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黄皓さんと語るビジネスハック!
~VUCA時代に成長し続けるビジネスを生み出す起業家とは~

人を知る

掲載日:2023/05/12

これまでの常識を覆すような社会変化が次々と起こるVUCA(ブーカ)時代に、成功するビジネスを生み出す秘訣はあるのか!?

今回は、バチェラー・ジャパンをはじめ数多くのメディアに出演し、経営者・ビジネスパーソンとして多くの関心を集めるミラーフィット株式会社 代表取締役 黄皓さんと、公共事業の立ち上げ、複数の子会社設立等、事業づくりの経験を持つ当社執行役員CMOの上原郁磨のスペシャル対談をお届けします。(以下敬称略)

会社員の営業から出発して『起業』

上原:はじめまして。本日は黄さんとお話しさせていただくのを楽しみにしておりました。

:ありがとうございます。今日は、ビジネスパーソンとして、また経営者として先輩の上原さんとお話させていただくのを楽しみにしてきました。

上原:恐縮です。簡単に自己紹介をさせていただきますと、私は建材メーカーを経てSBテクノロジーに入社し、法人向けの営業、ソフトバンクグループ各社向けの営業を経験、その後、公共向けの営業部門を立ち上げ100億円を超える規模に拡大し、現在は営業部門の責任者を任せてもらっています。

ソフトバンクグループのヤフーを担当していた頃、過去の災害をきっかけに、自治体の住民に対して確実に情報を届けられるように、セキュリティはもちろんですが、データを東西に分散管理するクラウド環境に置かれたWEB管理を自治体に提供しました。これがきっかけで公共事業を立ち上げ、日本が抱える課題に取り組んできました。中でも農業の改革には注力しています。社内起業し、農業従事者の皆さまに直接貢献すべく、農業経営と業務効率の支援を行う株式会社リデンを立ち上げました。当社として国の方針を実現するための支援をSBテクノロジーで、農業従事者の皆さまに直接的なサービスを提供する企業としてリデンで農業改革を推進しています。

:私は中国生まれの中国人で、高校から日本に来ました。大学卒業後、大手商社に入社し、鉄鋼製品やステンレス製品を中国の問屋や貿易商に電話をかけて売り込む営業を経験しました。その後、メキシコに赴任したのですが、30歳手前で「もっと自分が働いた証が感じやすい、人の笑顔に貢献できる仕事がしたい」と思うようになって、退職しました。

当時、「自分磨き」というキーワードが気になっていて、ジムに通いだしました。そこで自分や周りの人が笑顔になるのが素晴らしいと思い、2016年にリーズナブルに利用できるパーソナルジム・エステの会社「BESTA」を創業しました。順調に店舗展開をしたのですが、2020年にコロナ禍になり、お客様がジムに来られなくなった。

そこで、「どんな環境になっても、人が自分の人生を諦めることのないサービスを作りたい」と考え、鏡型の端末で自宅トレーニングを提供するミラーフィット株式会社を、2020年に創業しました。他に、中国で貿易の会社もやっていますので、今、3社の社長を務めています。

社内起業には会社の支援が必須

:上原さんは、公共事業や農業という社会的な問題解決に取り組んでいらっしゃるのですね。とても共感します。そうした問題解決に取り組むときに、まず何から始めていらっしゃいますか。

上原:人中心に考えることとその人の抱える問題のインサイトを抽出し言語化することですね。ビジネスは再現性がないと成長できない。そのためには、ものごとを言語化できる能力が必要です。

:問題を言語化し、再現性のあるビジネスをつくる。全く同感です。

上原:実は、今だから言えるのですが、私は言語化が上手くできなかった。このままの能力・スキルでは大きな成長は望めない。学び直そうと思い、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科に入りました。ちょうどそのときソフトバンクアカデミアの募集もあり、学ぶタイミングは同時がいいと、両方一度に入学しました。ソフトバンクアカデミアは、今も在籍しています。

:それはすごい。私はサラリーマン当時、日々の業務に忙殺されて、評価されたいと目先のことに取り組んでしまっていました。上原さんが、お忙しいなかでそれだけ頑張れた一番のモチベーションは、何だったのですか。

上原:私に目にかけ育ててくださった社長に恩返しをしたいその1点が大きいですね。私が働きやすいように環境を整えてくださったんです。

:自己成長意欲の高い社員に対して、会社自体がサポーティブなのですね。素晴らしいです。ですが、2つも学校に通ったら、営業のお仕事が疎かになったりしないですか。

上原:はい、もう大変でした(笑)。当時のチームメンバーにもずいぶん助けられました。

:日本の大企業が、そんなにサポーティブだとは思っていませんでした。SBテクノロジーは人の成長を支援する会社なのですね。

上原:制度としても能力開発休暇など挑戦を後押しする仕組みが整っていますが、何より上司やチームメンバーがそれぞれの挑戦を尊重したり、フォローしたりと挑戦する人を応援する社風だと思います。

