掲載日:2023/01/24

革新的なビジネスの創出にも注力するSBテクノロジーは、新規事業を生み出す部署=ビジネスイノベーション本部を設置しています。そこで働く福嶋健二さんの仕事は、点在する独自技術やユニークなアイデアを線でつなぎ、さらにSBテクノロジーの得意分野もプラスして、新たな価値観を持つ事業へと育て上げていくこと。「自由な働き方をしている人間です」という福嶋さんに、新規ビジネスをプロデュースする日々の業務について聞きました。
転職前の仕事・転職後の仕事
新規事業を企画・提案し、形にしていくことに対する熱い思いを胸に
私が所属するビジネスイノベーション本部は、新規事業を創出する部署です。パートナー企業やスタートアップなどと協力し、彼らが持つ斬新なテクノロジーやビジネスのアイデアを融合させ、そこにSBテクノロジーの技術も絡めながら新しい事業として形にしていくことが業務で、私はそうした流れの全体を司る、いわばビジネスプロデューサー的な役割を務めています。
これまでの職歴の中で、私は「企画すること」、「提案すること」、「新しい何かを生み出すこと」が好きなのだと自ら認識しました。最初に勤務したのは旅行代理店で、そこではお客様の要望に合わせてツアーの日程を考案することが仕事の1つでした。お客様に喜んでいただくことも多く、家族からは「天職だね」といわれていたほどです。
外資系の広告代理店でも働きました。イラストレーター、コピーライター、カメラマン、デザイナーなど、さまざまな個性の持ち主が集まり、みんな自分がプロであることを強く意識しながらクリエイティブな仕事に取り組んでいる会社でした。

その会社での私の役割の1つが、デジタル分野での広告プロデューサーでした。キャンペーンのWeb展開やデジタルデバイス向けのゲームを考案・計画し、他企業やアーティストとのコラボレーションなどを管理・調整しつつ、予算を回し、お客様と一緒にデジタルコンテンツを作り上げていく、という役回りです。これもまた、提案し、新しい何かを生み出す仕事だったといえるでしょう。自分自身の能力を試されているな、と感じると同時に、楽しさも味わえる環境でした。
ただし広告代理店の仕事は、あくまでもクライアントから商品・サービスの販促や企業ブランディングを“請け負う”ことです。より効果的な販促やブランディングを実現するためには、その企業のコアとなる部分、つまり事業そのものにもタッチしていくことが大切だと考え、いろいろと仕掛けてみたのですが、それは広告代理店としての業務範囲を超えることであり、なかなか上手くいきませんでした。
事業の世界で「企画する」、「提案する」、「新しい何かを生み出す」仕事をやってみたい。そういう思いを募らせた結果が、いまの仕事につながっているのです。
新たなビジネスの創出に向けて
鮮度の高い情報のキャッチボールが、新規事業につながっていく
では、新しい技術やアイデアを融合させ、そこにSBテクノロジーが関わる形で1つの事業へと育てていくためには、どうするか?
たとえばIT関連のイベントなどに参加し、SBテクノロジーが力を入れている新技術を発表することで、それに興味を持った人や企業に接触してもらう、という方法が1つ。面白そうなスタートアップがイベントに出展していれば、こちらからアプローチすることもあります。
しかし、もっとも多いのは「人脈を頼って接触する」というパターンです。ビジネスの種となりそうな情報を、自分の中でどう磨いていくか。大切なのは、会って、聴いて、観てくることだと思うのです。
広告代理店に勤務していた時代に知り合った人も含めて、私は多くの人とSNSなどでつながっています。そしてSNSの中には、その人の経歴や、その人が誰と接点を持っているのかを見ることが可能なものもあります。接点の連鎖や、それぞれの人の職歴などがわかると、「この人はどんな情報を持っていそうか」、「どんなことに興味・関心がありそうか」まで見えてきます。
そんな中に「会って話してみたい」と思える人がいれば、その人と私の双方を知っている人に連絡し、紹介してもらいます。いきなり会うことが難しい立場の人でも、誰かの紹介があれば意外といい返事をいただけます。私自身が誰かと誰かをつなぐこともあります。
会って、聴いて、観ることで自分の中に取り込んだ情報、ビジネスの種は、キャッチボールしながら育てていくことになります。この種がどんな風に育つか先々を予測しつつ、その情報を必要としているであろう人に投げてみて、反応を見ながら次の情報を投げる……、ということを続けるわけです。
不思議なもので自分がアクションを起こすと、それが何年かぶりの接触であっても多くの方々が連絡を下さいます。「福嶋ならもっと面白い情報をくれるだろう」という期待感があるのかも知れません。
当然、「この人ならこういう情報に興味を示すはず」、「こういう情報を持っているだろう」という見立てが大切です。人を把握すると同時に、その人が属する業界の流れ、ビジネスシーンの現在も把握しておかなければなりません。また娘には「お父さんは自分で捕まえた情報をただ横に流すだけではなく、自分なりに咀嚼し、何かをプラスして渡すことが得意だね」といわれるのですが、それは私自身も意識しているところです。
5回投げて1回しか返事が来ない、ということもありますが、とにかくしょっちゅう投げ続けています。反応があれば、そこで得られた情報を別の方向にも投げてみる。そんな風にキャッチボールをしながら段階的に深い話へと持っていくのです。
新聞に掲載されているような情報は誰もが知っているものなので、使うことはありません。より鮮度の高い情報を渡すことで、先方も鮮度の高い情報を提供してくれます。私の強みは「福嶋だから話すけれど」という人がいること。その情報を持っているのは私だけ。鮮度の高い活きたネタです。
「福嶋が持っている情報は鮮度が高い」。そういうメリットや可能性を、多くの人に感じていただけているため、キャッチボールも続くのではないかと思います。
新規事業創出の実際
「この両者なら融合できる」と感じた、ダイキン工業&青山商事のコラボ

