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企業法務部に転職したい人必見!
仕事の内容からやりがいまで解説

コラム

掲載日:2023/01/25

企業法務は、企業内でビジネスの遂行上必要な、法律にかかわる業務を担う仕事です。コンプライアンス(法令遵守)の重要性が高まっている中、存在感が大きくなっています。本記事では、その役割や業務内容、担当者に必要なスキルなどについて解説します。

企業法務の役割と必要性

企業法務は、企業がかかわるあらゆる法律的な業務を担当する部門です。企業活動が法令や契約に違反することなく、適正に進められ、企業が発展できるようサポートする役割があると言えます。

企業法務の役割は、大きくは「攻め」と「守り」の2種類です。企業として増収や増益を確保するため、法的手段を使った戦略・戦術で企業活動を後方支援するのが、攻めの法務です。

攻めの法務の一環として、企業法務には法律の観点から企業価値の最大化を図る、戦略的な役割があります。経営判断を法律面から支える重要な役割であり、担当者には高度な専門性が必要です。

攻めの法務の事例には、以下のようなものがあります。

● 企業買収や合併などに関する法的リスクの解決策を提示
● 海外市場の法令調査
● 知的財産の活用提案

守りの法務は、企業内外での法的トラブルを未然に防止することや、発生してしまった紛争を適切に処理することなどが主な内容です。想定される法的トラブルを防ぐための法務を予防法務と呼び、起きてしまったトラブルの解決を行うことは臨床法務と呼ばれます。

守りの法務には以下のような業務があります。

● 契約締結前に内容を精査する
● 事業展開にあたり計画案を審査する
● 顧客からのクレーム対応
● 取引先の倒産にともなう債権回収

近年、SNSの普及などによって、企業のブランド毀損リスクなども高まっています。法的な知識と交渉スキルを駆使して、これらのリスクに対抗することも、企業法務の役割のひとつです。

上場企業での法務部の仕事内容

上場企業における企業法務の仕事内容は、契約や取引に関する書類の作成やチェック、訴訟への対応、株主総会の運営など多岐にわたります。ここでは8つの業務について、内容を解説していきます。

1.契約書類の作成、審査

法務部の仕事で多くみられるのが、契約書類の作成や審査です。企業活動の中では、売買契約や秘密保持契約など、さまざまな契約が締結されます。契約書の作成は、将来的な紛争を防ぎ、もし紛争に発展しても証拠として対抗できる内容とする必要があります。

審査業務は、契約書の内容が法的に妥当かどうかなどをチェックし、必要があれば修正する仕事です。契約書の作成や審査には、関係法令への深い理解が求められます。海外との取引に関連する場合は、英語力や現地の法令についての知識も不可欠です。

2.機関法務

株主総会や取締役会など、企業内部の活動を適法に運営することを目的とした業務が、機関法務です。会社法を中心とした法律知識が必要となり、子会社の設立、株式の発行などにもかかわります。

株主総会などでミスが生じれば、企業の信用が傷つきかねません。非常に重要で、専門性も高い業務であるため、弁護士や税理士など社外のスペシャリストとの連携も行われます。

3.法律相談

法律に関する、社内からの相談窓口となる機能も、法務部は持っています。相談やヒアリングを通じて、法務部で問題点を分析し、経営者や事業部門にアドバイスを与えるなどの仕事です。事案によって関係する法令が異なるため、幅広い法律知識が求められます。

パワハラやセクハラなどの問題について相談を受けたり、労働関係法令に関する社内研修を行ったりすることも、法務部の仕事の一部です。

4.コンプライアンス業務

企業にとって信頼性の確保は必須であり、上場企業であればなおさらです。会社の信頼性を維持するための、コンプライアンスの周知徹底は、法務部の重要な仕事と言えます。そのための社内研修や相談窓口の設置なども法務部の業務です。

5.社内規程の整備

社内的なルールを定めて、役員や従業員のコンプライアンス意識を高めることで、法的トラブルの未然防止を図れます。就業規則や服務規程、賃金規則などが社内ルールの代表的な例です。法務部でこうした規程を整備する際には、予想される法的リスクを回避できるか、対外的に事業の健全性をアピールできるかなどを考慮することも必要です。

6.社内トラブル対応

社内で発生しうるトラブルは、労務問題や安全管理のほかセクハラ、パワハラなど多岐にわたります。社内トラブルがこじれて訴訟に発展するなどした場合は、企業の信用が毀損したり、優秀な人材の流出につながったりする懸念もあります。

社内トラブルには迅速な対応が求められ、相談の受付や対応は法務部の守備範囲です。事例によっては、相談内容を社内規程などに反映させることもあるでしょう。

7.紛争訴訟対応

取引先とのトラブルや、顧客からのクレームなどに、法務部で対応することがあります。とくに、訴訟まで発展した場合は、法務部が顧問弁護士らと連携して対応にあたります。社外の弁護士との連絡や相談、情報収集や費用交渉なども、法務部の仕事となることが多い事案です。訴訟に発展する前に、相手方との和解を模索するのも法務部の業務です。

8.法令調査

法制度は時代によって変化し、国によっても大きく異なります。法改正を知らずに業務を続けていると、思わぬ損失が生じたり、行政処分の対象になったりする危険性もあります。法律の変化に即時に対応し、必要に応じて海外の法制度についても調査することは、法務部の仕事のひとつです。調査した結果を、経営層や従業員に周知する業務も、法務部が担います。

