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次世代通信技術『6G』ができること│5Gとの違いを解説

コラム

掲載日:2023/03/22 更新日:2023/11/24

『6G』とは、第6世代移動通信システムを略した言葉であり、5Gに次ぐ技術として注目されています。この記事では、『6G』が求められる背景や目指す社会像、技術が発展していった流れを紹介します。

また、『6G』の特徴やその実現を支える技術、2030年以降の展望などもあわせて解説します。次世代の通信技術である『6G』の基本的なポイントや5Gとの違いについて見ていきましょう。

5Gに次ぐ通信技術『6G』とは?

『6G』とは、第6世代移動通信システム(6th Generation Mobile Communication System)のことです。現在、商用利用が進められている5Gの次を担う無線通信システムであり、『Beyond5G』とも呼ばれています。

日本においても総務省が研究開発を推進しており、革新的な『6G』の技術をめぐり、世界中で主導権争いが激化している状況です。2030年ごろの実用化を目指しており、国内では株式会社NTTドコモやNICT(情報通信研究機構)などが研究開発を進めています。

総務省内の有識者会議では、2025年大阪・関西万博の開催に合わせて、『6G』によって実現できる未来の社会像を世界に示そうという狙いが話されています。

『6G』通信が求められる背景

『6G』が求められる背景として、暮らしや経済活動を維持するために、ICTインフラを駆使した環境を整備する必要が出てきたからだといえます。特に、新型コロナウイルスの感染拡大によって、ICTインフラの重要性が強く認識されるようになりました。

新たな感染症によるパンデミックや自然災害などが発生し、対面でのビジネスが困難な状況になったとき、従来のやり方では事業の継続そのものが難しくなる場面があります。そのため、テレワークといったリモートで業務を行う『ニューノーマル』への移行が急がれており、デジタルへの依存度は高くなっているといえるでしょう。

日本をはじめ、世界各国で将来を見据えたデジタルの利活用への取り組みが行われています。

Beyond 5G推進戦略が目指す3つの社会像

『Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-』は、ポストコロナ時代における日本の成長戦略を見据えた通信インフラの対応策を総務省が取りまとめたものをいいます。2030年代に期待される社会の具体的なイメージとして、次の点が掲げられています。

1 「誰もが活躍できる社会(Inclusive)」
2 「持続的に成長する社会(Sustainable)」
3 「安心して活動できる社会(Dependable)」

それぞれの点について、さらに詳しく解説します。

①「誰もが活躍できる社会(Inclusive)」

「誰もが活躍できる社会(Inclusive)」とは、都市部と地方、国境といった地理的な障壁、年齢や障がいといったさまざまな差異を取り除くことによって、誰もが活躍できる社会をいいます。たとえば、自宅にいながらアバターやロボットを通じてリアルな体験ができる『超テレプレゼンス技術』や、ウェアラブル端末によってサイバー空間からのリアルタイムな支援が受けられる『超サイバネティクス技術』などがこの社会の実現のために必要だとされています。

②「持続的に成長する社会(Sustainable)」

「持続的に成長する社会(Sustainable)」は、現実世界を再現したサイバー空間においてシミュレーションや最適化を行い、そのフィードバックを通じてロスのない、便利で持続的な社会を指します。たとえば、信号待ちや渋滞の発生しない交通システムを実現する『超相互制御型ネットワーク技術』や、AIによる高精度な需要予測とリアルタイムなマッチングによって食品ロスなどをゼロにしていく『超リアルタイム最適化技術』といったものが実現のために必要です。

③「安心して活動できる社会(Dependable)」

「安心して活動できる社会(Dependable)」は、社会の基盤となる通信網の安全性・安定性が確保されることによって、安心して活動できる社会をいいます。たとえば、AIによる自動検知・自動防御・自動修復などによってセキュリティやプライバシーが保護される『超自律型セキュリティ技術』が社会の実現のために必要だといわれています。

また、災害時でも通信が途絶えない『超フェイルセーフ・ネットワーク技術』などの確立も求められているといえるでしょう。

初代1Gから現代の5Gまでの技術の発展を紹介

1979年に誕生した『1G』ですが、その後の移動通信システムの進化によってさらにできることが大幅に増えていきました。初代1Gから現代に続く5Gまでの流れを見ていきましょう。

1979年『1G』が誕生

初代の『1G』が誕生したのは、NTTグループの前身である日本電信電話公社が民間用自動車電話サービスを開始した1979年です。当初の電話装置は約7kgあったものの、1Gが誕生したことによって、移動しながらの通話が可能となりました。

