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Rust(プログラミング言語)とは?特徴と活用ステップを解説

コラム

掲載日:2023/02/28

Rustとは、注目度の高いプログラミング言語のひとつです。今回は、歴史や将来性を踏まえた概要と3つの特徴、活用ステップなどをご紹介します。開発が向いているケースや活用事例も解説しているため、ぜひ参考にしてください。

Rustとは

Rustとは、オープンソースのプログラミング言語の一種です。2006年に開発し始め、2015年からバージョン1のリリースを開始した、プログラミング言語のなかでも新しいものです。

Rustには、高い安全性やパフォーマンスを発揮できるという特徴があります。そのようなRustについて、歴史や将来性を確認していきましょう。

Rustの歴史

Rustは、もともとMozilla社に所属するGraydon Hoare氏が、個人のプロジェクトとして開発を始めたプログラミング言語です。その後、2009年からはMozilla社自体が支援する公式プロジェクトになりました。なお、Mozilla社は『Firefox』の提供で知られる会社です。

仕様変更を繰り返しつつ、2015年からはRustのバージョン1をリリースしました。

Rustの将来性

2019年11月からは、Microsoftのコアプラットフォーム『Windows』の開発で利用されています。また、2021年4月にはGoogleでも『Android OS』開発への採用が発表されるなど、さまざまな企業で積極的に採用されています。

従来、OSのコア部分を開発する際に使うのは、C言語やC++言語が基本でした。しかしRustの開発により、Microsoft社では「C言語やC++言語に代わる、最有力のプログラミング言語だ」と評価しています。

また、エンジニアが学びたい言語としてもよく挙げられています。Rustの将来性は高いといえるでしょう。

Rustの3つの特徴

Rustの大きな特徴は、『安全性の高さ』『処理速度の速さ』『並行処理ができること』です。また、『自動テスト機能』や『プロジェクトを階層で分けて管理する仕組みがあること』などの特徴もあります。それぞれの特徴を詳しくチェックしましょう。

1.安全性

Rustは、独自の言語設計によって高いメモリ安全性を確保しています。メモリ安全性とは、言語によってメモリ利用時の安全性が保証されていることです。Microsoft社やGoogle社は、とくにこの安全性の高さを評価しています。

C言語やC++言語は設計が古く、当時のCPUやメモリの能力をもとに、効率性を優先して作られました。OSの抱えるセキュリティ上の脆弱性は、その多くがメモリ利用におけるバグに起因します。C言語やC++言語を使い続ける限り、言語の特性上脆弱性の克服は困難です。

またC言語やC++言語では、メモリの多重解放を起こしてセキュリティに問題が生じたり、不正なデータアクセスによる深刻なセキュリティバグが起きたりします。しかし、Rustならば『所有権』というメモリ管理によって、多重解放が起こりません。また、コンパイル時に不正なデータアクセスを防止できる仕組みがあり、実行時のコストを増やさずにバグが排除できます。

2.処理速度

処理速度の速さもRustの特徴です。Rustは高速処理ができる仕様として開発されました。

Rustはネイティブコンパイラ言語であり、コンパクトさと高速性を実現しています。さらに先述のとおり、不正なデータアクセスを防止してバグを排除する仕組みを、実行時のコストを増やさずに実行できます。

また、メモリなどのリソースの細やかな取り回しも、Rustならば可能です。

3.並行性

並行処理もRustの大きな特徴のひとつです。マルチスレッドに対応していて、同時に複数のプログラムを並行処理できます。

C言語やC++言語の弱点には、並列性の低さもあります。これらの言語で正しく並行処理を機能させるには、データの競合の問題を回避するプログラミングが必要です。さらに、そのために変数をロックしても、ロック解除待ちによるデッドロックの問題が発生するため、問題の解消には外部ライブラリに頼らなければなりません。

Rustはマルチスレッドの機能が標準ライブラリにあり、スレッドセーフが保証されています。また、変数の値の借用にあたって厳密なルールがあるため、未然にデータの競合を防止可能です。

Rustの活用ステップ

Rustを活用するためのステップは、以下のとおりです。

● Rustをインストール
● プログラム作成
● コンパイル
● プログラム実行

それぞれのステップをチェックしていきましょう。なお、Rustの使い方は、『Windows 10』を利用して『Hello, world!』を作る場合を例に挙げて解説しています。

1.Rustをインストール

まずは公式サイトのインストール用のページにアクセスし、Rustのコンパイラをインストールします。インストーラをダウンロードして起動し、画面の指示に従って進めていき、インストールを完了させましょう。