法務部担当者のやりがいとは

企業活動を行う上では、法令を遵守しなくてはならず、それとともに利益の追求も必要です。法務部担当者の仕事は、法令遵守と利益追求の間に立ち、両者の線引きを明確にする、やりがいのある仕事と言えるでしょう。

担当する分野によって感じ方もさまざまですが、「スムーズに対応できたことで感謝されたとき」「クライアントから信頼されていると感じたとき」「法律を遵守しながら、不可能と思えたことを法的に可能にしたとき」などに、やりがいを感じた法務部担当者が多いようです。

法務担当者に求められるスキル

法務部で働くには、法律の知識が必要なことはもちろんですが、その他にも求められるスキルがあります。以下に、代表的なスキル3つについて解説します。

・高い専門性

法務部の担当者は、契約実務や法的思考力など、高い専門性を生かして企業活動を支援することが求められます。対外的な交渉を優位に進めるための文章力、海外企業との契約に必須な英語力、法令調査に必要な調査力など、細分化された分野での専門性も要求される仕事です。

・コミュニケーション力

法務部の仕事は、法律の専門家との間でだけ行われるものではありません。ヒアリング内容から問題点をすくい上げたり、従業員の質問に答えたりするには、コミュニケーション力が必要です。社外の弁護士に社内事情を正確に理解してもらう際など、社内外とのやり取りを円滑に進めるにも、コミュニケーション力は欠かせません。

・学ぶ意欲

前述したように、法務部の仕事には、法令遵守と利益追求の双方を踏まえた判断が不可欠です。常に適切な判断をくだしていくためには、社会環境の変化や法改正のフォロー、事業内容への深い理解など、多くの知識を更新し続けていく必要があります。法務部が経営判断の支援を行い、経営者の相談役ともなる役割を担うには、学ぶ意欲の継続が必須です。

法務担当者に有利な資格

企業の法務担当者として働くには、必要な資格はとくにありません。しかし、法律に関する専門性を要求される職種であり、法務部門への転職を検討しているなどの際は、資格を保有していると有利になる可能性があります。以下に、取得していると有利な資格6種をご紹介します。

・『ビジネス実務法務検定』

ビジネス上、持っていたい実践的な法律知識を、バランス良く身につけることを目的とした検定試験が『ビジネス実務法務検定』です。東京商工会議所の運営で、法務部門以外の職種でも、法律を理解するために受検する人が多いとされます。1級から3級まであり、最上位の1級は合格率21.2%(2021年度)となっています。

・『ビジネスコンプライアンス検定』

コンプライアンス経営の根幹となる法律知識と、実践的な価値判断基準を持つ人材を育成するため、創設された検定です。サーティファイ コンプライアンス検定委員会が主催し、認定区分は初級と上級に分かれます。2021年度の平均合格率(初級・上級)は48.9%でした。

・『個人情報保護士』

2005年の個人情報保護法施行にともなって設けられた民間資格です。全日本情報学習振興協会が認定し、個人情報保護法の歴史や個人情報に関連する事件・事故、個人情報の定義と分類などが出題範囲となっています。同協会サイトによれば、過去の平均合格率は37.3%でした。

・『知的財産管理技能検定』

特許や著作権など、企業の持つ知的財産の管理や活用をするスペシャリストを認定する国家試験が、『知的財産管理技能検定』です。検定の合格者には『知的財産管理技能士』の国家資格が与えられます。『知的財産管理技能士』には1級から3級まであり、1級は専門業務ごとに特許、ブランド、コンテンツの3種に分かれます。

1級と2級の受検には、原則として知的財産関連の実務経験が必要です。2022年7月の試験では、全体で9,925人が申し込み、6,081人が合格しています。

・『行政書士』

役所に提出する許認可等の申請書類の作成や提出代理や、事実証明や契約書の作成を行える国家資格です。代書的な業務からコンサルタント的な業務まで、幅広い内容を取り扱います。2021年度の合格率は11.18%と、難関資格のひとつです。試験は年に1度行われ、年齢や学歴などにかかわらず受験可能です。

・『弁護士』

法務関連では最高峰に位置する国家資格が『弁護士』で、法務に関する業務全般を行う権限が認められます。近年は、企業の法務部などで活躍する『弁護士』も増えています。弁護士になるには、司法試験に合格した上で、約1年間の司法修習を修了することが必要です。司法試験を受けるには、以下のどちらかが条件となっています。
● 法科大学院課程の修了
● 司法試験予備試験に合格
能力をアピールできる強力な資格ですが、最難関資格のひとつであり、合格までに長い時間が必要となるのが一般的です。

まとめ:スキルアップして企業法務への転職を成功させよう

企業法務は契約書の作成、社内トラブルや訴訟への対応など、高い専門性とコミュニケーション力を求められる業務です。ビジネス上のリスク回避と、利益の向上の両面から、企業活動を支える重要な役割を担ってもいます。簡単ではないものの、やりがいの持てる仕事です。企業法務への転職を考えているなら、有用な資格にチャレンジするのも一案です。スキルアップして、企業法務の分野で羽ばたきましょう。

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