初めは主に自動車に設置しての利用でした。その後、肩掛けが可能なショルダーホンへと進化していきます。1993年から始まった『2G』では、アナログ方式からデジタル方式へと通信方式が進化しました。これにより、携帯電話によるメールやインターネットの利用ができるようになります。

通信方式が進化したことで、装置の小型化が可能になり、本格的に携帯電話の利用が開始されました。PHS(パーソナル・ハンディホン)などの携帯電話サービスが登場したほか、料金や通話品質の改善につながりました。

2001年『3G』誕生による時代の変化

2001年から始まった『3G』により、通信の高速化や大容量通信、海外利用が可能となりました。3Gが登場したことで、写真を添付したメールや音楽、ゲームなどのサービスが増加します。

またこのころ、本格的なマルチメディアやカメラ付きの携帯電話が誕生しました。世界中どこでも同じ端末を使えるようにするために、国際規格である『IMT-2000』が作られたのも3Gのころです。

2010年からの『4G』では、データ通信速度がさらに上がって、高精細な動画やゲームなど、より大容量のコンテンツがスムーズに楽しめるようになりました。4Gにより通信の高速大容量化がさらに進み、Appleの『iPhone』などのスマートフォンが普及します。

現在進行中『5G』の世界

2020年からは『5G』が始まり、さらなる高速大容量・低遅延通信・多数同時接続が可能になっていきます。4Gでは5分程度かかっていた動画のダウンロードが、5Gでは約3秒で完了するなど、よりスムーズな通信が可能です。また、端末やセンサーをインターネットに同時接続できる数が飛躍的に増えました。

5Gの商業化がスタートしたばかりのころには、すでに『6G』の実現のために必要な通信技術に関する学術的な議論が行われていました。そして現在では、『6G』に関する開発競争が激化している状況です。

『6G』通信の4つの特徴とできること

『6G』通信の具体的な特徴と5Gとの違いは、大きく分けると以下のとおりです。

・100Gbpsを超える通信速度かつ超低遅延
・5Gを超える超高信頼通信・超多接続&センシング
・あらゆる場所に電波を届ける超カバレッジ拡張
・持続可能な社会実現に向けた低コスト化

それぞれ詳しくチェックしていきましょう。

100Gbpsを超える通信速度かつ超低遅延

『6G』では、最大で100Gbpsを超える通信速度かつ超低遅延となることが特徴のひとつです。この通信速度は、4Gの約100倍、5Gの約10倍の速度であり、1秒間で100,000,000,000ビットものデータが伝送可能です。

『6G』で送信したデータが受信端末に届くまでのタイムラグは、5Gの10分の1という超低遅延です。インターネットは一般的に、151Mbps以上の速度であればかなり速いといえるので、4G・5G・『6G』のいずれも、高画質ストリーミングの再生などには特に支障がないでしょう。

しかし、通信速度が速ければ、それだけスムーズな利用が行えるので利便性は高まるといえます。

『5G』を超える超高信頼通信・超多接続&センシング

5Gと比べて、さらに超高信頼通信・超多接続&センシングが可能となることも、『6G』の特徴です。超高信頼通信とは、通信障害が発生しづらいという『信頼性』のことを指します。

『6G』では5Gよりも1桁改善され、信頼度99.99999%が目標値です。また、インターネットに同時接続できるセンサーや機器などの数が5Gの約10倍となる超多接続&センシングを目指しています。

あらゆる場所に電波を届ける超カバレッジ拡張

さまざまな場所に電波を届けることができ、5G以上の『超カバレッジ拡張』が可能なことも、『6G』の特徴のひとつです。超カバレッジ拡張とは、電波が届かない場所をなくすことを指します。

海上や空、宇宙空間に至るまでさまざまな範囲に電波を届けることで、通信可能エリアにできます。地球上でも宇宙空間でも、通信を使えるようにするものです。

持続可能な社会実現に向けた低コスト化

『6G』は、高いスペックを実現させつつも、超低消費電力かつ低コスト化を実現するといわれています。地球環境に配慮した持続可能な社会の実現が必要だという国際的な要請があり、ビジネスのためにも重要なポイントであるため、低コスト化が求められているのです。

『6G』が実現した社会では、通信設備やIoT機器が劇的に増加すると見込まれています。無線の信号を用いた給電技術の発展により、端末への充電が不要となるなど、バッテリー技術の進化が期待されています。

