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PMPとは?資格の概要や難易度・必要な勉強時間を解説!

コラム

掲載日:2024/07/17

システムエンジニアからプロジェクトマネージャー(PM)への転向を志す人も多いでしょう。マネジメントを志すエンジニアに役立つ「PMP」という資格があります。本記事では、仕事内容から試験の概要や資格取得のメリットなど、幅広く解説します。

そもそもプロジェクトマネージャー(PM)の仕事って

まずは、プロジェクトマネージャーの仕事内容と、求められるスキルを確認しておきましょう。

プロジェクトマネージャーの役割と仕事内容

プロジェクトマネージャーとは、プロジェクト全体に責任を持つ人のことで、管理・統括するのが主な役割です。プロジェクトの開始から終了まで、一貫して責任を持って動く立場であり 、プロジェクトの目的達成のため、計画を立案したりプロジェクトメンバーの業務内容を調整したりします。マネジメントのスキルが高いプロジェクトマネージャーがいる現場は、効率的にプロジェクトを進行させることが可能です。

プロジェクトマネジメントは、IT業界でのみ通用するスキルではないという特徴があります。プロとして高度なマネジメントスキルを身につければ、他の業界でも広く応用が利くメリットを持ちます。プロジェクトマネージャーに求められる役割として大きなものは、QCDの管理です。QCDとは、Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)の略語で、一定以上の品質の成果物を、決められた予算内で、決められた期日までに納品することを示します。

プロジェクトが終了しても、プロジェクトマネージャーの仕事は、まだ終わりではありません。完了後のレビューを行い、問題があった点の洗い出しと解決策の提案、プロジェクト全体の評価などをプロジェクト完了報告書に取りまとめます。

プロジェクトマネージャーに求められるスキル

プロジェクトマネージャーに求められるスキルには、以下のようなものがあります。

  ● コミュニケーション能力
  ● 交渉力
  ● マネジメント能力

他社の人材を含むプロジェクトメンバーをまとめ、クライアントとの調整を日々行うプロジェクトマネージャーには、コミュニケーション能力は必須です。仕様変更の要請や工程の調整など、クライアントとの交渉が必要になる事案も、しばしば発生します。プロジェクトの予算規模や要員数、スケジュールなどのバランスを取り、最終的に成果を出すマネジメント能力も問われます。

プロジェクトマネージャー(PM)に必要なPMP試験の概要や難易度は?

続いて、プロジェクトマネージャーとして活躍するために有用な、PMP試験の概要や詳細、難易度などについてご紹介します。

PMP資格試験の概要

プロジェクトマネージャーにとって、取得しておくと役立つ資格とされるPMP(Project Management Professional)は、アメリカの非営利団体であるPMIが運営し、プロジェクトマネジメントの専門家であることを認定する国際資格です。PMPには受験資格があり、学歴によって異なります。

4年制大学卒業相当であれば、36か月のプロジェクトマネジメント経験、4,500時間のプロジェクトマネジメントの実務経験が必要です。高校卒業相当の場合は、60か月のプロジェクトマネジメント経験、7,500時間のプロジェクトを監督する立場での実務経験が必須です。この他に、学歴にかかわらず35時間の公式なプロジェクトマネジメントの講習を受講することが条件づけられています。

PMPは一度取得すれば永久に有効となる資格ではなく、3年ごとに更新が必要です。

PMP試験で問われるPMBOKについて

PMP試験は、プロジェクトマネジメントに関する知見や手法を体系的にまとめたPMBOK(Project Management Body of Knowledge)に基づいて実施されます。PMBOKでは、「価値の提供」をプロジェクトの目標としています。2021年7月に改訂された第7版で取り入れられた考え方で、それ以前は前述したQCDの管理を目標としていました。この変更は、従来は主流だったウォーターフォール型の開発に限界が見られ、アジャイル型の思想や手法もマネジメントに組み込まざるを得なくなったことが理由とされています。

ウォーターフォール型は、企画、設計、実装……と順を追って開発する手法をいい、アジャイル型は開発の単位を小さく分け、短期間で実装していくやり方のことです。ウォーターフォール型は企画段階で、機能や予算などのすべてを固めてから開発をスタートするため、開発途中での仕様変更に対応しにくいなどの難点が指摘されるようになっていました。

PMBOKでは、プロジェクトを進めていくための指針として「12の原理・原則」を示しています。12の原理・原則は以下のとおりです。

  ● スチュワードシップ(請け負ったことは責任を持って行う)
  ● チーム(お互いを尊重し協力し合う)
  ● ステークホルダー(利害関係者との連携)
  ● バリュー(価値の創造を重視する)
  ● システム思考(システムの相互作用を認識して対応)
  ● リーダーシップ
  ● テーラリング(状況に応じた対応)
  ● 品質
  ● 複雑性(事態の複雑さに対処)
  ● リスク
  ● 順応性と柔軟性
  ● チェンジ・マネジメント(変化することであるべき未来を達成)

