掲載日:2023/04/05

『6G』とは、現在普及が進んでいる『5G』の次の世代にあたる移動通信システムです。ここでは、求められる5つの機能、2030年の世界予想、世界4カ国の取り組み等を解説します。未来に向けたビジネスプランの検討のためにも、ぜひ参考にしてください。
次世代の通信システム『6G』

『6G(シックスジー)』とは、無線技術による『第6世代移動通信システム』を指します。2020年にサービスをスタートした『5G』に続く、今後実現される予定の無線通信システムです。そのため、『5G』を超えるという意味で、『6G』を『Beyond 5G』と呼ぶこともあります。
『5G』は高速次世代通信システムと呼ばれています。2023年時点では、メディアで実証実験が紹介されるなど、『5G』の一般における実用化を進めている段階です。一方、IT業界ではすでに『6G』への関心が高まっています。
これまで、約10年のスパンで新しい通信規格の標準化が実施されてきました。『6G』の研究開発や学術的な議論は、2030年頃の商用化を目標におこなわれています。
『6G』に求められる機能は、さらなる通信速度の高速化や低遅延化などです。『6G』の実用化を目指し、アメリカ・日本・中国などの国々が研究開発に着手しています。
『6G』に求められる5つの機能

『6G』の実現はまだ先であるものの、すでに機能のイメージはまとめられています。『6G』の実現に向けて求められる機能は、大きく分けて以下のとおりです。
● 『5G』を超える超高速通信・大容量化
● 超カバレッジ拡張
● 超多接続・センシング
● 超低遅延
● 超低消費電力かつ低コスト化
それぞれの機能や特徴について、詳しくチェックしましょう。
1.『5G』を超える超高速通信
まず、『6G』に求められる機能は、超高速通信と大容量化です。『6G』では、『4G』と比べるとおよそ100倍、『5G』と比べると10倍ほどとなる、100Gbpsを超える通信速度が必要だとされています。
『bps』は『bit per second』の頭文字で『1秒間に何ビットのデータを送れるか』を示す、データ伝送速度の単位です。
扱うデータ量や規模は今後も拡大すると見込まれるため、データの通信速度が向上することは、とくに重要視されています。
2.超カバレッジ拡張
『6G』では、今までカバーできなかった遠隔地域や遠洋など、あらゆる場所で無線通信ができる『超カバレッジ拡張』の実現が求められています。『カバレッジ』とは、通信用の電波を届けられる範囲です。
超カバレッジ拡張の目標として、空・海・宇宙を通信可能な環境とすることなどが挙げられています。
3.超多接続・センシング
超多接続やセンシングも、『6G』での実現が求められている機能です。『5G』や『6G』では、電波そのものがセンサーになる無線センシングの技術が注目されています。
センシング情報の収集に必要なIoTデバイスや、ウェアラブルデバイスなどのさらなる普及へ対応するためにも、『6G』における同時接続可能数の増加が欠かせません。
『6G』での実現が求められているのは、1平方キロメートルあたり約1000万台の同時接続に耐えられる環境づくりです。同様の指標は、『4G』の時点で約10万台、『5G』の時点で100万台でした。
超多接続とセンシングによって、以下のような課題の解決や希望の実現が可能です。
● アクセス集中による伝送遅延の問題
● リアルタイム監視によるセキュリティの強化
● オンライン会議・授業がスムーズに
● 住んでいる場所を問わず、同じ情報や体験を得る
4.超低遅延
『6G』での実現が求められている機能として、超低遅延も重要です。『超低遅延』とは、通信をおこなう二者の間(E2E)における通信ラグを極限まで減らす技術を指します。
『6G』では、1ミリ秒未満まで通信ラグを抑え込もうとしています。完全自動運転や遠隔医療などをおこなう際には、通信障害は許されません。これらのシステムをさらに安定した状態で運用するためにも、超低遅延の実現が必要です。
5.超低消費電力かつ低コスト化
これまで挙げた機能に加え、『6G』では超低消費電力かつ低コスト化の実現も求められています。『6G』が実現する頃にはIoT社会がさらに高度化すると考えられるためです。
無線通信の基地局や通信端末のデバイス数が急激に増加すると予測できるため、消費電力の抑制と端末自体の低コスト化が必要です。このように、『6G』では環境への配慮と利用者の負担軽減を目指しています。

