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グリーンITとは?サステナビリティに貢献する取り組みや技術を解説

コラム

掲載日:2024/11/29

ITは現代社会に欠かせない存在です。しかし、多くの電子機器や電力を必要とするため、環境負荷は無視できません。

グリーンITは、IT自体の環境負荷を低減し、さらにITを活用してさまざまな産業のサステナビリティにも貢献する取り組みです。

本記事では、グリーンITの基礎知識やサステナビリティとの関係、取り組みの具体例、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。

グリーンITとは

「グリーンIT」とは、情報技術(IT)によって、温室効果ガスなどの環境負荷を低減する取り組みのことです。

グリーンITの概念は新しいものではなく、2000年代に注目を集め、2007年に経済産業省が提唱した「グリーンITイニシアティブ」によって広く認知されました。近年の気候変動やエネルギー問題の深刻化に伴い、グリーンITは企業が社会的責任を果たすための重要な取り組みとなっています。

参考:経済産業書|グリーンITについて

グリーンITの2つの側面

グリーンITには、大きく以下の2つの側面があります。

● Green of IT:ITが環境に与える負荷の低減
● Green by IT:ITを駆使して環境負荷を低減

それぞれの概要を見ていきましょう。

Green of IT|ITが環境に与える負荷の低減

「Green of IT」は、ITそのものが環境に与える負荷を減らすことを目指す取り組みです。

例えば、IT機器の稼働にかかる消費電力の削減や機器のライフサイクル管理、リサイクル推進などが挙げられます。また、オンプレミス環境からクラウドへ移行することで、エネルギー消費量を平均で約80%削減できるという調査結果もあります。

環境にやさしいITインフラを構築・活用することで、ITによる環境負荷を最小限に抑えることが重要です。

参考:AWS|「クラウドへの移行によるCO2削減効果」に関するレポートが公表されました

Green by IT|ITを駆使して環境負荷を低減

「Green by IT」は、IT技術を駆使して他の産業や活動の環境負荷を減らす取り組みです。

例えば、IT技術を活用したエネルギー管理の効率化や物流の最適化、働き方の変革などが挙げられるでしょう。今やITはあらゆる業界・業種で活用されており、その技術を通じて、社会全体のグリーン化を推進する役割が期待されています。

サステナビリティとは

「サステナビリティ」は、日本語では「持続可能性」と訳されます。環境・社会・経済のバランスを保ちながら、現在だけでなく未来の世代も豊かに生きられるようにするという概念です。

国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資の考え方が広まり、社会全体のサステナビリティへの関心が高まっています。企業が社会的な信頼を得て長期的な成長を図る上で、環境に配慮した事業運営は欠かせない要素の1つです。

グリーンITとサステナビリティの関係

グリーンITは、サステナビリティを実現するための手段の1つです。

ITの活用によってサステナビリティの実現に貢献する一方で、IT自体が多くの電力消費を伴う問題も抱えています。近年では、膨大な計算処理を必要とする生成AIや、ビットコインのマイニングなどによる、データセンターの電力消費が問題となっていることをご存じの方も多いでしょう。

このように、ITは自らが環境負荷をかける側面と、他の産業の環境負荷を低減する側面を併せ持っています。グリーンITは、Green of ITによって環境に与える負荷を最小限に抑えつつ、Green by ITによりITの力を最大限に活かすことで、サステナビリティの実現を目指す取り組みです。

サステナビリティに貢献するグリーンITの身近な取り組みの具体例

グリーンITとサステナビリティの意味や関係がわかったところで、Green of ITとGreen by ITの身近な取り組みの具体例を見ていきましょう。

Green of ITの取り組み例

まずは、ITそのものの環境負荷を低減するGreen of ITの2つの取り組み例を紹介します。

IT機器の消費電力削減

IT機器の消費電力削減は、もっとも身近に取り組めるグリーンITの1つです。
例えば、エネルギー効率の高いプロセッサや低消費電力のハードウェアを導入することで、電力消費を効果的に削減できます。また、仮想化技術を活用したデータセンターへの移行によってサーバーの稼働台数を減らし、エネルギー効率を向上させることが可能です。
これらの取り組みにより、IT機器に使う電力消費を減らし、温室効果ガスの削減に貢献します。

IT機器の廃棄物削減

IT機器の廃棄物削減は、処理時に発生する温室効果ガスや有害物質の削減のための重要な取り組みです。
例えば、不要になったIT機器をリサイクルやリユースすることで、廃棄物の量を減らし、資源を有効活用できます。また、高品質な部品を使用してソフトウェアアップデートによる機能拡張を行うことで、製品の寿命を延ばすことも効果的です。
リサイクル・リユースや買い替えサイクルの延伸は、廃棄時だけでなく製造過程で発生する温室効果ガスの削減にもつながります。

