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ビッグデータの活用事例5選|活用するメリットや分析方法を徹底解説

コラム

掲載日:2023/10/13

近年、多くの企業でビッグデータを活用したビジネス戦略が立案されており、IT業界に関心を寄せる方が増えています。注目される一方で、実際どのような形でビッグデータが活用されているのかわからない方も多くいるかと思います。

本記事では、ビッグデータの活用方法をより具体的にイメージできるよう活用事例5つをご紹介し、メリットや分析方法についてわかりやすく解説します。

そもそもビッグデータとは

ビッグデータとは、マンパワーでは処理しきれない大量のデータ群を指します。ビッグデータは、以下の5つのVが高いレベルで備わっています。

● Volume(量)
● Veracity(正確性)
● Variety(多様性)
● Velocity(速度)
● Value(価値)

近年では取り扱いが難しかったデータを即座に分析できるようになったため、ビッグデータを活用する企業が広まりました。また、ビッグデータの活用によって、生産プロセスや在庫管理の効率化などの効果を享受する企業も増えています。

なお総務省によると、ビッグデータは以下の4つに分類されます。

● 国や地方公共団体が提供する「オープンデータ」
● 暗黙知(ノウハウ)をデジタル化・構造化したデータ
● M2M(Machine to Machine)から吐き出されるストリーミングデータ
● 個人の属性に係る「パーソナルデータ」

引用:総務省「ビッグデータの定義及び範囲」

ビッグデータの身近な活用事例を5つ解説

ビッグデータについてなんとなく理解はできても、実際にどう活用するのかイメージができない方も多くいるのではないでしょうか。
続いては具体的なイメージを持ってもらうため、下記5つの活用事例を紹介していきます。

●本田技研工業|渋滞予測や省燃費ルートの情報提供
● パナソニックアプライアンス|業務工程の改善
● 気象庁|天気予報や気候変動の監視に活用
● ローソン|売上アップ
● ダイキン|品質管理の強化

それぞれの事例について詳しく解説します。

本田技研工業|渋滞予測や省燃費ルートの情報提供

本田技研工業は、ドライバーがより安全かつ環境に配慮した運転ができるように、渋滞予測や省燃費ルート等の情報提供を行う「internavi」を提供しました。

「internavi」はインターナビ装着車の走行データを収集・共有し、渋滞を回避してより早く目的地にたどり着くルートを導き出す「フローティングカーシステム」を導入しています。

会員数は145万人(2012年5月時点。現在新規会員の受付は終了しています。)に達しており、すべての会員から5分おきにデータ収集を行うため、膨大なデータを活用することができます。

また、車両内のセンサーから収集している燃料噴射量のデータを使い、可能な限り低燃費で目的地までたどり着くルートの提供も可能です。

渋滞や燃費のデータを提供した結果、到着時間が約20%早いルートが案内できるようになり、約16%のCO2削減効果が出ました。さらに急ブレーキ回数を約7割減少させることにも成功しました。

パナソニックアプライアンス|業務工程の改善

パナソニックアプライアンスでは、従業員全員が働きやすい労働環境の構築を目的として、ITツール「しごとコンパス」を導入しました。

「しごとコンパス」は、PC操作ログから実働時間の記録や各種アプリケーションの使用時間を確認することはもちろん、業務の詳細まで確認可能なツールです。

業務の詳細を確認することによって、予定通りに進まなかった仕事や原因不明な長時間労働などの課題に対して、具体的な改善策を考えられるようになりました。

現在では、業務プロセスの改善や長時間労働の回避などで効果が発揮されています。

気象庁|天気予報や気候変動の監視に活用

一般企業だけでなく、行政でもビッグデータが活用されています。

気象庁では、降水量や気温、湿度などの観測を行っており、そのデータを天気予報や気候変動の監視に活用するのです。

例えば、アメダス(AMeDAS: Automated Meteorological Data Acquisition System)と呼ばれる地域気象観測システムは、日本全国の降水量、気温、風速などを観測し、災害防止に役立てられています。

私たちが普段目にしている天気予報は、気象レーダーや静止気象衛星などさまざまな角度から観測されたデータをもとにして成り立っていると言えるでしょう。

また、1980年代後半まで80%程だった天気予報の的中率は、ビッグデータの活用によって90%近くまで向上しています。(令和4年時点)
参考:天気予報の精度検証結果

ローソン|リピーターの傾向をもとにした販売戦略

ローソンは、「Ponta(ポンタ)」の導入によって、「1割のヘビーユーザーが6割の売上を占めている」といった売上に関するデータがわかるようになりました。

ビッグデータの中でも、最も重視されているのがリピート率です。

以前、ある媒体がローソンへ取材した際、「ほろにがショコラブラン」という菓子パンの売上順位は31位でしたが、データを分析すると女性から頻繁にリピートされていることがわかりました。

「ほろにがショコラブラン」はローソンのみでしか販売しておらず、仮に分析せずに機会ロスが多発していたならば、大事な販売機会を逃してしまっていたでしょう。

このように一見わからないようなデータを明確化できるため、有効な売上アップに役立つ施策を実行できるようになりました。

ダイキン|品質管理の強化

ダイキンでは、主にエアコンや部品の故障データを業務プロセスの改善に活用しています。

以前まで部品の経年劣化や不具合など故障の傾向把握を人力で行っており、ロット不良で特定の部品における故障率が増加した際など、品質管理者が異常値を確認した段階で原因の解明を進めていました。

しかし、部品のロット不良や故障しやすい箇所を自動的に発見し、アラートを出してくれるアルゴリズムを組み込んだ監視型AIを活用して大幅なリソースの削減を実現しました。

