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DoTとは?IoTとの違いや活用例を解説

コラム

掲載日:2025/3/10

IoTの発展により、さまざまなモノがインターネットにつながる時代になりました。そのIoTにディープラーニングを組み合わせて、より賢く進化させた「DoT」という技術をご存じでしょうか。

DoTの登場により、モノがみずから学習し、判断する時代が到来しつつあります。

本記事では、DoTとは何かから、メリットや活用例、課題までをわかりやすく解説します。

DoT(Deep Learning of Things) とは

「DoT(ディーオーティー)」とは、「Deep Learning of Things:モノのディープラーニング化」の略称で、IoTを進化させた次世代技術として注目されています。

DoTでは、さまざまなモノ(エッジデバイス)にディープラーニングを組み込むことで、収集したデータをその場で即座に分析可能です。これにより、エッジデバイスが自律的に高度な予測や自動化を行い、従来のIoTシステムと比べて効率的かつスマートな運用が実現できます。

DoTを理解するために、まずはそのベースとなるIoTとディープラーニングの2つの技術を振り返っておきましょう。

IoT(Internet of Things)とは

IoTは「Internet of Things:モノのインターネット」の略称で、さまざまなモノ(エッジデバイス)をインターネットに接続する技術です。

従来、インターネットに接続する機器といえば、パソコンやスマートフォンなどの情報機器が中心でした。しかし、IoTの普及により、家電やカメラ、工業機器などもエッジデバイスとしてインターネットにつながるようになりました。

IoTは、センサーや通信機能を持つエッジデバイスが、モノの状態や動きなどのさまざまなデータを収集してクラウド上で処理・分析する仕組みです。また、モノの遠隔操作や、モノ同士の通信による相互連携もできます。

IoTは、すでにさまざまな分野で実用化され、私たちの生活やビジネスをより便利にしている技術です。

関連記事:『IoT』とは?活用事例3選と意味、メリットを解説

ディープラーニングとは

ディープラーニングは、AI(人工知能)の機械学習の一種で、人間の脳神経を模した多層ニューラルネットワークを用いてデータから自動的に学習する技術です。

ディープラーニングは通常の機械学習と異なり、人間が特徴を定義する必要がなく、大量のデータから自律的にパターンを見つけ出します。画像認識や音声認識、自然言語処理などの分野で、人間に匹敵、あるいは上回る能力を発揮している、近年のAIブームを牽引する技術です。

ディープラーニングの高度な処理を行うには、多くの計算リソースが必要とされます。現在のIoTでディープラーニングを活用する場合には、エッジデバイスからクラウドへデータを送って処理・分析する方法が一般的です。

関連記事:『ジェネレーティブAI』とは?基本的な特徴や導入のメリット、注意点を紹介

DoTとIoTの違い

DoTとIoTは、どちらもエッジデバイスで収集したデータを活用する点で共通した技術です。両者の大きな違いは、データの処理場所にあります。

従来のIoTでは、収集したデータをクラウドに送り、ディープラーニングなどを使って処理・分析していました。一方、DoTでは、エッジデバイス自体にディープラーニングを組み込むため、その場で即時に処理・分析が可能です。

これにより、DoTではインターネットに依存せず、より自律的で柔軟な運用が実現できます。

DoTがもたらすメリット

IoTにディープラーニングを融合したDoTの実現により、生活やビジネスで、さまざまなメリットが期待されます。

DoTがもたらす3つのメリットを紹介します。

リアルタイムでの予測・分析

DoTでは、センサーやデバイスが取得したデータをエッジデバイス上で処理・分析し、リアルタイムに予測や意思決定を行うことが可能です。

従来のIoTでは、ディープラーニングを利用する場合、クラウドへのデータ送信と処理に時間がかかっていました。しかし、DoTではその場で即時に処理できます。

特に、人命や設備の安全確保に関わる現場など一刻を争う場面では、DoTの強みが発揮されるでしょう。

人手による作業の削減

DoTの導入により、これまで人間が行っていた判断や作業の多くを自動化し削減できます。

従来は人間が情報を確認して意思決定していた場面でも、DoTによってデバイスが自律的に判断を下すことが可能です。例えば、危険な場所での作業や24時間365日の監視業務などにDoTを活用することで、作業者の安全確保や時間と労力の削減を図れるでしょう。

これにより、社会問題となっている人手不足の解消や働き方改革への貢献が期待されます。

オフラインでも利用でき通信コストが削減

DoTは、クラウドにデータ送信せずにエッジデバイス上でディープラーニングを実行できるため、オフラインでも利用できます。

インターネット環境が整っていない場所や通信環境が不安定な場所でも、データ分析できる点がメリットです。また、クラウドへのデータ送信が不要になることで、通信コストも削減できます。

