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モダナイゼーションとは?4つの手法と失敗しないポイントを解説

コラム

掲載日:2024/11/26

ビジネスを取り巻く環境は日々変化しており、スピードをもって対応していくためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が欠かせないと言われています。しかし、長年運用されてきたレガシーシステムでは、イノベーションの足かせとなり、ビジネスチャンスを逃す原因にもなりかねません。

その解決策の1つが、レガシーシステムを改善・刷新して現代化する「モダナイゼーション」です。本記事では、モダナイゼーションの意味からメリット、手法、成功のポイントまでをわかりやすく解説します。

モダナイゼーションとは

モダナイゼーションとは、企業が抱える老朽化したレガシーシステムを、最新の技術やプラットフォームに改善・刷新する取り組みのことです。「現代化」を意味する「Modernize(モダナイズ)」が語源となっています。

モダナイゼーションの対象となるレガシーシステムとは、主にメインフレームやCOBOLなどの古い技術で構築されたシステムを指します。経済産業省が2018年に公表したDXレポートで「2025年の崖」として警鐘を鳴らしたことで、レガシーシステムのリスクへの注目が高まりました。

同レポートでは、変化の激しいデジタル時代に適応し、競争力を維持・向上するためには、レガシーシステムからの脱却が不可欠であるとされています。

参考:経済産業省|DXレポート(サマリー)

モダナイゼーションとマイグレーションの違い

モダナイゼーションと混同されやすい用語にマイグレーションがあります。

モダナイゼーションが先述のとおりシステム全体の改善・刷新を意味するのに対し、マイグレーションはデータや機能を別の環境へ移行することを指す用語です。

モダナイゼーションには、マイグレーションを伴うことも少なくありません。ただし、単なる移行ではなく、最新の技術やアーキテクチャに適合させてシステムの現代化を図る点が特徴です。

モダナイゼーションとDXの違い

モダナイゼーションとDX(デジタルトランスフォーメーション)は何が違うのか、よくわからないという方もいるかもしれません。

DXは、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセスを根本から変革する取り組みを指します。一方、モダナイゼーションは、DXの足かせとなる老朽化したレガシーシステムを改善・刷新することです。

つまり、モダナイゼーションは、レガシーシステムを抱える企業がDXを効果的に進めるために欠かせない手段の1つといえます。

レガシーシステムを使い続けると生じる問題

レガシーシステムは、なぜモダナイズする必要があるのでしょうか?

レガシーシステムを使い続けると生じる3つの問題を解説します。

システムの老朽化による保守コストの増大

老朽化したレガシーシステムを使い続けることの問題の1つは、保守コストの増大です。

ハードウェア面では、古い部品の入手が困難となり、修理や交換の費用が上昇します。また、ソフトウェア面では、長年にわたるメンテナンスで複雑化したプログラムの読解や修正に多大な時間と労力が必要です。その結果、バグ修正や機能追加のコストも増大します。

先に挙げた「DXレポート」では、システム維持費がIT予算の9割以上を占め、DXの足かせとなるリスクがあると警告されました。

古い技術に精通した技術者の確保が困難

古い技術に精通した技術者の確保が困難になることも、レガシーシステムを使い続けると生じる問題の1つです。

レガシーシステムで使われている、メインフレームやCOBOLなどの古い技術を知る技術者は、高齢化や定年により年々減少しています。一方、若手エンジニアは将来性の高い最新の技術の習得を優先し、古い技術の新たな担い手は少ないのが現実です。

その結果、限られた技術者の確保はますます困難となり、やがてレガシーシステムの維持が立ち行かなくなる可能性もあります。

ビジネスの柔軟性と競争力の低下

新たなビジネス要件や市場の変化への迅速な対応が困難な点も、レガシーシステムの大きな問題です。

レガシーシステムは、新たなサービスの導入や改善に多くの時間とコストがかかるうえ、技術的にできることも限られます。その結果、ビジネスチャンスを逃すリスクが高まるでしょう。また、クラウドやAIなどの最新技術の導入も難しく、DXを進める競合他社との格差が拡大します。

このように、レガシーシステムを使い続けることはビジネスの柔軟性を阻害し、競争力の低下を招く要因となります。

モダナイゼーションのメリット

多くの問題を抱えるレガシーシステムを、現代の技術でモダナイズすることは、多くのメリットをもたらします。

代表的な3つのメリットを見ていきましょう。

レガシーシステムの利用によって生じる問題の解消

モダナイゼーションによって、先に挙げたレガシーシステムを使い続けることで生じる問題の多くを解消可能です。

最新の機器やプログラミング言語、アーキテクチャへの改善・刷新により、保守コストの増加や技術者不足の問題に対処できます。また、現代的な技術の採用により、アジャイル開発や自動化などの手法を採用でき、ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応できるようになるでしょう。

このようにモダナイゼーションは、レガシーシステムが抱える問題を解消し、企業の成長を加速させる効果が期待できます。

セキュリティの強化

モダナイゼーションは、セキュリティ強化にも有効です。

レガシーシステムは、最新のサイバー攻撃に対して十分な防御を施すことが難しく、企業の情報資産が危険にさらされるリスクが高まります。モダナイゼーションによってシステムを改善・刷新することで、最新の技術を導入し、セキュリティレベルを引き上げることが可能です。