ビジネスに必要不可欠な「伝えきる力」と「聴き切る力」

上原:黄さんは会社を3社経営されているとのことですが、ビジネスをするなかで一番大事にしていることは何ですか。

:やはりコミュニケーションです。人間は、伝えないと伝わらない。伝わったと思っても伝わっていなかったり、こちらの意図と違う伝わり方をしていたりすることが99.9%ぐらいあります。伝わったかな、どうやったら伝わるかな、としつこくやっていかないといけない。

上原:本当にその通りです。社内コミュニケーションでは、参加人数や時間の都合で私からメンバーに一方的な説明になってしまうケースも往々にしてありますが、なるべくアンケートをとるなどして、理解してもらえたのか、納得してもらえたのか、共感してもらえたのかなど、相手の受け取り方を確認するようにしています。

これは営業活動も同じで、商談後、お客様に「今日、どう思いましたか」と聞きます。お客様がいいと思ったかどうか、聞かずに帰ってきてしまう営業って、いたりしませんか。

:そういう営業は、「前向きに検討してもらっています」って言うんですよ。どういう理由で前向きなのか? 前向きなのに、なぜ今日契約してくれなかったのかを聞けていなかったら、営業してないのと同じだと私は思うんです。

好きな子に「付き合ってください!」と告白して、「好きだけど、ちょっと考えさせて」と言われたら、「なんで?」ってなるじゃないですか。でも営業では、なぜかそうならなくて、「あの子、僕と付き合ってくれそう」と脳天気に帰ってくる、っていうことですよ。営業の本質は恋愛と同じで、とことんその発言の真意を聞いていかないと、契約してくれなかった理由がわからない。

上原:そうですね、断られたにも関わらず、その理由を聞いてこない。それでは次に進めない。ビジネスパーソンとしては、『聴き切る』ということが大事です。

:お客様自身も、何に悩んでいるか言語化できていないときもある。それを会話のなかで「本当の理由はこれなんじゃないか」と見つけたときに、サービス開発の本当のヒントがあるし、マーケットインでサービスを提供できるようになる。

ですから私は社員を採用するときに、エクセルやパワポができるかより、顧客のインサイトに気が付けるかどうかを一番見ています。お客様をモニタリングして分析し、どういう人が運動できる人なのか、どういう人がそうでないのか、人を動かす隠れた心理に気づけるかです。そういう人が、環境がどうなろうと生き抜く力があるビジネスパーソンなのだと思います。

上原:問題の本質的な根源は何か。そして、いろんな人が考えたはずなのに、今、その解決案となるものがなぜ無いのか。この2つが合致すると、いい方向に行きますね。

エンジニアなくして事業の成功はなし

上原:ミラーフィットは、ITとリアルを融合させたビジネスだと理解しています。製品、サービスを開発するときに、エンジニアとのコミュニケーションで気を付けていることはありますか。

:私は経営・営業サイドの人間で、自分自身ではものづくりはできない。エンジニアとのコミュニケーションは、時に難しいと感じることがありますが、「ものを作ってね」ではなくて、「このビジョンを達成したい」という思いを伝えています。専門用語を使わずに、万人にわかりやすい言葉で伝えると、彼らは自分達のリソースを使って達成してくれる。そういうコミュニケーションがとれると、組織のなかでビジネス側とエンジニア側の良い関係が生まれますね。

上原:本当にそうですね。作ってほしい内容を伝える前に、本質的な目指すゴールを伝えているかどうかで、出来上がりが違ってきます。要はインサイトを伝えているかで、私もそこを意識しています。アプリケーションを依頼するとき、こういう使い方をしたい、こういう頻度でと、時間軸も入れて話すための工夫として、紙芝居のようにストーリーで伝える資料を作っています。

:なるほど。その紙芝居が共通の言語になるわけですね。

上原:はい、そこはマストかもしれないです。

:ビジネスサイドは、開発の何が大変なのかがわからないことがある。そこを理解しようとするときに、紙芝居だと会話がしやすくなるのですね。良いヒントをいただけました。

社員の成長と活躍がビジネス成長の原動力

:理想とする優秀な営業、優秀なエンジニアというイメージが上原さんにはあると思います。SBテクノロジーで数多くの採用をされているなかでは、その期待に一歩届かないということもあるのではないでしょうか。その場合、採用を見直して期待する能力のある人を採るのか、すでに採用した人達にヒントを与えて理想に近づくように育てるのか。比率的にはどうですか。

上原:どちらかと言うと、組織のなかで、その人と化学反応を起こしてくれる人との組み合わせを考えます。その人のパフォーマンスを阻害しているのが、上司・部下の関係や、仕事の量なのかもしれない。本人のスキルの問題ではなく、与えている職場の問題かもしれません。ですので、配置転換や人の組み合わせを変えるのは結構やっています。