このAIは故障事例や過去起きた不具合などのビッグデータを蓄積・活用し、トラブルの原因を自動で特定することができます。

例えば、これまで「エアコンが故障した」という問い合わせが入ると、まず現場に訪問して原因の特定、そのあと再度訪問して部品の交換など修理を行っていました。

AIおよびビッグデータを活用することにより、過去事例などをもとに故障原因を自動で突き止めることができるため、必要な道具や部品がわかり一度の訪問で済むこともあります。

ダイキンではこのビッグデータを新製品の開発にも活用しています。過去に起きた故障や不具合のビッグデータを活用することで、より良い製品を開発し続けているのです。

ビッグデータを活用するメリット

ビッグデータを活用するメリットは、主に以下の3つです。

● 現状の課題を明確にできる
● 質の高い効果検証ができる
● ビジネスチャンスを拡大できる

メリットを把握しておけば、ビッグデータを活用しやすくなるため詳しく解説します。

現状課題の明確化

1点目のメリットとして挙げられるのが、収集したビッグデータの解析による課題の明確化です。

例えば、ツールを活用してデータを収集することで、「どの商品が売れていないか」「どの集客方法が活かしきれていないか」など、購入数や購買傾向といったユーザー行動を解析し、自社の課題をリアルタイムに把握することができます。

意思決定の効率化

ビッグデータの活用は、前述したユーザー行動の解析による自社課題の明確化に限らず、戦略立案における意思決定の効率化を期待できます。

個人の主観的な意見で方針を決めるのではなく、実際のユーザー行動などの数字・ビッグデータを活用し定量的に判断することで、より戦略的なマーケティング施策の考案に繋がります。

また、ビッグデータを活用することで個人の経験や知見に左右されず判断が下せるため、属人的なマーケティング体制の改善も期待できるでしょう。

ビジネスチャンスの拡大

ビッグデータはその多様性によって、ビジネスチャンスを拡大できます。

さまざまな情報源からデータが収集されるため、既存製品やサービスに対する評価、消費者の趣味や嗜好、競合他社の動向など幅広い情報の取得が可能です。

自社のデータや消費者のデータ、競合他社のデータなどを分析すれば、新たなビジネスアイデアや市場におけるビジネスチャンスを発見できます。

効果的な戦略を練られるため、ビジネスの成功に不可欠な要素と言えるでしょう。

ビッグデータの分析方法

ビッグデータの分析方法は、以下の通りです。

● クロス分析
● アソシエーション分析
● ロジスティック回帰分析
● クラスター分析
● 決定木分析

それぞれ詳しく解説します。

クロス分析

クロス分析とは、属性ごとの情報収集やデータを分析する際に使われる手法です。

膨大な情報量から、異なるデータセット同士の関係性を解明する場合に適しています。

クロス分析はデータ間の複雑な関係性を可視化して、重要なパターンを発見するのに役立ちます。

市場調査や顧客分析、マーケティング戦略などで活用されるケースが多く、クロス分析を使えば迅速な意思決定が可能となるでしょう。

アソシエーション分析

アソシエーション分析とは、2個以上の商品やサービスの関連性を分析するために用いられる手法です。

多くのデータから顧客が購入した商品やサービスをデータとして保存し、その顧客が同時に購入する商品やサービスも明確にできます。

顧客の行動傾向が把握できるため、購買行動が理解できれば効果的にマーケティング戦略を立てられ、顧客に対して適切なアプローチができるようになるでしょう

ロジスティック回帰分析

ロジスティック回帰分析とは、さまざまな事象が発生する確率を分析する手法です。データを使って「その事象が発生する確率」を予測するために用いられ、主に以下のような場面で使われます。

● 商品を購入するかしないかの予測
● 病気にかかるかどうかの予測
● 気象観測

例えば、オンラインショップで顧客が商品を購入する確率を予測する場合には、過去の購買データやウェブサイトのアクティビティ情報から特定の商品を購入する確率の計算に活用されます。

膨大なデータからパターンや関連性を見つけられるため、データから得られた情報をもとに効果的なアプローチができるでしょう。

クラスター分析

クラスター分析とは、似たもの同士のデータをグループ化するための手法です。具体的には、顧客の購買履歴や好み、行動データから類似した顧客グループを特定し、それぞれに適切なマーケティング戦略を展開します。

似た性質を持つデータをグループ化すれば、データの性質や傾向を明確にできます。顧客の好みや購買傾向を把握できるため、精度の高いターゲティングが可能になるでしょう。

決定木分析

決定木分析とは、データを木のような階層的な構造で表現する手法です。取得したデータをわかりやすく可視化するなどのメリットがあり、今後どういった人に商品やサービスの販売促進を行うべきかを絞り込めます。

ビッグデータを使ってデータ内のパターンやルールを見つけ出せば、意思決定や予測モデルの構築に役立つでしょう。

まとめ:ビッグデータはさまざまな企業で活用されている

本記事では、ビッグデータの5つの活用事例や、メリット、分析方法を解説しました。さまざまな企業で活用されているビッグデータは、業務プロセスの改善やマーケティング戦略の構築などに役立ちます。

ビッグデータは数多くの企業で活用されていますが、一方で活用しきれていない企業もあります。背景にはビッグデータを扱える人材の不足があるため、今後データアナリストなどの職種は益々需要が増えていくでしょう。

ビッグデータで広がるビジネスチャンスの可能性を踏まえ、自身が価値を発揮できる領域がないか検討してみてはいかがでしょうか。

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