メインコンテンツへ

『SQL Server』とは?基本的な使い方と4つの特徴を解説

コラム

掲載日:2023/04/03 更新日:2024/05/30

日々大量のデータを取り扱う企業活動において、データベースはさまざまな業務を支える重要な土台です。データベース製品は数多くあるため、導入する際には自社と相性の良いものを見極めることが肝心です。

今回はマイクロソフト社が開発する『SQL Server』について、基本的な使い方や4つの特徴などを解説します。『SQL Server』の5つのエディションもご紹介するので、ぜひ実務に活かしてみてください。

『SQL Server』とは

『SQL Server』とは、正式名称をMicrosoft SQL Serverといい、マイクロソフト社が開発したデータベース(データ管理システム)のことを指します。MS SQLなどの呼称も『SQL Server』のことです。

ここではまず、『SQL Server』の基本的な内容や使用される言語、バージョンの確認方法について見ていきましょう。

『SQL Server』はリレーショナルデータベース管理システム

『SQL Server』は「リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)」の一種です。リレーショナルデータベースとは、表形式になった複数のデータを関連づけて扱えるようにしたデータベースのことであり、顧客管理などのさまざまな用途で広く活用されています。

『SQL Server』は、リレーショナルデータベース管理システムのなかで世界的に高い人気を誇っており、日本国内でも多くの方が使っています。チュートリアル(解説書)が充実していることなど、初心者にとっても使いやすいように設定されていて、ほかのデータベースと比較して直感的に操作できるのが特徴です。

また、マイクロソフト社が開発しているということもあり、Windows OSや同社の開発言語との相性が良い点も普及の要因と考えられます。

『SQL Server』で使う言語

『SQL Server』ではSQLというデータベース操作言語を使います。データベース操作言語とは、データベースの作成や登録済みのデータベースを操作するために必要な言語のことです。

SQLには、以下の3種類があります。

● データを定義づける言語(DDL)
● データを操作する言語(DML)
● データを制御する言語(DCL)

その上で、『SQL Server』ではSQLを独自に拡張した『Transact-SQL(T-SQL)』を利用するのが特徴です。T-SQLはマイクロソフト社とSybaseの共同開発によって生まれた言語であり、条件分岐や変数といった制御構造を記述することができます。

その他のSQLと比べてより高度な操作が行えるため、データベース操作でできることが拡張されるのがメリットです。

『SQL Server』のバージョンを確認する3つの方法

『SQL Server』サーバーのバージョンやエディションは定期的に更新されているため、すでに使われているものについては現状を確認することも大切です。具体的な方法としては、「SQLコマンド『@@VERSION』を使う」「Management Studioに接続する」「エラーログの最初の行を見て確認する」の3通りがあります。

SQLコマンドを使えばバージョンもエディションも簡単にチェックできるので、覚えておくと良いでしょう。なお、現行のバージョン『SQL Server 2022』は、今までのバージョンよりも『Microsoft Azure』との連携が強化されたことに特徴があります。

Microsoft Azureとの接続によって、以下の機能などを利用してデータにもとづいた深い分析や予測、ガバナンスが強化しやすくなります。

● 業務データの準リアルタイム分析が可能な『Azure Synapse Link for SQL』
● 統合データガバナンスサービス『Microsoft Purview』

『SQL Server』の5つのエディション

『SQL Server 2022』には、次の5つのエディションが設けられています。

● Enterprise……SQL Serverにおける最上位のエディション
● Standard……SQL Serverの標準的なエディション
● Web……Webサイトとの連携向けに使えるエディション
● Developer……開発・テスト用途に限定されているエディション(無償利用可)
● Express……小規模DB向けのエディション(無償利用可)

それぞれの特徴の違いについて解説します。

1.Enterprise

Enterpriseは、SQL Serverの最上位のエディションです。SQL Serverのすべての機能が搭載されている上に、データベースで使用できるCPUの最大数にも制限がありません。

そのため、主に大企業で扱われるような大規模システムの管理や開発に向いています。『SQL Server2022』にアップデートされたことでパフォーマンスが向上したことに加え、コスト効率も大幅に改善されています。

2.Standard

Standardは、SQL Serverの標準的なエディションのことです。Enterpriseと比べて利用できるメモリ量に上限があり、企業の部門単位や小規模アプリケーション開発向けに設計されています。