Green by ITの取り組み例

続いて、ITを活用して環境負荷を低減するGreen by ITの2つの取り組み例を紹介します。

ペーパーレス化

ペーパーレス化は、IT技術を活用して紙の使用量を減らす取り組みです。
例えば、クラウドストレージや電子決裁システム、タブレットなどの活用により、紙の印刷や資料配布を削減できます。これにより、森林資源の保護や紙の廃棄に伴う温室効果ガスの削減が可能です。
また、企業にとっては環境負荷の低減だけでなく、コスト削減や業務効率の向上などのメリットも得られます。

テレワークの推進

テレワークの推進も、環境負荷の削減につながる重要な取り組みの1つです。
テレワークにより、自宅で仕事ができるようになり、通勤に伴う温室効果ガスの排出を削減できます。また、オフィスの空調や照明の使用を減らすことにもつながり、エネルギー消費を抑えることが可能です。
また、テレワークはワークライフバランスの向上や多様な人材の活用の効果も期待できます。

グリーンITが企業にもたらすメリットとデメリット

グリーンITは、環境負荷軽減という社会的な意義があると同時に、企業にとってメリットをもたらす取り組みでもあります。一方で、グリーンITの推進にはデメリットや課題があることも事実です。

グリーンITが企業にもたらすメリットとデメリットを紹介します。

グリーンITのメリット

まずは、企業がグリーンITの取り組みで得られる、3つのメリットを見ていきましょう。
1つ目は、企業イメージの向上です。グリーンITへの積極的な取り組みは、環境意識の高い消費者からの支持を得られ、ESG投資の対象としての評価も高まります。
2つ目は、コスト削減です。省エネ化による電気料金の削減や、ペーパーレス化やリモートワークの推進による、オフィスコストの削減が期待できます。
3つ目は、新たなビジネスの創出です。グリーンITの取り組みが、環境技術関連の新たな事業展開のきっかけになる可能性があります。
このように、グリーンITの取り組みは環境負荷低減だけでなく、企業にとっても多くのメリットをもたらす取り組みです。

グリーンITのデメリット

メリットの一方で、グリーンITの推進には、デメリットや課題もあります。
1つ目は、初期投資の負担が大きいことです。エネルギー効率の高いIT機器への入れ替えやIT活用の施策には初期投資が必要なため、特に中小企業にとっては負担になります。
2つ目は、技術的な課題です。グリーンIT製品は、従来の製品に比べて性能や信頼性が劣る場合があり、業務に支障をきたす可能性があります。
3つ目は、システムや業務プロセスの変更による影響です。グリーンITのために既存のシステムや業務プロセスを変更する際には、一時的な生産性低下や教育コストの発生を受け入れる必要があります。
こうしたデメリットを克服するためには、長期的な視点で計画的にグリーンITに取り組むことが重要です。

技術進歩がもたらすグリーンITの新しい展望

グリーンITの広がりとともに、環境負荷の低減を実現するための技術や製品が次々と生まれています。

グリーンITとサステナビリティに貢献する新しい技術動向を紹介します。

次世代の冷却技術による持続可能なデータセンターへの転換

データセンターは膨大な電力を消費するため、温室効果ガスの大きな排出源の1つです。

そんなデータセンターで、機器が発する熱を効率的に排出する技術として、サーバー全体を液体に浸す「液浸冷却」が注目されています。液浸冷却は、機器を直接冷却することで、大幅なエネルギー効率の向上を実現した技術です。
再生可能エネルギーと組み合わせることで、データセンターの環境負荷低減に貢献する技術として期待されています。

AIとIoTによるスマートシティの推進

AIとIoTを活用したスマートシティは、グリーンITによってサステナビリティを実現する事例の1つです。
例えば、さまざまな場所にIoTセンサーを設置し、収集したデータをAIで分析することで、エネルギー消費量をリアルタイムで把握して最適なエネルギー管理を実現します。新技術を駆使して無駄なエネルギー消費を抑えつつ、快適な生活の確保が可能です。

グリーンITが交通や物流、行政サービスなど幅広い分野に広がることで、持続可能な都市の実現が期待されます。

まとめ|グリーンITでサステナビリティの実現に貢献

グリーンITは、ITを活用して、温室効果ガスなどの環境負荷を低減し、サステナビリティに貢献する取り組みです。

グリーンITには、ITそのものの環境負荷を低減するGreen of ITと、ITを活用して環境負荷を低減するGreen by ITの2つの側面があります。企業はグリーンITに取り組むことで、環境負荷低減だけでなく、企業イメージの向上やコスト削減、ビジネス機会の創出などの効果も期待できるでしょう。一方で、初期投資の負担や技術的な課題もあるため、長期的な視点で計画的に取り組むことが重要です。

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