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『スクラムマスター』とは? おもな役割と必要とされるスキル、資格について解説

コラム

掲載日:2023/02/07
更新日:2024/04/17

『スクラムマスター』とは、スクラム開発における職種の一つです。プロジェクトを円滑に進めていくために欠かせない役割であり、チームメンバーの管理や調整などマネジメント部分を担います。この記事では、『スクラムマスター』のおもな役割や必要とされるスキル、資格などを解説します。

スクラムマスターとは?

『スクラムマスター』とは、スクラム開発のリーダー役・調整役を担う立場の人を指します。チームメンバーがスクラム開発の基本を理解して、実践できるようにサポートするのがおもな役割です。

ここではまず、スクラムマスターという役割を振り返ります。ただそのためには、現在主流となっているアジャイル開発の手法のひとつ、スクラム開発の概要を正しく理解することが大切です。まずはその点から押さえておきましょう。

スクラム開発はアジャイル開発の一種

スクラム開発はウォーターフォール開発のように、上流・下流工程といった区別がないのが特徴です。アジャイル開発の一種であり、さまざまな作業を並行して進められるので、クライアントの要望のうち優先度の高いものから開発を効率良く行っていける手法だといえます。

スクラム開発では、数人ほどの少人数で構成されたチーム単位で、1~4週間ほどの短い期間で計画を立てます。メンバー同士の連携が重視される様子からラグビーのスクラムになぞらえており、プロダクトオーナーやスクラムマスターなどと連携しながら、開発を進めていく点を押さえておきましょう。

プロジェクトはメンバー同士が、お互いの状況や進捗を確かめ合いながら進行していく形となります。

『スクラムマスター』の役割

『スクラムマスター』の基本的な役割として、以下のものが挙げられます。

・技術的な計画サポート
・開発者の進捗確認
・デモの開催
・チーム内外の問題の解決
・プロダクトバックログの改善 など

メンバー間の連携や調整を行うのが『スクラムマスター』の基本的な役割となります。『スクラムマスター』はあくまで開発全体の調整役を担うものであり、チームに直接指示を出す立場ではありません。

調整の範囲はチーム内に留まらず、プロダクトオーナーや外部メンバーからの不必要な開発や要望の修正にまで及びます。さらに、開発を円滑に進めるためのチーム力強化も仕事です。

必要に応じて、スキルアップのための勉強会への参加をチームメンバーに勧め、問題が起こりそうなポイントを先回りして解決するよう求めることも、役割の一つだといえます。

1.技術的な計画のサポート

『スクラムマスター』は、プロジェクトマネージャーが作成した技術的な計画(スプリントバックログ)が滞りなく進行するように、チームメンバーのサポートを行っていきます。あくまで計画のサポートであり、『スクラムマスター』自身が直接指示を行うわけではありません。

2.開発者の進捗確認

個々の開発者が計画に沿って作業を行えているか、日々の進捗状況を確認していくことが、『スクラムマスター』には求められます。また、必要に応じてスプリントバックログの再検討をサポートすることもあります。

3.デモの開催

開発チームの全員が参加するデモ(スプリントデビュー)において、日時の調整や内容を検討する役割を担います。日頃からメンバーとのコミュニケーションを円滑にしておくことで、スムーズな調整が行えるでしょう。

4.チーム内外の問題の解決

開発を進めていく段階では、トラブルに対処するため作業スピードが遅くなる、情報が共有されておらず重複した作業を行うなどの問題が起こることがあります。『スクラムマスター』はあらゆる問題に対応し、開発者が作業を行いやすい環境を整える役割を担います。そのため、業務は広範囲にわたるといえるでしょう。

5.プロダクトバックログの改善

日常的にチームメンバーに対してヒアリングを行い、プロダクトバックログの要件を更新する役割を担います。プロジェクトオーナーや開発チームと連携をしながら、改善を加えていくことになります。

『スクラムマスター』に必要とされるスキル

『スクラムマスター』には、高いコミュニケーション能力や豊富な職務経験が求められます。ここでは、『スクラムマスター』の認定資格が注目される理由も含めて解説します。

高いコミュニケーション能力

『スクラムマスター』は、スクラム開発におけるプロジェクトの進行に影響を与える役割であるため、高いコミュニケーション能力が求められているといえるでしょう。社内のチームだけでなく、関係するステークホルダーをつなぐ調整役としての役割も担うため、日頃から円滑なコミュニケーションを行える人が向いています。

