掲載日:2022/12/28
更新日:2025/1/9

「DWH(データウェアハウス)」は、企業が持つさまざまなシステムのデータを整理して保管する、「データの倉庫」の役割を果たすプラットフォームです。データに基づいた効果的な意思決定が可能なため、多くの企業で導入されています。
本記事では、DWHの特徴や似た用語との違い、活用例をわかりやすく解説します。
DWH(データウェアハウス)とは

「DWH(データウェアハウス)」は、企業のデータ分析や意思決定を支援する「データの倉庫」としての役割を果たすプラットフォームです。さまざまなシステムや部門から収集された異なる形式のデータを、整理・統合して保管します。
DWHの主な目的は、横断的なデータ分析や時系列でのデータ管理です。データの表記ゆれや形式の違いを解消し、一貫性のあるデータを提供することで、効果的な分析と意思決定をサポートします。
DWHの特徴

DWHには、効果的なデータ分析や意思決定を実現するため、通常のデータベースとは異なる以下のような特徴があります。
● データ分析に最適化
● 時系列でデータ管理
● データを永続的に保管
● リアルタイムの分析や変則的な分析は苦手
それぞれの特徴を見ていきましょう。
データ分析に最適化
DWHの大きな特徴の1つは、データ分析に最適化されていることです。
DWHでは、さまざまなシステムから集めたデータが分析しやすい形式に変換され、統一されたフォーマットで保存されています。これにより、会計や人事、顧客管理など複数のシステムや部門で発生するデータを統合的に扱い、横断的なデータ分析が可能です。
DWHがない場合には、個々のシステムからデータを収集し整理する必要がありました。しかし、DWHを利用すれば必要なデータに簡単にアクセスし、複雑な分析もスムーズに実施できます。
時系列でデータ管理
時系列でデータを管理する点も、DWHの大きな特徴の1つです。
一般的なデータベースは最新データの管理に重点を置くのに対して、DWHでは履歴を保持し、時間軸に沿って時系列でデータを蓄積します。これにより、過去から現在までのトレンドの把握や、時系列データに基づいた予測モデルの構築、問題発生時の原因究明などが可能です。
蓄積された時系列のデータは、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールやKPI(重要業績評価指標)のモニタリング、リスク管理などに活用され、企業の戦略的な意思決定を支える重要な基盤となります。
データを永続的に保管
データを永続的に保管する点も、DWHの特徴です。「永続的に保管」とは、データを削除せずに蓄積し続けることを意味します。
通常のデータベースでは、最新データを重視し、古いデータは順次削除していくことが一般的です。しかし、DWHに蓄積したデータは、原則として削除しません。データを永続的に保管することで、ビジネスの長期的な変化や周期性を捉えやすくなり、より高度な分析が可能です。
ただし、DWHのストレージにも容量やパフォーマンスの限界があります。優先度の低いデータの削除やアーカイブなどのメンテナンスも必要です。
リアルタイムの分析や変則的な分析は苦手
DWHは、大規模なデータ分析に強みを持つ一方で、リアルタイムの分析や変則的な分析は苦手です。
DWHは通常、データを定期的に収集・更新する設計のため、最新のデータをリアルタイムで分析することはできません。更新頻度を上げることも可能ですが、システムへの負荷が増大するトレードオフがあるため、十分な考慮が必要です。
また、DWHは事前に定義された要素に基づいてデータを管理するため、想定しない変則的な分析要求には対応できません。DWHを運用する際には、分析に必要なデータ要素を適切に設計することが重要です。
DWHと似た用語の違い