12の原理・原則は、状況に応じた対応や複雑さへの対処など、順調に進むときばかりではないプロジェクトの現実にのっとって示されたものと言えます。実際の運用上は、プロジェクトに合わせて調整していく必要があるでしょう。

PMBOKは、プロジェクトを効率的に進行させるための行動領域を「8つのパフォーマンス・ドメイン」として示しています。8つのパフォーマンス・ドメインは以下のとおりですが、不確実性への対処を組み込んだ点に大きな特徴があります。

  ● ステークホルダー
  ● チーム
  ● 開発アプローチとライフサイクル
  ● 計画
  ● プロジェクト作業
  ● 納品
  ● 測定
  ● 不確実性

PMP資格試験の試験内容

PMP資格試験は、プロジェクトマネジメントの知識と技術を証明するものです。試験は「人」「プロセス」「ビジネス環境」の3つの領域から成り立っており、プロジェクトマネージャーが実際に業務で取り扱う課題を解決する能力を問われる傾向があります。

「人」領域は全体の42%の割合で出題され、チームのリードやコンフリクトの管理など人間関係に関するスキルが必要です。

「プロセス」領域は50%の割合で出題され、リスク評価や予算・資源計画など、プロジェクトのプロセス管理に関する幅広い知識が出題内容です。

「ビジネス環境」領域は8%の割合で出題され、プロジェクトのベネフィットと価値の評価、コンプライアンスの計画・管理、組織変更のサポートなどについて問われます。

各領域で、プロジェクトマネージャーが日々の業務で遭遇する具体的な設問が設定されており、これらのタスクを効率的に実行できる能力が評価されます。

PMP資格の受験方法と難易度

PMP試験の難易度について、主催者のPMIから合格率などの正確な数字は公表されていません。試験内容は2021年に改定されており、4択の回答形式から、複数選択やドラッグ&ドロップ形式で回答する形式の問題が増え、難易度が上昇しています。

また試験は全180問から構成されており、プロジェクト管理に関する広範な知識だけでなく、具体的な経験も必要です。

PMP資格の取得は高いハードルを要求されるものの、しっかりとした試験対策と実務経験を積み重ねることで、合格は十分可能と考えられます。

PMP資格試験の受験費用

PMPの受験に必要な費用は、大きく「受験費用」「公開研修費用」「テキスト代」の3つに分かれます。受験費用は、PMIの会員と非会員で異なり、会員は405米ドル、非会員は575米ドルが必要です。

また、35時間の公式研修を受ける必要があり、費用は受講方法によって異なりますが、座学の場合は50,000円から100,000円、eラーニングの場合は20,000円から45,000円が目安となるでしょう。

これらの費用に加えて、公式参考書の購入費用も考慮する必要があり、PMI日本支部会員は8,030円、非会員は11,990円です。状況や選択肢によって異なりますが、PMPを受験する場合は最低でも100,000円程度は必要となります。

PMP資格は転職で使える?

結論としてPMP資格の取得は、プロジェクトマネージャーに関する知識やスキルを証明できるため非常に有用です。PMP試験は、プロジェクト管理の理論だけでなく実際の経験をもとにした問題も含まれてます。試験難易度は高いとされているため、一定以上のスキル・知識を保持していることの証明となるでしょう。

一方で、PMのスキルを証明する他の試験としてIPAのプロジェクトマネージャ試験があります。こちらは国家資格であるため、IPAの試験の方がよいと感じる人も多いでしょう。しかし、PMPは国際的に認知された資格であり、特に外資系企業では高い評価を受けています。

PMP資格を持つことは、プロジェクトマネジメント能力の高さを証明し、キャリアアップにも有利に働くでしょう。

IPAのプロジェクトマネージャ試験とPMP試験の違い

PMPとIPAのプロジェクトマネージャ試験は、いずれもプロジェクト管理の能力を証明する資格試験ですが、それぞれ特徴があります。具体的には、資格の知名度や難易度、受験費用や試験頻度などに違いがあります。ここからは、それぞれの資格試験の違いの詳細を確認していきましょう。

違い①:知名度

知名度について、PMPは世界的に認知されており、約140万人の保有者がいます。一方で、プロジェクトマネージャ試験は日本国内に特化しており、保有者数は約2.9万人です。