柔軟な思考を持ち、多様な意見・価値観を受け入れられると、プロジェクトの進行や調整をスムーズに行えるでしょう。

豊富な職務経験

『スクラムマスター』はプロジェクト全体を見渡しながら、多くの問題に対処したり、プロジェクトの進行そのものを見直したりする必要があります。『スクラムマスター』として能力を発揮するには、開発に必要な技術を含め、専門的な知識と豊富な経験が求められるでしょう。

さまざまな経験を重ねていれば、問題が起こったときにも原因を特定しやすく、適切な対応を行えるはずです。

『スクラムマスター』の資格

『スクラムマスター』になるために、必ずしも資格は必要とされていません。しかし、実践的に活用できる資格を取得しておくことで、一定のスキルがあることを証明できるでしょう。

また、スクラム開発における基礎的な知識を体系的に理解することにつながるため、資格の取得は意義のあることだといえます。

『スクラムマスター』の認定資格が注目される理由

スクラム開発を導入する企業は増えてきましたが、一方で『スクラムマスター』となるための教育体制が完備されているかどうかは、企業によってバラつきがあるといえるでしょう。適切な教育の機会を得られなければ、思うように必要な人材の確保は難しくなるケースもあります。

あらかじめ開発のリスクを回避するために、スクラム開発や『スクラムマスター』について正しく体系的に学ぶ機会を設けることが求められるといえます。『スクラムマスター』の資格で重視されているものとして、次の点が挙げられます。

・スクラムにおける正しいフレームワークや原理原則を理解できる。
・不足している知識やスキルを補い、全体を網羅的に学べる。
・自信をもって『スクラムマスター』の役割を実践できる。

資格を取得するためには、本で読んだ知識だけでなく、実践に活用できる経験が求められます。実務を想定した資格であるため、多くの場面で役立つものだといえるでしょう。

『スクラムマスター』の代表的な3つの認定資格

これから『スクラムマスター』資格を取得するのなら、代表的な次の3つの資格を検討することをおすすめします。ただし、それぞれ内容が異なるので、自分の現状や目的に合ったものを選ぶことが大切です。

1.CertifiedScrumMaster®(CSM®)

CertifiedScrumMaster®(CSM®)は「認定『スクラムマスター』」と呼ばれる、さまざまな『スクラムマスター』資格の中で最もメジャーな資格です。『スクラムマスター』関連資格のなかでは難易度は低いとされ、初心者でも事前研修の内容がしっかり理解できていれば合格できるといわれています。

試験概要
CertifiedScrumMaster®(CSM®)では、事前研修でテキスト学習と演習に取り組みます。研修を途中で辞退する、またはトレーナーから適性がないと判断されると受験そのものができなくなるので注意が必要です。

事前研修では次のような内容を学びます。

・アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い
・スクラムにおける5つのイベントとは何か
・継続的な改善とチームワーク
・スクラムにおける3つの役割と責任
・認定『スクラムマスター』試験対策 など

事前研修と試験はセットになっています。スクラムに関する基礎知識があり、多少の実務経験や知識が身に付いてからの受験がおすすめです。認定資格の期限は2年間で、更新には100米ドルがかかります。

試験の流れや費用
試験より事前研修の難易度が高いといわれており、特に演習は非常に難しいとされています。そのためスクラムの未経験者や初心者は、研修の受講と復習をしっかりと取り組むことが大切です。

研修においてトレーナーは、論理的に弱い部分を徹底的に指摘します。グループによる演習を重視しており、課題はグループごとに課題解決に向かい全員で合意し、トレーナーに内容を判断してもらうという流れです。

受講費用は日本語セミナーで約16万~45万円です。セミナー終了後でも90日以内であれば2回まで試験を受験できます。90日以降、または3回目の受験には受験料1回25米ドルが必要です。

2.ProfessionalScrumMaster™

ProfessionalScrumMaster™とは、Scrum.orgが提供している『スクラムマスター』資格で、一般に「プロフェッショナル『スクラムマスター』認定資格」と呼ばれています。

難易度ごとにPSMⅠ・PSMⅡ・PSMⅢに分かれており、上位の認定試験を受験するには下位の認定試験に合格する必要があります。事前研修が必須ではありませんが、実務経験者程度以上で受験するのがおすすめです。

