マイグレーション

『マイグレーション』とは、データや機能を保持したまま新たなシステムに移行することを指します。たとえば、『データマイグレーション』は旧式のシステムからデータの欠損や重複を整理し、形骸化したものを削除して新しいシステムへ移行する方法です。

それ以外にも、ストレージやアプリケーションのマイグレーションなどがあります。それぞれ要件や機能を大きく変えず、データを損なうリスクを抑えながら既存システムを段階的に移行できるのがメリットです。

モダナイゼーション

『モダナイゼーション』とは、既存のシステムを現在の要件や環境に適合するように刷新することを指します。マイグレーションは既存システムの基盤を大きく変えずに移行するのに対し、モダナイゼーションはシステムの基盤そのものを大きく刷新する点が特徴です。

たとえば、業務の効率化やセキュリティの向上を実現するために、新しい機能やインターフェースの導入を行います。自社が保有するデータやプログラムを活用しつつ、稼働中のシステムを刷新するため、新システムの構築に比べコストを抑えられるのがメリットです。

クラウドへの移行

マイグレーションの具体的な方法としては、クラウドへの移行があげられます。オンプレミスのデータベースやアプリケーション、サーバーなどをクラウド上に移行することで、故障によるシステムの不具合がなくなり、自社でかかっていた保守コストも削減できるようになります。

また、クラウドは必要なタイミングで必要な分だけ利用することができるため、拡張性が高く、有事の際にも対応しやすいのがメリットです。さらに、『データコンプライアンス対応がしやすい』『企業間でのデータ統合が行いやすい』など、『レガシーシステム』の弱点を補う長所を備えているのが大きな特徴です。

脱却に向け企業がDX人材を求めている

企業が『レガシーシステム』から脱却するためには、DX推進を主導する人材の確保が求められます。一方で、DX人材は大きく不足しており、採用市場においては売り手市場化が加速している状態です。

ここでは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2019年に行った『デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査』をもとに、どのような人材の需要が高まっているのかを詳しく見ていきましょう。

プロデューサー

プロデューサーとは、デジタルビジネスやDXの実現を主導するリーダー格の人材です。大局的な視点から企業全体のDXを統括する立場であり、ITに関する知識だけではなく、経営戦略やビジネスモデルの構築においても専門的な知見が求められます。

本調査によれば、全体の7割程度の企業が不足感を覚えており、そのうち51.1%は『大いに不足』と回答しています。プロデューサーにはCDO(最高デジタル責任者)などの経営層としての役割も含まれており、多くの企業が求める一方で、一朝一夕には育成できないのが現状です。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーとは、デジタルビジネスに関するシステムの企画・立案・推進などを担う人材のことです。プロデューサーが描いた戦略に沿って、企画の具体化や推進を担う役割であることから、利害関係の調整力やファシリテーターとしての能力が求められる立場です。

同調査では、やはり全体の75%近くの企業が何らかの不足感を覚えており、そのうち50.0%が『大いに不足』と回答しています。

アーキテクト

DXやデジタルビジネスに関するシステム設計を担当する人材であり、課題の分析や要件定義、設計・開発サポートなどを行います。高度なデジタル技術とともに、ビジネスへの深い理解や経営的な視点も求められるポジションです。

アーキテクトが不足していると感じている企業の割合は7割近くに達しており、そのうち47.8%は『大いに不足』と回答しています。

データサイエンティスト/AIエンジニア

DXに関するデジタル技術やデータ解析に精通した人材であり、ビジネスモデルへのAI活用や、ビッグデータの取り扱いを担うポジションです。統計や解析、機械学習といった分野の知識とスキルが必要であり、ビジネスへの深い理解も求められます。

データサイエンティストやAIエンジニアの不足を感じている企業の割合も、全体の7割程度と高く、『大いに不足』と回答している企業は51.1%にのぼります。

UI/UXデザイナー

UI/UXデザイナーは、DXやデジタルビジネスのユーザー向けデザインを担当する人材です。ユーザーが扱うインターフェースを構築するポジションであり、使い心地の良さや快適さを追求することで、顧客の利用率や継続率向上を実現するのが主な役割です。

UI/UXデザイナーは企業全体の6割程度が不足感を覚えており、そのうち38.0%は『大いに不足』と回答しています。

エンジニア/プログラマー

エンジニアやプログラマーは、デジタルシステムの実装やインフラ構築などを担当する人材です。プログラミング言語に関する理解や実践的なスキルが求められるとともに、特にDXの推進においては、ソフトウェアだけでなくハードウェアの幅広い知識も必要とされます。

企業全体として、不足感を覚えている割合は6割程度であり、そのうち35.9%は『大いに不足』と回答しています。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査報告書本編」

このように、DX人材はいずれの分野においても深刻な供給不足が生じている一方で、求職者から見れば活躍の機会をつかみやすい状況にあるのも確かです。

まとめ:『レガシーシステム』問題の解決に向けDX人材へのニーズが高まる

『レガシーシステム』を利用し続けることには、システム障害などのリスクや、コストパフォーマンスの低下といったさまざまなデメリットがあります。しかし、システムの刷新には大きなコストや人的リソースが必要となるため、現実的には思うように実践が進んでいないのも現状です。

今後は『レガシーシステム』からの脱却に向けて、ますますDX人材の需要が増えていくと考えられます。求職者の立場から見れば、必要なスキルと経験を積み上げていくことで、自身のキャリアや可能性を大きく開拓できる分野といえるでしょう。

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