国際的なプロジェクトに携わる場合はPMPが、日本国内でのキャリアを重視する場合はプロジェクトマネージャ試験が適していると言えるでしょう。

違い②:難易度

両試験ともPMBOKに基づいた知識が求められますが、PMPは選択式の問題が中心であり、プロジェクトマネージャ試験は記述式、論述式の問題も含まれます。

後者ではより幅広い知識と実践的な対応能力が要求されるため、IPAのプロジェクトマネージャ試験のほうが難易度が高いと感じる受験者が多いでしょう。

違い③:受験費用

PMPの受験には最低でも約100,000円、これに加え更新にも同様な費用が必要なのに対し、プロジェクトマネージャ試験は受験費用が7,500円と非常にリーズナブルです。

後者は更新も不要であるため、費用面ではプロジェクトマネージャ試験がおすすめといえるでしょう。

違い④:試験頻度

PMPはCBT試験であり、年間を通して最大3回まで受験が可能である一方、プロジェクトマネージャ試験は1年に1回のみの実施となっています。

プロジェクトマネージャ試験で不合格となった場合は、次の受験まで1年待つ必要があるため、注意が必要です。

プロジェクトマネージャー(PM)がPMP試験を受けるメリットとは

プロジェクトマネージャーにとって、PMP試験の受験は数多くのメリットがあります。具体的には以下のような点がメリットとなるでしょう。

  ● スキルアップ
  ● キャリアアップ
  ● 人的ネットワークの拡大
ここでは、上記のメリットについて、具体的に解説します。

スキルアップ

PMPはIT業界に特化した資格ではなく、業界横断的に活用できるスキルを得られる点も大きなメリットです。
プロジェクトマネジメントは、業界や分野を問わず、必要とされます。IT以外の業界でも活躍したいと希望を持つ人であれば、持っていて損のない資格と言えます。

キャリアアップ

プロジェクトマネージャーは、スキルの不断の向上が求められる仕事です。PMPの取得によって、社内外に対してプロジェクトマネジメントの専門家であることを証明できるため、キャリアアップに役立てられることは言うまでもありません。PMPが客観的にプロジェクトマネジメントの実力を証明してくれるため、現職よりも年収の高い仕事に転職できる可能性も高まります。

国際的な認知度が高いことも、見逃せません。外資系企業では、中途採用の条件にPMPの取得を明示している場合もあり、外資系への転職を目指す人にとっては、PMPの取得が大きなステップとなるでしょう。

人的ネットワークの拡大

PMI日本支部には部会活動もあり、そういったコミュニティへの参加によって人的ネットワークの拡大が見込めます。リアルなセミナー、講習会や、SNSを使った交流などを通じて、業種や業界、年代も異なるプロジェクトマネジメントのプロたちとつながり、情報交換できるようになります。キャリアアップには人脈が役立つこともありますし、独立開業を目指すなら、各種のサポートや助言を受けやすくなるため、人脈を広げておくのがおすすめです。

前述したとおり、PMPの資格を維持するには3年ごとの更新が必要です。面倒だと感じるかもしれませんが、資格の維持を動機として継続的に学習できるため、新たなスキルの獲得にもつながるメリットとも考えられます。

PMP資格試験に向けた学習方法と勉強時間

PMP資格試験に向けた学習方法には、以下の2種類があります

  ● 書籍での学習
  ● スクールやeラーニングでの学習
それぞれの学習方法の概要と、必要な勉強時間について、ご紹介します。

書籍での学習

PMP試験を受験する上で、まず実施しておきたいのが書籍での学習です。

PMP試験の参考資料としては、PMIの公式が発行する「PMBOKガイド」がおすすめです。PMBOKガイドはPMP試験の出題範囲が網羅された資料であり、総ページ数が368ページと非常に内容が充実しています。

電子書籍版も利用可能で、電車での移動中や外出先でも気軽に学習を進めることができるでしょう。ただし、PMBOKガイドを一度読んだだけでは理解が浅くなりがちであるため、何度も読み返し、理解を深めてください。

また、PMP資格の問題集を繰り返し解くことで、試験の傾向を掴み、苦手分野を特定できると考えられます。この資料を参考に学習をすることで、合格へと近づくでしょう。

スクールやeラーニングでの学習

書籍での学習が苦手という方は、スクールやeラーニングを活用することも選択肢の一つです。スクールや通信教育では講師と直接やり取りができるため、疑問点をすぐに解消できるというメリットがあります。

また、学習の進捗に合わせて効率的な学習計画を立てやすい傾向があります。費用は独学に比べて高くなりますが、合格率を高めたい方や、効率的に学習を進めたい方には適した選択肢と言えるでしょう。