2.プログラム作成

続いて、プログラムを作成してみましょう。メモ帳で『hello_world.rs』を作ります。サンプルコードは、以下のとおりです。

_____________
fn main() {
  println!("Hello, world!");
}
_____________

なお、Rustで使う拡張子は、『rs』が慣例です。

3.コンパイル

その後、コマンドプロンプトを起動して、『hello_world.rs』を作成したDドライブのフォルダなどに移動し、hello_world.rsをコンパイルします。すると、フォルダ上に『hello_world.exe』が作成されます。

4.プログラム実行

『hello_world.exe』が作成できたら、プログラム実行を試してみましょう。この場合、プログラム名のダブルクリックでは、すぐにウィンドウが閉じてしまって表示できません。そのため、コマンドプロンプトから、コンパイルした画面の続きに『hello_world.exe』と入力しEnterキーを押して、『Hello, world!』と表示されるかどうかを確認しましょう。

Rustでの開発が向いているケース

とくにRustでの開発が向いているのは、『大規模なシステム開発』と『アプリケーションの開発』などのケースです。それぞれ、Rustでの開発が向いている理由を確認しましょう。

大規模なシステム開発

Rustは、大規模なシステム開発に向いています。先述のとおり、Rustは未然にデータの競合を防止できる仕組みがあることや、高いメモリ安全性を確保していることなどの特徴があるプログラミング言語です。

またRustを使えば、さまざまなプログラミング言語で課題となっている『null』の問題も解決できます。Rustでは基本的にnullが存在せず、値がnullかどうかをチェックしてからアクセスするため、予期しないnullへのアクセスを防止可能です。このような特徴によって、Rustはほかのプログラミング言語に対し、安全性の面で大きな優位性があります。

高い安全性の確保により、大規模なシステム開発で大勢のエンジニアがコーディングしても、できあがったプログラムで発生するバグを削減できます。メモリ管理などは従来エンジニアの責任としていたものの、Rustならばすべてプログラム側で監視できる仕組みがあるため、スムーズでより安全なシステムが構築可能です。

アプリケーション開発

アプリケーション開発もRustが適しています。アプリケーション開発では、メッセージアプリケーションやクラウドストレージサービス、ブラウザなど、大規模な接続に対する高速な処理が求められます。また、保持するデータへの堅牢性やシステム運用の際の安全性も必要です。

そのため、高い安全性の確保と高速処理ができる、Rustでの開発が適しているといえます。

Rustの活用事例

Rustを実際に活用している事例は、『Firefox』『Dropbox』『Cookpad』などです。また、『Google』が開発するAndroidのBluetoothモジュールや、『Chrome OS』のcrosvmコンポーネントにも活用されるなど、Rustはさまざまな活用がされているプログラミング言語です。それでは、『Firefox』『Dropbox』『Cookpad』の3つの事例について、最後にチェックしていきましょう。

『Firefox』

Rustは、『Firefox』で実際に活用されています。先述したとおり、そもそもRustは『Firefox』を提供しているMozilla社が支援する公式プロジェクトとして、プログラミング言語の開発を進めてきたという歴史があります。

2013年からMozilla社で開発を支援してきた、レンダリングエンジンである『Servo』の開発言語として採用されています。これにより、『Servo』を開発しつつRustを進化させるといったように、同時並行的に開発されていきました。

現在は、『Firefox Quantum』の一部コンポーネントが、従来のレンダリングエンジンである『Gecko』から、Rustで開発された『Servo』へと置き換えられています。

『Dropbox』

『Dropbox』でも、Rustの活用が進められています。『Dropbox』では、中核となるファイルストレージシステムの複数のコンポーネントをRustで書き、広大なネットワークを構築し直しました。このプロジェクトは、データセンターの効率性を高めることを目的としたものです。

現在、Rustを活用して再構築したネットワークは、すべてのDropboxストレージで使われるようになっています。

『Cookpad』

『Cookpad』でもRustが活用されています。『Cookpad』では、マイクロサービス化を進めたことで、プッシュ通知を配信するアプリケーションが複雑になってしまいました。これにより、プッシュ通知のロジックが散らばって、プッシュ通知配信基盤の改善が求められるようになったのです。

その後Rustを活用して改善し、より安全にマルチコアのパワーを活かせるソフトウェア開発ができました。

まとめ:Rustを活用してプログラムを作ってみよう!

Rustは、独自の言語設計によって高いメモリ安全性を確保しているプログラミング言語です。Microsoft社で、「C言語やC++言語に代わる、最有力のプログラミング言語だ」と評価されるなど、注目が集まっています。実際に、さまざまな大手企業のサービスでも導入された実例があります。

Rustは、エンジニアが学びたい言語としても人気です。詳しく学び、取り入れられるようにすると良いでしょう。

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