特に、カメラ映像などの大容量のデータを扱う場合や、多数のデバイスを同時に運用する場合には、大きなコスト削減効果が期待できるでしょう。

DoTの活用例

DoTは、幅広い分野で私たちの生活やビジネスに大きな変化をもたらすことが期待されています。

主な4つの分野の活用例を見ていきましょう。

家電

生活に身近なDoTの活用例の1つに、スマート家電が挙げられます。

DoTを搭載した家電は、利用者の生活パターンを学習し、自動的に最適な設定や動作が可能です。

例えば、エアコンが室内の人数や活動量を検知し、住人の好みや外部環境に応じて温度や風量を調整して省エネと快適性を両立させます。また、冷蔵庫が食材の消費パターンを予測し、消費期限を通知したり、買い物リストを提案したりすることも可能です。

このように、DoTによって家電は単なる機械から、私たちの生活をより豊かにするパートナーへの進化が期待されます。

医療

DoTの即時性と高度な分析能力は、医療分野でも活用が期待されています。

例えば、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスで、心拍や血圧などの生体データをリアルタイムに分析し、重大な疾患リスクの早期発見が可能です。また、ポータブルな医療機器がその場で医療画像を解析し、緊急性の高い症例を即座に検出することもできるでしょう。

このようにDoTは、人の命や健康に関わる医療現場で、診断のスピードと精度の向上に貢献します。

農業

農業分野では、現在でもIoTの活用が進んでいますが、DoTによってさらなるスマート化が実現可能です。

例えば、ドローンやカメラで撮影した画像から、作物の生育状態や病害虫の発生をリアルタイムで分析し、農薬散布や収穫を支援します。また、環境センサーで気象や土壌のデータを即座に分析して最適な水やりや施肥のタイミングを判断し、収穫量の最大化を図ることも可能です。

このように、DoTは農業の生産性を高め、人手不足や食糧問題の解決に貢献することが期待されています。

自動運転

段階的に実用化が広がりつつある自動運転技術のさらなる進歩にも、DoTの活用が期待されます。

自動運転では、一瞬の判断ミスが重大な事故につながる可能性があるため、即時処理が欠かせません。

例えば、車載カメラやセンサーから取得したデータをその場で分析し、瞬時に歩行者や他の車両、信号などを認識して安全な運転操作が可能です。また、周辺環境の変化や交通状況を学習して、よりスムーズなルート選択を行えます。

このように、DoTは通信遅延の影響を受けず即時に判断できるため、自動運転のさらなる発展への貢献が期待されます。

DoTの課題

ここまで見てきたように、DoTはさまざまな分野で新たな可能性をもたらす技術ですが、普及に向けてはいくつかの課題があります。

3つの主な課題を解説します。

エッジデバイスの計算能力

課題の1つ目は、計算能力の問題です。

DoTがエッジデバイス上でディープラーニングを活用するためには、高い計算能力が必要です。しかし、エッジデバイスの多くは小型・軽量であるため、搭載できる処理装置には限界があります。

DoTが広く普及するためには、高性能な専用チップの開発や、ディープラーニングモデルの軽量化などの技術の進化が必要です。

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電力供給の問題

2つ目の課題は、電力供給の問題です。

ディープラーニングのような複雑な計算には、多くの電力を消費します。そのため、バッテリー駆動や限られた電力供給で動作するDoTでは、電力供給は無視できない課題です。特に、大量のデバイス利用や24時間365日の連続稼働が求められる現場では、問題が顕著になるでしょう。

課題解決のためには、低消費電力のハードウェアや、効率的なアルゴリズムの開発が求められます。

プライバシーやセキュリティの懸念

最後は、プライバシーやセキュリティの懸念です。

DoTではエッジデバイス上でデータを処理するため、クラウドとの通信による情報漏えいのリスクは軽減されます。一方で、デバイス自体が不正アクセスや盗難を受けた場合、内部に保存された機密情報や学習済みモデルが流出するリスクがある点に注意が必要です。

PCや社内ネットワークだけでなく、エッジデバイスに対しても堅牢なセキュリティ対策を施すことが求められます。

まとめ|DoTは未来を便利で快適にする技術

DoT(Deep Learning of Things)は、エッジデバイス上にディープラーニングを組み込むことで、データの収集から分析、判断までをその場で完結させる技術です。

リアルタイムで高度な分析や予測が可能となり、家電や医療、農業、自動運転など、多くの分野での活用が期待されています。計算能力や電力供給、セキュリティなど、克服すべき課題もありますが、技術の進歩で着実に解決に向かっていくでしょう。

DoTは、私たちの生活やビジネスの未来を便利で快適にする技術として、さらなる発展が期待されます。

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