『6G』通信を実現する代表的な2つの技術

『6G』通信を実現させるためにはどのような技術が必要になるのか、関連する技術についても確認しておきましょう。『6G』通信に関連する代表的な技術は、『HAPS』と『衛星ブロードバンド』です。

HAPSとは、無人飛行機などを通して提供できる通信サービスのことです。衛星ブロードバンドとは、インターネット接続に人工衛星を利用できるサービスのことを指します。

それぞれの技術について、さらに詳しく解説します。

HAPS

『HAPS』とは、宇宙との境界面である成層圏から、無人飛行機などを通して提供できる通信サービスの仕組みのことです。HAPS基地局のエリアは直径200キロメートルだといわれており、非常に広いエリアをカバーできます。

非常に広範囲なエリアをカバーできるHAPSの技術が注目を集めているのは、『6G』では海や空なども通信エリアとなることが理由としてあげられます。また、仮に災害が発生した場合でも、被災地の上空から通信サービスを提供できるという強みがあります。

衛星ブロードバンド

インターネット接続に人工衛星を利用できるサービスである『衛星ブロードバンド』も、『6G』関連の技術として注目されています。以前から抱えている衛星通信の課題を改善し、近年は衛星を大量に打ち上げてさらなる通信の高速化を目指しています。

また、衛星ブロードバンドの技術を利用することで、今後大幅に通信エリアが拡大されると考えられるでしょう。

『6G』通信が目指す2030年以降の世界観

『6G』通信が目指す2030年の世界観には、以下のようなこれまでの常識を超える技術が含まれます。

・社会課題解決と発展
・空や海、宇宙まで通信エリアを拡大
・場所や時間を超えた超高速通信

5Gにおいても、さまざまな社会課題の解決やニーズへの対応につながっている技術です。『6G』のサービスが開始される予定の2030年ごろには、世界はさらなる発展を見せていると考えられます。

それでは、『6G』通信が目指す2030年以降の世界観についてもチェックしていきましょう。

社会課題解決と発展

テレワークや遠隔操作、遠隔医療などの分野の発展は、2020年代中に提供されると予想されています。2030年代には、『6G』通信によってさらなる社会課題解決と発展が期待できます。

具体的な社会課題としては、地方創生や少子高齢化、労働力不足などがあげられます。通信環境の変革によって、以下のようなシーンで人間がいなくても産業・サービスを維持・継続することが可能になると考えられます。

・IoTを活用した無人工場
・AIが車両を制御する完全自動運転

『6G』が提供される2030年代には、さまざまな社会課題の解決と、さらなる発展が期待できるでしょう。

空や海、宇宙まで通信エリアを拡大

『6G』の提供によって、2030年代には地上だけではなく空や海中、宇宙も通信エリアとなると予想されています。無人工場や無人建設現場、センサーネットワークなどの実現により、人間がいない場所での通信ニーズが拡大することが見込まれています。

そのため、地上や空、海のどの場所においても通信できるようにされると考えられているのです。ユーザーは、通信の設定や通信サービスエリアを意識しなくても、ありとあらゆる場所で当たり前に通信サービスが利用できるようになるでしょう。

場所や時間を超えた超高速通信

2030年代には、場所や時間を超えた超高速・低遅延通信によって、リアルタイムで情報をやり取りできる世界になると期待されています。例えば、以下のようなことが実現できるでしょう。

・バーチャルの世界へ実世界と同じ感覚でアクセス可能になる
・遠く離れた場所にある自分のホログラムで、現実と同じようにコミュニケーションできる

人と人、人とモノとの通信が実世界と同じような感覚でできるようになり、スポーツ観戦などでさらなるエンターテイメントサービスが受けられると考えられます。

まとめ:『6G』時代を見据えたキャリアプランを形成しよう

『6G』が提供されはじめる2030年ごろには、世の中にさまざまな変化が見込まれています。通信環境の変革により、IoTを活用した無人工場やAIが車両を制御する完全自動運転など、人間が不在でも産業・サービスに対応できるシーンが増加することが考えられるでしょう。

2030年は、そう遠い未来ではありません。そのため、今から『6G』時代を見据えて、キャリアプランを形成していくことが重要です。

新たに発生する仕事がある一方で、逆になくなってしまうことが見込まれている仕事もあります。『6G』時代に起こる変化を正しく把握したうえで、将来を見据えたキャリアプランを早めに検討しておくことが大事だといえます。

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