試験概要
試験は英語でのみ実施され、難易度もCertifiedScrumMaster®(CSM®)より高く設定されています。試験範囲は以下の通りです。

・理論と第一原則
・完成と未完成
・スクラムを使ったプロダクトデリバリー
・人とチーム
・スクラムフレームワーク など

学習はスクラムガイドや関連書籍を読み込み、何度でも受験できるOpen Assessmentというプレテストを受験しながら進めます。

試験の流れや費用
試験はオンライン形式で、制限時間は60分です。全80問の選択式で、85%以上の正答率で合格します。受験の費用は150米ドルですが、事前の研修を受ける場合は22万円程が必要です。

また、CertifiedScrumMaster®(CSM®)と違い、ProfessionalScrumMaster™には認定期限がありません。どちらかというと『スクラムマスター』としての知識の確認程度、特に『スクラムマスター』を極めたいわけではないといったゼネラリストに適した資格といえます。

3.Registered Scrum Master(RSM)

Registered Scrum Master(RSM)は、KDDI株式会社および株式会社永和システムマネジメント、Scrum.Incの3社による合弁会社による認定資格です。

Registered Scrum Master(RSM)の取得には、事前研修を受ける必要があります。日本企業が立ち上げた資格なので研修も日本語でわかりやすいのが特徴です。

試験概要
資格取得の前に、Scrum Incが実施する2日間の事前研修の受講が必要です。事前研修はZoomによる配信形式で実施されます。

資格の歴史は比較的に長く、研修でもスクラムの基礎から応用の理論、実践までを幅広く学び、合格すればスクラム全体を深く理解していることが証明できる資格です。

試験の流れや費用
試験はオンライン形式で、全30問の選択式問題です。全体の75%以上の正答率で合格とされ、すぐに結果がわかることから、スクラム未経験者でもしっかり学習すれば難易度はあまり高くないといえます。

費用は事前研修とセットで約20万円ですが、認定資格の有効期限は1年間と比較的短いことには注意が必要です。

『スクラムマスター』の資格を選ぶときのポイント

『スクラムマスター』資格には代表的な3つ以外にも、豊富に存在します。それぞれ内容や資格の有効期限、費用が異なるため、自分に合ったものを選ぶことが大切です。

ここでは、『スクラムマスター』資格を選ぶときの3つの基準を解説します。

費用対効果を検討する

スクラム開発を含むアジャイル開発が重視するのは、経験だといえます。『スクラムマスター』ではベースとなる知識はもちろん、経験から得られた知識やスキルが求められます。

『スクラムマスター』はスムーズな対応や進行が求められることから、多くの資格の取得要件に事前研修が含まれています。また、研修には座学だけでなく演習やシミュレーションが含まれるため費用は高額になりがちです。

資格取得にそれだけの価値があるのか、選ぶときに費用対効果の面から考える必要があります。

身につけられる内容を精査する

体系的にアジャイル開発のスキルが身につけられる内容であるかも、資格を取得しようとする前によく確認しておくことが大切です。学習に使う書籍やチュートリアルサイトが用意されているか、どのようなカリキュラムであるかもチェックしておきましょう。

実用性が高いかどうかを比較する

資格そのものの実用性が高いかどうかも、きちんと比較してみましょう。スクラム未経験者でも学びやすいのはProfessionalScrumMaster™やRegistered Scrum Master(RSM)です。しかし、費用は掛かりますが事前研修でじっくり身につけるならRegistered Scrum Master(RSM)がおすすめです。

また、『スクラムマスター』を極めたいのであれば、取得後さらに上位資格にステップアップできるCertifiedScrumMaster®(CSM®)を選ぶという方法もあります。学びやすいかどうか、自分に合っているかどうかは、インターネットの口コミやすでに取得している周囲の意見を参考にしてみましょう。

まとめ:『スクラムマスター』の役割を理解して、スキルアップを図ろう

『スクラムマスター』の資格は、今後も導入が見込まれるスクラム開発にとって、開発現場の進行や調整に欠かせない資格です。ただし、『スクラムマスター』に関する資格の種類は豊富であり、内容やかかる費用も大きく異なるため、自分に合った資格がどれかを十分に検討しておくことが重要だといえます。

学ぶ内容や実用性、費用面などを含めた検討はもちろん、資格保有者やインターネットの口コミなども参考にして、必要とする資格の取得を目指してみましょう。

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