その結果、データ漏えいや不正アクセスのリスクを低減し、企業の信頼性向上が期待できるでしょう。

ユーザー満足度の向上

システムを利用するユーザーの満足度向上も、モダナイゼーションのメリットの1つです。

レガシーシステムは往々にして使いづらく、処理も遅いため、ユーザーがフラストレーションを感じる原因となります。モダナイゼーションによって最新の技術を採用することで、直感的で使いやすく即時性の高いサービスの提供が可能になります。

結果として、システムの利用率が向上し、より効果的なシステム活用が促進されるでしょう。

モダナイゼーションの主な手法

レガシーシステムが抱える問題を解消するためのモダナイゼーションには、いくつかの手法があります。

代表的な4つの手法を解説します。

リライト

リライトは、システムの機能は変更せずに、コードなどの内部構造を見直す手法です。

例えば、COBOLで書かれたレガシーシステムをJavaなどの言語に書き換えるケースが挙げられます。リライトにより、技術者不足の解消や保守性が向上する効果が期待できるでしょう。

一方で、アーキテクチャの根本的な問題は解決できない場合が多いため、注意が必要です。

リビルド

リビルドは、現行システムの機能要件を踏襲しながら、最新の技術を使ってシステムを作り直す手法です。

例えば、古い手続き型のCOBOLで書かれたシステムを設計し直し、オブジェクト指向のネイティブなJavaで作り直すケースが挙げられます。

複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムを紐解くためには、多大な時間とコストが必要です。しかし、成功すれば改善効果は大きく、システムの柔軟性や効率性の大幅な向上が期待できるでしょう。

リホスト(リプラットフォーム)

リホスト(リプラットフォーム)は、既存システムのコードはそのままで、新しいインフラ(プラットフォーム)に移行する手法です。

例えば、メインフレームで稼働するCOBOLシステムのコードやアーキテクチャを、そのままクラウドへ移行するケースが挙げられます。一から設計し直すリビルドに比べて時間やコストを抑えた手法といえるでしょう。

ただし、リホストでは既存の技術的課題や技術者不足の問題は、そのまま引き継がれる点に注意が必要です。

リプレース

リプレースは、既存のレガシーシステムを完全に新しいシステムに置き換える、もっとも大掛かりな手法です。

業務機能の見直しや新技術の導入を図ることで、モダナイゼーションの効果を最大限に享受できます。一方で、システムの全面刷新と業務プロセスの再構築を行うため難易度が高く、多くの時間とコストがかかり、途中でプロジェクトが頓挫するケースも少なくありません。

クラウドサービスやパッケージをうまく活用すれば、期間短縮やコスト削減が可能です。

モダナイゼーションに失敗しないためのポイント

既存のシステムを改善・刷新するモダナイゼーションは簡単な作業と考えられがちですが、決してそんなことはありません。

モダナイゼーションに失敗しないための3つのポイントを紹介します。

要件定義を軽視しない

1つ目のポイントは、要件定義を軽視しないことです。

既存システムがベースにあるからといって、モダナイゼーションの要件定義を軽視すると、後工程で痛い目に遭うことになります。レガシーシステムは仕様が複雑でブラックボックス化していることが多いため、要件定義を怠ると、抜け漏れや認識のズレにつながりかねません。

特にリビルドやリプレースの場合には、単純な現行踏襲ではなく、新システムをどう作るかを丁寧に要件定義することが重要です。

一気に全部をモダナイズしようとしない

2つ目のポイントは、一気に全部をモダナイズしようとしないことです。

レガシーシステムは、長年のメンテナンスで複雑化していることが多く、中身を紐解いて改善・刷新する作業は容易ではありません。一気にすべてモダナイズすると、予期せぬトラブルでシステム全体が停止してしまうリスクがあります。

段階的なアプローチを取ることで、リスクを抑えつつノウハウを蓄積して成功率を高められるでしょう。

「システムを置き換えるだけ」とリスクを甘く見ない

最後のポイントは、モダナイゼーションのリスクを甘く見ないことです。

特にシステム開発に携わったことのない経営層などは、モダナイゼーションを「単にシステムを置き換えるだけ」とリスクを甘く見る傾向にあります。複雑化・肥大化したレガシーシステムは、機能をそのまま移行するだけでも大変な作業です。

モダナイゼーションの成功には、ステークホルダーとリスクを共有し、十分な予算と開発・テストの期間を確保して臨むことが欠かせません。

まとめ|モダナイゼーションで競争力を強化

モダナイゼーションは、企業が持つレガシーシステムを最新の技術やプラットフォームに改善・刷新することです。

保守コストの増大や技術者確保の困難などの問題を抱えるレガシーシステムの改善・刷新により、技術的負債を解消し、ビジネスの柔軟性や競争力を高められます。モダナイゼーションを成功させるためには、リスクを軽視せず、段階的なアプローチを取ることが有効です。

SBテクノロジーには、モダナイゼーションに関わるプロジェクトも多くあります。一緒にシステムを生まれ変わらせる喜びを味わってみませんか?

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