データの保管や分析のためのシステム・ツールには、DWHのほかにも、以下のようなものがあります。
● DB(データベース)
● データレイク
● データマート
● BI(ビジネスインテリジェンス)
● CDP(カスタマーデータプラットフォーム)
DWHとよく似ていて混同しやすい、5つの用語との違いを解説します。
DB(データベース)との違い
DBも、DWHと同じようにデータを保管する役割を持ちますが、その目的が異なります。DBは個々のシステムの業務処理に使用するためのデータ保存が目的です。一方、DWHは個々のシステムのDBからデータを集め、分析しやすい形式に整理して蓄積することを目的としています。
目的が異なるため、データの構造も異なります。DBは日々の業務処理を効率化するため、データの冗長性が排除され正規化されているのが一般的です。一方、分析に特化したDWHでは冗長性を許容し、分析のしやすさを追求した構造が採用されています。
データレイクとの違い
データレイクも、DWHと混同しやすい用語の1つです。
DWHとデータレイクは、どちらも大規模なデータを保管するプラットフォームですが、扱うデータの種類や用途が大きく異なります。DWHが分析に最適化した構造化データを扱うのに対して、データレイクは構造化データだけでなく、画像や動画、音声などの非構造化データもそのまま格納する汎用的なプラットフォームです。
非構造化データも取り扱うデータレイクはDWHに比べて用途の柔軟性が高く、データサイエンスやAIなどの幅広い分野でも活用されています。
データマートとの違い
DWHとよく似た用語の3つ目は、データマートです。
DWHとデータマートは、どちらもデータ分析を支援するためのプラットフォームですが、その役割と規模に違いがあります。DWHが幅広いデータを集約し、横断的な分析を行うための大規模なプラットフォームであるのに対し、データマートは特定の部門やテーマに特化した、より小規模なデータベースです。
データマートは部門やテーマごとの具体的なニーズに最適化しており、より迅速な分析が可能なため、用途に応じて使い分けると良いでしょう。
BI(ビジネスインテリジェンス)との違い
BI(ビジネスインテリジェンス)は、DWHと一緒に使われることの多いツールですが、その役割は明確に異なります。
BIは、DWHなどに格納されているデータを使って、意思決定を支援するためのツールです。BIツールを使うことで、複雑なデータのダッシュボードやレポートによる可視化、トレンド分析・予測などが可能になります。
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)との違い
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)も、DWHと混同しやすい用語です。
CDPは、カスタマーという名称のとおり、顧客に関するデータを専門に統合・管理するプラットフォームです。企業全体のさまざまなデータを収集し、横断的な分析を可能とするDWHとは、その目的や役割が大きく異なります。
CDPは、顧客をより深く理解し、エンゲージメントを向上させるために有効です。DWHで集約された顧客データをCDPに連携させ、より高度な顧客分析を行うケースもあります。
DWHの活用例

時系列で永続的にデータを保管し、データ分析に最適化されたDWHは、企業のどのようなシーンで活用されているのでしょうか。
DWHの主な3つの活用例を紹介します。
CRMやBIツールとの連携
DWHは、CRM(顧客関係管理)やBIツールと連携することで、その真価を発揮します。
CRMとの連携では、DWHに蓄積されたさまざまな顧客データの一元的な分析が可能です。これにより、顧客の行動やニーズをより深く理解し、マーケティング施策や顧客満足度の向上に役立ちます。
また、BIツールとの連携により、DWH内の膨大なデータを視覚化し、高度な分析が可能です。さまざまなシナリオをシミュレーションし、将来の予測や戦略立案にも活用できます。
迅速な意思決定の支援
DWHは、企業が迅速な意思決定を行うための強力なツールとして活用されています。
DWHは、企業内のさまざまなデータを統合・整理し、分析しやすい形で保管できる点が特徴です。経営者や現場責任者は、必要なデータに素早くアクセスし、複数の視点からデータを分析できます。
従来は勘や経験に頼っていたような場面でも、DWHを活用すれば、データに基づいた高度な意思決定が可能です。
部門を跨いだデータ分析
DWHは、部門を跨いだ分析のためのデータ基盤としても広く活用されています。
企業内の複数の部門からデータを集約し、DWHに統合することで、全社的な視点でのデータ分析が可能です。
例えば、営業部門とマーケティング部門のデータを組み合わせて顧客動向を分析したい場合、DWHがなければ、各部門に連絡を取ってデータを取得する手間やコストが発生していました。しかし、DWHにデータが統合・整理されていれば、DWHにアクセスするだけで、容易に部門を跨いだデータ分析が実現可能です。
まとめ|DWHは企業のデータ分析を高度化するための重要な土台

DWHは、企業のデータ分析を高度化するための重要な土台となるプラットフォームです。
さまざまなシステムから多様な形式のデータを整理・統合し、時系列で管理することで、迅速な意思決定や部門を跨いだ分析を可能にします。一方で、変則的な分析やリアルタイム処理には向かないため、用途に応じてDBやデータレイク、データマートなどとの使い分けが必要です。
DWHを有効に活用して、企業のデータ分析を高度化し、ビジネスの成長を加速させましょう。