掲載日:2023/11/15

『サーバーサイドエンジニア』は、Webサーバー側のシステム開発やデータ管理を行う技術者です。ユーザーの目に触れない部分のシステムを扱うことから、ユーザーに見えるフロントエンドと対比してバックエンドエンジニアと同義で扱われることもあります。重要性が高い職業である一方、ユーザーの目に触れない部分を扱う仕事であることから、「『サーバーサイドエンジニア』に興味はあるけど、将来性はあるの?」「求められるスキルや資格は?」といった点で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は『サーバーサイドエンジニア』の将来性や求められるスキル、仕事内容などをまとめて解説します。
『サーバーサイドエンジニア』の将来性は?

『サーバーサイドエンジニア』の仕事は、サーバーそのものの需要に紐づいて成り立っているため、技術の転換などによる必要性の低下を懸念する方もいるのではないでしょうか。しかし、今後はクラウドコンピューティングなどの普及により、『サーバーサイドエンジニア』の役割がますます重要になってくると考えられています。
たとえば、総務省の資料では、世界のパブリッククラウドサービス市場規模は、2020年を機に爆発的な伸びを見せていることが明らかにされています。また、国内のパブリッククラウドサービス市場は2021年時点で前年比28.5%増となっており、オフィスの移転・縮小にともなうクラウドへの移行や、DXの推進などによってますます拡大していくとの見通しです。
当然ながら、技術の変化によって求められるスキルや知識もアップデートしていく必要はありますが、『サーバーサイドエンジニア』そのものの需要がなくなる可能性は低いと考えられるでしょう。
『サーバーサイドエンジニア』の需要が高い理由を3つ紹介

『サーバーサイドエンジニア』の需要が高いとされるのには、具体的にどのような理由が関係しているのでしょうか。ここでは、次の3点から詳しく解説します。
・データベースを活用した開発が増えている ・Webアプリケーションの開発が増えている ・IT人材が不足しており企業からの需要が高い |
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データベースを活用した開発が増えている
近年のビジネスにおけるサービスは、そのほとんどでWebが活用されています。マーケティングにおいても、従来のマスメディアからSNSとWebを連携するWebマーケティングへと価値観が変化しており、Webサービスの活用は欠かせない要素となりました。
そして、Webサービスの開発においては、ほとんどのケースでデータベースが活用されています。自社サーバーやクラウドで使用するデータベースを活用するには、確かな技術を持つ『サーバーサイドエンジニア』が必要であるため、多様な場面で求められる存在といえるのです。
Webアプリケーションの開発が増えている
Webを用いたビジネスモデルの多くでは、Webアプリケーションの活用も欠かせない要素となります。たとえば、各種ECサイトや飲食店の予約サイトといった幅広い場面で用いられており、今後も需要はますます高まっていくと考えられます。
Webアプリケーションの開発においては、ユーザーに表示されるフロントエンドの開発と、サーバー側で開発をおこなうバックエンドに分けられます。このうち、『サーバーサイドエンジニア』は裏方にあたるバックエンド側の開発を担うため、役割の汎用性が高いのが特徴です。
Webアプリケーションの需要に合わせて、『サーバーサイドエンジニア』もさまざまな場面で活躍の機会があると考えられるでしょう。
IT人材が不足しており企業からの需要が高い
現在の求人市場においては、IT人材の不足が多くの企業に共通する課題となっています。たとえば、経済産業省が発表した『IT人材需給に関する調査』では2030年に45万人のIT人材が不足するとされており、急激な売り手市場化が進んでいる状況です。
『サーバーサイドエンジニア』もIT人材の代表的な職業であることから、データを見ても今後はさらに需要が高まる可能性があると考えられます。
『サーバーサイドエンジニア』に求められる知識とスキルを紹介