新しい技術やアイデアを融合させる際には、誰かの役に立つかどうか、そのプロジェクトに関わる人たちが互いに足りていない部分を補い合い、社会的な課題解決につなげられるかどうか、という点を意識しています。
SBテクノロジーが何らかのポジションを取れるかどうかは、いったん置いておきます。SBテクノロジーとしてのメリットありきで話を進めようとすると、できることの範囲が狭くなってしまいますから。ある程度まで話が進んだ時に、ではSBテクノロジーとして何ができるか、われわれが持っているこの技術を使ってもらいましょう、というスタンスでいることが大切です。
一例として、ダイキン工業と青山商事による協創をご紹介しましょう。世界に冠たる空調機器メーカーのダイキン工業は、空調制御のための優秀なセンサー技術を持っています。実はこのセンサー、単に気温や湿度だけでなく人間の心拍数といった生体情報をリアルタイムに計測することも可能で、いわば“バイタルセンシング技術”と呼べるものなのです。
このセンサーによって、人が感じるストレスと職場環境の関係性を解き明かせるのではないか。生体情報を数値化・デジタル化することでストレスの評価基準を作れるかもしれませんし、センサーで集めたデータを心のケアや働く環境作りに応用できれば、そこで働く人たちのパフォーマンスも上げられるでしょう。バイタルセンシング技術は、かなりの価値を秘めていると感じました。
このビジネスの種に興味を示してくれそうな企業はどこか。空調の下ではスーツを着て働いている人がいます。スーツといえば市場トップは青山商事です。青山商事がフットワークの軽い企業だということは知っていましたし、ただスーツを売るだけではなくマーケットの周辺で新たなサービスを展開していきたいという意向を持っていることもわかっていました。
両社の融合は、きっと成立するはず。そう思った私は両社を結び付け、バイタルセンシング技術をIoTデバイスとしてプロダクト化したり、概念実証の方法を考えたりなど、双方と調整しながらアイデアを形にしていきました。将来的には、人のストレス度に応じた空調の自動制御技術や、生産性が向上するオフィス空間作り、働く人のためのヘルスケアサービスといった、新たな価値創造につながるのではないでしょうか。
生体情報データの取得・蓄積・分析には、さまざまなデジタル技術、クラウドプラットフォーム、運用ノウハウが必要となり、セキュリティに対する配慮も求められます。こうした領域でSBテクノロジーも関わっていくことになるわけです。
仕事への取り組み方
柔軟性に富む組織の中で、粘り強さとコーディネーション能力を発揮する

人・企業が抱えている課題や情報の中には「この話をこっちへ持っていけば新しい何かが生まれるのに」と思わせるものがあります。しかし、それぞれが閉じているため出会うことはほとんどありません。それらをつなぎ合わせる接着剤が私の役目。プロデューサーというよりコーディネーターと呼ぶべきかも知れません。
コーディネーションが進めば、役割はプロデューサーに変わります。どうすれば事業としての価値が高まるかを考えながら計画を立て、調整し、足りないものがあれば探し出し……。つなぎ合わせる企業をどちらも知っていて、何をすればいいかもわかっていますから、プロジェクトの真ん中にいることができます。
事業として成立しそうだと実証できれば、新たな担当者にバトンタッチし、私自身はまた別のテーマに取り組むのがスタンダードな流れになりますが、私でないと読めないこと、解決できないこともあるので、並走するのが実際のスタイルです。
私のような仕事を志す場合、必要となる資質は、まずは粘り強さでしょう。私はどれだけ断られようが何度もアプローチするため“すっぽん”と呼ばれているほどです。もちろんコーディネーションのスキルとコミュニケーション能力も重要です。
SBテクノロジーの働く環境は、これ以上ないくらい素晴らしいものだと思います。とりわけお伝えしたいのが柔軟性です。
実は私、広告代理店から転職した先はSBテクノロジーではなく、その子会社であるサイバートラスト社で、同社の主要商品の1つであるSSLサーバー証明書のマーケティングを担当していました。
単に“売る”のではなく、たとえばオンライン決済代行サービスに絡めてSSLサーバー証明書を機能させる仕組みを作るなど、ビジネス・ディベロップメント的な思考や動きが必要な仕事でした。そこで「どんなビジネスが可能か、提携先の目線に立って考えてみたい」と申し出て、いくつかの企業に出向させてもらいました。一時は名刺を4種類も持って仕事をしていたことがあります(笑)。
そのうちの1社がSBテクノロジーで、いつの間にか「SBテクノロジーで新規事業を作っていく」立場になりました。
私のような自由な働き方をする人間は、柔軟な組織でないと存在できません。企業によっては部署をまたいだ相談・連携が難しいところもありますが、SBテクノロジーは懐が広く、閉じていない企業だと思います。自由さがある一方で、みんな真面目で“整っている”会社だという印象もあります。
そうしたSBテクノロジーの企業文化や思想、空気感を好み、「こんな仕事もできるんだ」と楽しさをお感じになったなら、ぜひ来ていただきたいと思います。