利用する規模に応じたライセンス発行が必要ですが、StandardもSQL Server(2022)になったことでコスト効率が向上しており、最小限のITリソースでデータベースの効果的な管理が行えます。

3.Web

Web(Azure上のIaaSでのWebエディションの選択も含む)は、Webサイトとの連携によって利用できるエディションです。使用範囲が限定されており、データの転送や機能分析など機能が使えない分、低コストで使えるのがメリットです。

4.Developer

Developerは、アプリケーションのテストやデータベースの学習に向いたエディションであり、無料で使用可能です。SQL Serverのすべての機能が使えるものの、使用用途は開発やテストに限定されていて、実稼働システムでの使用はできません。

5.Express Edition

Expressは誰でも使用できる無料版のSQL Serverです。小規模なシステムやアプリケーションの開発用のデータベースとして、基礎的な機能が備わっています。

モバイルアプリケーションやWebアプリケーションなどを想定しているエディションです。さらに高度なデータベースの機能を必要とするときは、簡単な手順でそのまま上位のエディションにアップグレードできます。

『SQL Server』を導入する4つのメリット

『SQL Server』には、大きく分けて以下の4つのメリットがあります。

● 直感的にデータベースを操作できる
● データの破損に強く安全性が高い
● WindowsOSとの相性が良い
● Transact-SQLを利用できる

各メリットのポイントを見ていきましょう。

1.直感的にデータベースを操作できる

一般的なデータベースでは、操作に『CUI』(Character User Interface)を利用します。CUI(Character User Interface)とはキーボードでコマンドを入力する画面のことです。

CUI(Character User Interface)を用いる一般のデータベースでは、操作にすべてコマンド入力が求められるとともに、画面も文字のみなので取り扱いのハードルは高いといえます。一方、『SQL Server』では『SSMS(SQL Server Management Studio)』を使うことにより、『GUI』(Graphical User Interface)を利用することができます。

GUI(Graphical User Interface)はマウスとキーボードを用いて操作するのが特徴であり、文字だけでなくさまざまなアイコンや背景で構成されているのが特徴です。そのため、データベースに不慣れなユーザーであっても、イメージした通りに操作しやすくなるのがメリットです。

2.データの破損に強く安全性が高い

『SQL Server』は、データの破損に強くセキュリティに優れているのが特徴です。バックアップ・復元・復旧の機能を備えていて、データの破損に強い仕様で作られています。

加えて、外部から不正にデータを操作される可能性を抑えられるので、安全性が高いのもメリットです。大量のデータを取り扱うデータベースだからこそ、安全性という観点から選んでいくことが大事です。

3.Windows OSとの相性が良い

前述のように、『SQL Server』はマイクロソフト社が開発しているため、WindowsOSや同社の開発言語との相性が優れているのもメリットです。Windows OSでの動作がスムーズであるため、特にWindows Serverを使用したサーバー構築に使われることが多いといえます。

新たなシステムを導入する際は、すでに使用しているツールなどとの間で不具合が生じないか心配になるものですが、『SQL Server』であればそうした懸念を抑えられるでしょう。

4.Transact-SQLを利用できる

独自に拡張された『Transact-SQL(T-SQL)』を利用できるのも、『SQL Server』の大きなメリットです。従来のSQLを基盤としながらも、制御フローやローカル変数といった仕様が追加されているので、煩雑な操作も効率的に実行することができます。

従来のSQLに慣れたユーザーからすれば、やや独自のクセを感じる可能性もありますが、適応すれば作業効率の改善が期待できます。開発言語における変数や条件分岐、繰り返しといった制御構造の記述、日付の計算や型変換などが行えるため、開発の幅は大きく広がるでしょう。

『SQL Server』の注意点

『SQL Server』の注意点としては、前述のように『Transact-SQL(T-SQL)』特有のクセがあげられます。ただし、これについてはあくまで元々その他のSQLを利用していたユーザーが気にすべきポイントであり、その場合でも慣れることで問題なく使用できます。

また、こちらも『SQL Server』に限定されるポイントではありませんが、定期的にバージョンが変更されるため、一定のサイクルで更新などの対応が必要になります。実際に『SQL Server』を導入する際は、移行期間をしっかりと設けて操作に慣れてもらい、定期的なメンテナンスが行える体制を整えてみましょう。