特に、現実のプロジェクトマネジメントに即した問題への対応力を養うためには、スクールでの学習やeラーニングでの体系的なカリキュラムが有効です。

PMPの資格取得に必要な勉強時間

PMPの資格取得に必要な勉強時間は、一般的には約100時間とされていますが、これはあくまで目安時間です。個人の前提知識やプロジェクトマネジメントの経験によって、必要な勉強時間は大きく変わってくるでしょう。

一部の人は50時間の学習で合格することができる一方で、300時間以上勉強しても合格に至らないケースもあります。

PMP資格取得までの6ステップ

PMPの資格取得までの道のりは少し複雑であり、以下のステップを実施することが求められます。

STEP1:PMIサイトのアカウント作成

まずは、PMIの公式サイトでアカウントを作成します。
以下の公式サイトからアクセスし、登録しましょう。
公式サイト:https://www.pmi.org/

STEP2:サイトへ職務経歴の登録

アカウント作成後は、PMIサイトに自身の学歴や職務経歴を登録します。過去のプロジェクトマネジメント経験の詳細を記入することが求められ、これらの情報をもとに、試験受験の資格を満たしているかがPMIによってチェックされます。

STEP3:公式研修(35時間)の受講

先述のとおり、PMP資格を取得するには、PMIが認定したATPによる35時間の公式研修の受講が必要です。

この研修は、試験に必要な知識とスキルを身につけるためのもので、研修完了後には修了証が発行されます。研修が完了したら、その内容をサイトへ登録しましょう。

STEP4:受験申請受験料の支払い

PMIのサイトから受験申請を行い、メールで通知される受験料を支払います。この段階で、ランダムに選ばれた一部の申請者が監査対象となることがありますが、指示に従って必要書類を提出するだけで問題ありません。

STEP5:試験を予約

試験はPearson VUEが提供するテストセンター、またはオンラインで受験が可能です。自分に合った方法を選んで予約しましょう。

STEP6:本番試験・合格発表

試験はパソコン上で行われ、180問の設問に230分で回答します。試験終了直後に結果が発表されるため、合否はすぐに分かります。

合格した場合は、資格を維持(更新)するため、3年の間に60PDUを取得してPMIサイトへ登録しなければなりません。

プロジェクトマネージャーなら知っておきたい!PMP試験の更新制度について

先述のとおり、PMP試験は合格したら終わりではなく、3年ごとに更新が必要です。本セクションではPMP試験の更新制度について、詳しく解説します。

PMP試験の更新頻度

前項でもふれましたが、PMP資格は3年ごとに更新する制度となっています。試験をもう一度受ける必要はなく、継続的な学習の結果を認定してもらうような形式です。更新手続きには、PMIが提供するCCR(Continuing Certification Requirements)プログラムを利用します。同プログラムでは、3年間を1サイクルとしています。

PDUとは

学習や実務経験の認定にはPDU(Professional Development Units)という単位が使われ、1PDUは1時間相当です。資格更新には60PDUの研修や専門的な活動などを必要とします。3年を経過する前に必要単位を獲得していれば、期間終了前に更新できます。1サイクル内に60PDU以上を取得した場合は、そのサイクルの3年目に得た20PDUまでを、次の更新時に持ち越せる仕組みです。

PDUの取得には、分野ごとの条件があります。研修や読書、遠隔学習などの教育分野で、35PDU以上を取得しなければなりません。教育分野は、さらにテクニカル、リーダーシップ、戦略・マネジメントの3領域に分かれ、それぞれ8PDU以上の取得が義務付けられています。

教育分野の他にギブバック活動分野があり、講演や記事執筆、関連コミュニティにおけるボランティア活動などが認定対象です。これらの活動で獲得できるのは、25PDU以内と規定されています。

PMP資格の更新費用

PMP資格の更新には、費用もかかります。PMI会員であるかどうかによって費用は異なり、1回あたりの更新費用は、PMI会員で60米ドル※(約8,400円 )、非会員の場合は150米ドル※(約21,000円)です。SBテクノロジーのように、更新費用を企業が負担してくれるところもあるため、資格取得や転職の前に確認してみることをおすすめします。
※1ドル=140円換算で計算しています。

まとめ:PMPを取得して一段上のレベルで活躍しよう

PMPは、プロジェクトマネジメントに関する高度な知識とスキルを有することが、国際的に証明できる資格です。プロジェクトマネージャーとして業務を遂行する立場であれば、取得しておきたい資格のトップクラスに挙げられます。3年ごとの更新は必要ですが、更新するための学習や実務経験が、プロジェクトマネージャーとしての実力をさらに向上させてくれる点はメリットです。

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