『サーバーサイドエンジニア』として働くうえでは、基本的なITの知見とともにいくつかおさえておきたいスキルがあります。ここでは、知識とスキルが求められる代表的な分野として、次の4つの領域について詳しく見ていきましょう。
・開発環境(OS・仮想環境)の知識とスキル ・クラウドの知識とスキル ・セキュリティの知識とスキル ・仮想化技術の知識とスキル |
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開発環境(OS・仮想環境)の知識とスキル
開発環境の構築には、OSや仮想環境などの知識やスキルが必要です。実際の開発環境では、OSのなかでもLinuxがよく使われているため、『サーバーサイドエンジニア』にとって必須の知識やスキルだといえます。
また、VirtualBoxやDockerといった仮想環境の作成ツールに関する知識やスキルも必要になります。
クラウドの知識とスキル
前述のように、クラウド市場の規模は拡大しており、多くの企業がサーバー環境の選択肢としてクラウド環境を利用しています。たとえば、総務省の『令和4年通信利用動向調査』によれば、クラウドコンピューティングサービスを利用する企業の割合は7割を超えており、そのうち9割近くが「非常に効果があった」あるいは「ある程度の効果があった」と回答しています。
そのため、今後はクラウドに関する知識も、『サーバーサイドエンジニア』として活躍していくうえで必要なスキルといえるでしょう。
セキュリティの知識とスキル
サーバーを安全に管理するためには、セキュリティに関するスキルも必要です。ハッキングやウイルス感染などの危険を避け、情報漏えいの脅威を防ぐためには、高度なセキュリティの知見が求められます。
国立の研究機関であるサイバーセキュリティ研究所が発表した『NICTER 観測レポート』によれば、セキュリティ攻撃による観測パケット数は2013年時点で約6万であったのに対して、2022年は約183万となっており、30倍以上も増加していることが明らかにされています。セキュリティの専門的なスキルを持った人材の需要は、今後もますます増加していくと考えらます。
仮想化技術の知識とスキル
仮想化技術に関する知識とスキルも、サーバーを効率的に運用するうえで重要な武器となります。仮想化によって1台のサーバーが複数のサーバーの役割を果たせるようになるため、大幅なコストダウンが可能となるのです。
そのため、クラウドとの相性が良く、コンテナ技術(ひとつのOS上で複数のプログラムを構築する技術)の利用シーンも幅広く想定されることから、サーバーエンジニアとしての価値を高める強みになる可能性が高いです。
『サーバーサイドエンジニア』の仕事内容

『サーバーサイドエンジニア』のメイン業務は、これまで見てきたように、バックエンドでのデータ処理環境の構築と保守です。また、新しいソフトウェアやバージョンアップに伴う環境の調整・構築も担います。
たとえば、ECサイトであれば、ユーザーが注文ボタンをタップしたときに正しく処理できるようなシステムを構築するのが、『サーバーサイドエンジニア』の役割です。そのほかの具体的な業務としては、『外部システムやデータベースとの連携』『サイバー攻撃に備えたセキュリティ対策』なども該当します。
その上で、IT技術の進歩によって『サーバーサイドエンジニア』に求められる役割も多様化しているため、企業によってはフロントエンド側の業務も任されるケースがあります。
将来性のある『サーバーサイドエンジニア』になる方法

将来性のある『サーバーサイドエンジニア』になるためには、必要な知識やキャリアを効率的に身につけていくことが大切です。ここでは、そのための基本的なポイントとして、次の2つの項目について見ていきましょう。
・OSの知識やITに関する基礎知識を身につける ・資格を取得する |
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OSの知識やITに関する基礎知識を身につける
『サーバーサイドエンジニア』はサーバーに関する専門職であるとともに、IT人材の代表格でもあります。ITやOSに関する基礎知識は、ある程度備えていることが前提とされるので、丁寧に身につけていく必要があります。
ITに関する分野では専門的な用語が多く用いられるため、基礎知識が欠けている状態では、進捗状況の共有やクライアントとのミーティングなどで大きな影響が出てしまうでしょう。まずは、IT分野の共通言語をしっかりと身につけ、そこから業務経験を通して必要なスキルや知識を積み上げていくことが重要です。
資格を取得する
『サーバーサイドエンジニア』として働くうえでは、自身のスキルや知識を客観的に証明する方法として、信頼性のある資格を取得するのが近道となります。代表的なものとしてあげられるのが、経済産業省の認定により『独立行政法人情報処理推進機構(IPA)』によって運営されている『情報処理技術者試験』です。
『情報処理技術者試験』は、経済産業省によって認定される情報系の国家試験であり、難易度や専門分野別に13種類の試験で構成されています。
例えば、『基本情報技術者試験』は入門レベルのエンジニアを対象とした試験であり、基礎的な知識の理解が求められます。もしエンジニアの方で『基本情報技術者試験』を取得されている方は、バックエンド領域の高度な知識・技能が求められる『データベーススペシャリスト試験』へ挑戦するのもおすすめです。
その上で、『サーバーサイドエンジニア』としての専門的な知見を磨くためには、『AWS認定クラウドプラクティショナー』や、クラウドを使ったLinuxでの開発知識が問われるLinux技術者認定資格『LinuC』なども取得しておくと良いでしょう。
まとめ:『サーバーサイドエンジニア』は需要が高く将来性のある職業である

『サーバーサイドエンジニア』は、主にユーザーの目に触れないバックエンドを担当する職業ですが、WebサイトやWebコンテンツを制作するうえでなくてはならない存在です。IT人材の不足やクラウド市場の拡大により、今後もますます需要が増えていく分野とされており、将来性も十分にあると考えられます。
一方で、技術の進歩によって求められる業務内容は変化していくため、長く続けていくには知識の整理やアップデートが必要です。資格の取得などを目標に学習計画を立て、スキルの向上を続けていくことが、『サーバーサイドエンジニア』としてのキャリアを広げる近道といえるでしょう。