『SQL Server』の基本的な使い方

『SQL Server』は比較的簡単な手順で導入できるのもメリットとされています。ここでは、具体的な構築・接続方法や作成・実行方法を解説します。

構築・接続方法

まずは案内に沿って『SQL Server』をインストールします。続いて、構築のために『SSMS(SQL Server Management Studio)』のインストーラを起動して、SSMS(SQL Server Management Studio)のインストールを実行しましょう。

その後、スタートメニューからSSMS(SQL Server Management Studio)を起動させ、サーバーへの接続画面でサーバー名を指定して『接続』をクリックします。その後、接続後のSSMS(SQL Server Management Studio)の画面が表示されます。

作成・実行方法

『SQL Server』は、データベース・テーブル・各データの3階層で構築されています。そのため、手順としてはデータベースの作成 → テーブルの作成 → 実行という流れを踏むことになります。

まずは、『SSMS(SQL Server Management Studio)』を起動し、接続画面に表示されるサーバー名を指定してデータベースの作成を行いましょう。データベースで右クリックをし、新しいデータベースをクリックしてデータベースを追加し、用途に応じてデータベース名などの設定をして保存します。

データベースが作成できたら、テーブルの作成に入りましょう。データベースの下の階層にあるテーブルを右クリックし、テーブルを選択します。

選択するとテーブル作成画面が表示されるので、こちらも用途に合わせて設定・保存を済ませます。これでデータベースの準備が完了しました。

次に、SQLを実行するにはテーブルを選択し、SSMS(SQL Server Management Studio)の上方にある新しいクエリを選択します。するとSQL文を入力できる画面が出てくるので、入力して実行をクリックするとSQLを実行できます。

なお、SSMS(SQL Server Management Studio)では、SELECT文・INSERT文・UPDATE文・DELETE文の型を自動で作成することも可能です。テーブル名からテーブルをスクリプト化というタブを選択すると、検索・データ登録・データ更新・データ削除が表れます。

それぞれSELECT文・INSERT文・UPDATE文・DELETE文の順に対応しています。

関連記事:『RDB』(リレーショナルデータベース)とは?NoSQLとの違いも解説

データベースエンジニアの将来性

今回ご紹介した『SQL Server』をはじめ、データベースの設計・構築・運用・管理などを行う専門職をデータベースエンジニアといいます。データベースエンジニアは金融や小売、エンターテインメントといった幅広い業界で必要とされる職種であり、IT技術の普及によって今後もますます活躍の機会を広げていくと考えられています。

顧客の個人情報や商品・サービスの購入履歴、財務データなど業種を問わずに膨大なデータを日々取り扱う企業において、データエンジニアの存在は欠かせません。ビッグデータなどの活用が意識されるなか、企業におけるデータの有用性は年々高まっており、今後もデータベースの専門知識を持つエンジニアの存在価値は上昇していくといえるでしょう。

そのため、『SQL Server』などのデータベースに関する基本的な知識やスキルを身につけておくことで、仕事の幅を広げられる可能性があります。ネットワーク関連の求人数は多いものの、まだまだ必要な人材が不足している状況にあるため、将来のキャリアパスの一環として捉えていくことも1つの選択肢です。

また、『SQL Server』の基本を習得しておけば、データベースエンジニア以外のキャリアも広がっていきます。Webエンジニアやインフラエンジニアとしてキャリアを積んでいきたいと考えている方にも『SQL Server』を学ぶことは大きなメリットがあるので、前向きにスキルを高めていきましょう

まとめ:『SQL Server』をマスターし活躍の場を広げよう

『SQL Server』は、『マイクロソフト(Microsoft)社』が開発したリレーショナルデータベース管理システムのことをいいます。直感的にデータベースを操作できる点やデータの破損に強く安全性が高い点、Windows OSとの相性がよい点、Transact-SQLを利用できる点などが特徴として挙げられます。

データベースの管理は業種を問わず、さまざまな企業で重視されるものであるため、『SQL Server』の基礎をしっかりと身につけておくことで、将来的なキャリアアップにもつながっていくでしょう。Transact-SQLは習得にやや時間がかかるSQLであるものの、ある程度使い慣れていけば問題なく使用できるはずです。

また、『SQL Server』の扱い方を理解することで、ほかのデータベース製品についての理解も深まります。ぜひ『SQL Server』をマスターして、活躍の場を広げてみましょう。

関連記事:『NoSQL』とは?利用するメリットや採用すべきポイント、活用事例をわかりやすく解説

募集職種一覧