『6G』でできることとは?未来の世界
それでは、『6G』によって将来的にできる可能性のある事柄についてチェックしましょう。『6G』が普及した未来の世界では、以下のことが実現すると期待されています。
● メタバースと現実世界の一体化
● スマートフォンのワイヤレス充電
● 味覚や嗅覚、触覚を再現するデバイスの登場
● ロボットのさらなる普及
● 3D映像を介したコミュニケーション
『6G』ではできることが増えるため、今後の社会課題を解決する際の助けになるでしょう。早いうちから将来を見据えてプランを立てることで、新たなビジネスチャンスにつなげられる可能性もあります。『6G』が実装されたあとにできるであろうことを確認し、イメージを膨らませましょう。
1.メタバースと現実世界の一体化
『6G』の時代には、現実世界とほとんど変わらないほどのレベルにまでメタバースが進化すると考えられています。メタバースが高精細かつ現実のような3次元立体映像となることで、旅行や里帰り気分を簡単に味わえる可能性もあるでしょう。『6G』の実用化によってメタバースが現実世界と一体化すると、生産活動の拠点にもなりえます。
2.スマートフォンのワイヤレス充電
『6G』の時代には、スマートフォンのワイヤレス充電が可能になるかもしれません。2023年現在、携帯キャリアの基地局からワイヤレスで給電する仕組みが研究されています。
この仕組みが研究されているのは、『6G』が普及すると多くのデバイスで大容量の通信がおこなわれ、電力が不足する恐れがあるためです。ワイヤレス充電が実現できれば、バッテリーの残量を気にせず利用できるようになるでしょう。
3.味覚や嗅覚、触覚を再現するデバイスの登場
『6G』の時代には、ウェアラブルデバイスがさらに進化し、五感のうちの触覚や嗅覚、味覚も再現して通信できるデバイスが登場するのではないかと言われています。例えば、メタバース上で海にきたら、潮のにおいを感じられるなどです。においや食べものの味、ものに触れる感覚の再現によって、仮想世界がさらに現実的になっていくと考えられるでしょう。
4.ロボットのさらなる普及
『6G』が実用化された世界では、ロボットのさらなる普及と、活躍範囲の拡大が予想されます。『6G』では低遅延通信と高精度な位置情報の転送ができる上、通信可能範囲も広がるため、ロボットなどを利用した高精度の作業が実現できると言われています。
● 医療の提供
● 工場での修正、開発作業
● ドローンを使った広いエリアへの配送
このように、『6G』の実用化によってロボットの可能な作業が増えるだけではなく、人件費や交通費の削減などにもつなげられるでしょう。
5.3D映像を介したコミュニケーション
『6G』が実用化された世界では、3D映像を介したコミュニケーションも可能だと言われています。『6G』の時代には、さらなる大容量のデータ通信が可能であるためです。
2023年現在、離れた場所にいる人とのコミュニケーションはビデオ通話が主流です。『6G』が実用化された世界では、3Dスキャンした映像を映し出しながらの会話ができるようになると言われています。

『6G』の時代へ│世界4カ国の取り組み
『6G』の時代に向けてどのような動きがあるのか、日本・アメリカ・韓国・フィンランドの4カ国における取り組みを紹介します。
『6G』は各国で積極的に開発が進められているものの、導入するまでには以下の課題を解決しなければなりません。
● 高い周波数帯域を用いることによる人体への影響
● 衛星通信網との協調や互換性
これらの課題を検証しつつ、技術的に『6G』を実現できるように取り組む必要があります。
1.日本
総務省は『Beyond 5G推進戦略懇談会』を発足させて、政府の方針を議論しています。通信会社各社においても、『6G』の実現に向けた取り組みが盛んです。
『5G』の技術開発や商用化においては出遅れ感のあった日本ですが、『6G』で巻き返すために、さまざまな取り組みをしています。
2.アメリカ
アメリカも積極的に『6G』の開発をおこなっています。例えば、連邦通信委員会は『テラヘルツ波』を研究向けに開放すると決定しました。テラヘルツ波とは、将来『6G』での利用が考えられている周波数帯です。
大統領もSNSで『6G』導入の早期実現について言及しています。『6G』における主導権奪還を狙って、国として力を入れているようです。
3.韓国
韓国も、『6G』の開発をおこなっている国のひとつです。2019年に『6G研究センター』の設立を発表しました。2020年には『6Gオープンシンポジウム2020』で国内の各企業が『6G』での世界的な主導権を握る認識を固めるなど、開発への意欲が高まっています。
4.フィンランド
フィンランドでも『6G』の開発をおこなっています。2019年3月にフィンランドが『6G Wireless Summit』を開催した際、29カ国もの産業界と学術界が参加したことからも、関心が集まっているとわかるでしょう。

まとめ:『6G』通信の未来に向けたビジネスプランを検討しよう
2023年時点の国内では、『5G』通信が徐々に広まりつつある段階です。このような状態で、『6G』通信がもたらす未来をイメージするのは難しいかもしれません。
しかし、開発が順調に進んだ場合、2030年頃には『6G』通信の実用化が始まる見込みであるため、それほど遠くない未来の話だと言えるでしょう。
『6G』通信によって『メタバースと現実世界の一体化』『スマートフォンのワイヤレス充電』『五感を再現するデバイスの登場』などが実現する可能性もあります。
新たなビジネスチャンスを得るためにも『6G』の機能や各国の開発状況などを把握し、未来を見据えて長期的なビジネスプランを検討しましょう。