:全メンバーの特性を細かく把握していないと難しい采配ですよね。1on1(1対1の面談)の機会は、かなり多く作っているのですか。

上原:ものすごくやっています。私のチームは140名ぐらいですが、昨年役員になったときは、ほぼ全員とやりました。

:どのくらいの頻度でやるのですか。

上原:直属の部下は今、30名ぐらいで、月1回です。あとは表情を見て歩いて、気になる人にも声をかけます。

:メンバーで、ちょっとモチベーションが低下しているな、という人にはどういう働きかけをされますか。

上原:本当にモチベーションが低下しているかわからないケースが多くて、まずランチに行きますね。アナログです(笑)。雑談して解決することもあるし、「最近どう?」とか、気持ちを聞いています。きっかけがないと言いにくいですから、きっかけを提供しますね。黄さんはどうされていますか。

:私も連れ出して話すことで解決することが多いですが、性格的に気持ちを言ってくれない人もいます。突然、「転職を考えているらしい」と周りから聞いたりするとか。そういう時のマネジメントの工夫は、どんなことがあるでしょうか。

上原:そういう場合は自分がやらないで、支援に回ります。その人と仲が良い人に「ちょっと気になるから助けてあげて」と頼んで、気持ちを聞いてあげる場を意図的に作ります。あと、そういう方に弟分や妹分を作ってあげると、自分が頑張らなければとモチベーションが上がって、いい循環になったりします。それも人と人の組み合わせです。

:なるほど、それは面白い発想ですね。組み合わせで、人が輝くことができるようになるんですね。

アントレプレナーは『やりきり力』。自分事でビジネスに挑む

:アントレプレナーという言葉があります。社内でも、独立しても、自分で事業を創れる人をそう呼ぶと思っているのですが、自分で事業を創る人間に絶対的に求められる要素は、どういったことがあると思われますか。

上原:どんな苦境があってもやりきる力、ですね。やめたらそこで終わりなので。どんな錘を持っても、走りきれる人だと思います。黄さんは、どう思われますか。

:アントレプレナーは、どんな苦難が降りかかっても、1点だけ前を見据えて這いつくばる人しかなれない。まさにやりきり力ですね。それと、目的を自分で見つけられることが大事ですね。何かビジネスを始めるには、エゴが存在する。

エゴと目的を言語化して、ブルドーザーのように何でも切り拓いて前に進む。二つが掛け合わされると、それがアントレプレナーで、むしろ社内にそういう人が欲しいです。会社全員がアントレプレナーだったら、すごく素晴らしいチームですね。

上原:全員が突進型だと、マネジメントは大変そうですけどね(笑)。SBテクノロジーでは、社内抜擢で社長になった人が3人います。手を上げたらやれる、支援してもらえる文化があります。

:世の中では、勤めるか、独立するかの二極化になりやすいですが、私は社内で社長みたいな存在になれる人はたくさんいると思います。想いとか、考え方一つではないでしょうか。

上原:私は会社のいろいろなところに首を突っ込みまくっていて(笑)。リデンの社長ですが、SBテクノロジーでも自分が社長のような感覚でやっていますね。

:会社のこと、ではなくて、自分事にしているということですね。

上原:そういう感覚で仕事をするのは、結構大事だなと思います。それはメンバーでも同じです。チャレンジできる環境なので、自分のやりたいことに手上げしてもらいたいですね。

:SBテクノロジーは、規模やリソースが整っていて、社内でさまざまな活躍の仕方があるんですね。

上原:黄さんが目指している経営者の姿は、どのようなものですか。

:ベンチャー経営者に求められるただ一つの条件は、夢を語れることですね。大きな夢を言語化して、ビジョンを伝える。大きな夢を語れば語るほど、それに追随したいと優秀な人が集まってくる。凡庸な夢に大事な人生を費やしたくないんです。だから「その夢の実現のために、あなたのスキルが絶対必要だ」と社員にきちんと伝えきることが大事だと思っています。

上原:全く同感です。黄さんのビジネスが、さらに大きく成長することを期待しています。今日は多方面にわたりお話させていただきまして、ありがとうございました。

:こちらこそとても勉強になりました。ありがとうございました。

【プロフィール紹介】

■黄皓(左)
ミラーフィット株式会社 代表取締役
1986年生まれ。10代で中国から来日、早稲田大学を卒業後、大手商社での勤務を経て、起業した実業家。4カ国語を操る。スマートミラーデバイスを活用したオンラインフィットネスサービスを提供する会社、サブスク型パーソナルジム・エステを運営する会社、上海を拠点に主にアパレル関係の貿易と物流の会社の3社の代表を務める。ファッションや車、アートにも造詣が深い。

■上原郁磨(右)
SBテクノロジー株式会社 執行役員 サービス統括 セールス&マーケティング本部 本部長 兼 CMO
1979年、長野県生まれ。 2019年に慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科修了 ソフトバンクグループを担う後継者発掘・育成塾ソフトバンクアカデミアに在籍。 SBテクノロジー(旧ソフトバンク・テクノロジー)にて、新規開拓営業、ソフトバンクグループ各社向け営業を経て、公共団体向け事業の立ち上げに従事。15年に子会社のアソラテックを創業し取締役に、16年にスマート農業サービス会社リデン株式会社を創業し、代表取締役に就任。19年にSDMの知見をもとに、「アグミル」を農業プラットフォームとしてサービス提供し農業における課題解決に従事。

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