
DXコンサルタントは、DXを活用して企業の経営課題解決に導く職業です。DXの推進とともに需要が高まっています。本記事では、DXの概念や仕事内容、将来性、キャリアアップに必要なスキルについて解説します。

国策として推進されているDXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITやAI、ビッグデータといったデジタル技術を使って新たなビジネスモデルを生みだすことです。新たなビジネスモデルとは、これまでの価値観や枠組みを覆すようなイノベーションをもたらすものとされており、業務フローの抜本的改善や企業風土の変革もDXに含まれます。
本来、DXはビジネス領域に限らず、デジタル技術により人々の生活を豊かなものへと変える意味を持っていました。しかし現代はデジタル技術の進歩により、変化の激しい時代へと突入しています。この時代で市場の変化に対応するためにも、DXは重要なテーマになっているのです。
DXに関連する用語
DXに関連する用語に、デジタイゼーションとデジタライゼーションがあります。デジタイゼーションとは、局所的に情報をデジタル化することを指します。一方、デジタライゼーションとは、プロセス全体をデジタル化することです。
例えば、ペンで記入していた帳票をPCを使って入力することは、デジタイゼーションとなり、入力したデータをオンライン上で管理することは、デジタライゼーションです。その結果、オンライン上でデータ管理をする文化が浸透すればDXとなります。3つの用語には関係性があることを理解しましょう。
DXコンサルタントの必要性
DXとは新しいビジネスモデルを生みだすことですが、そのカギを握るのはデジタル技術です。デジタル技術を使うことで、新たな価値観を創造できたり、業務効率が向上したりといった効果があります。しかし、デジタル技術を持った人材は、どこの企業にでもいるわけではありません。デジタル技術を持っていても、DXを推進する能力がないケースもあります。そこで求められているのがDXコンサルタントです。
DXコンサルタントが企業にはないDXの知見によりコンサルティングをすれば、企業のDXを推進できます。それにより、新たなビジネスモデルの構築や生産性向上につながるでしょう。

DXコンサルタントの役割や仕事内容
DXコンサルタントの役割は、企業のDXを活用した経営課題の解決です。デジタル技術を用いた新しいビジネスモデルを生みだしながら、中長期的に企業の経営課題を解決します。経営課題を解決する点では、一般的なコンサルティングと大きな違いはありません。具体的な仕事内容は、次の通りです。
● デジタル技術を活用したビジョンの提案戦略
● DX推進のサポート
● 人材育成
ここでは、DXコンサルタントの仕事内容について解説します。
1.デジタル技術を活用したビジョンの提案戦略
企業に対し、デジタル技術を使ったビジョンを提案します。DXコンサルタントには、アドバイスをするだけではなく、視野を広げ革新的なアイデアを創出する役割が求められています。中長期的な戦略を立案し、将来像を設定するのは、一般的なコンサルティングと同様です。
「企業がデジタルとどのように向き合うのか」を示し、組織としてDXを推進することが求められます。場合によっては、組織構成や体制の見直しも必要です。
2.DX推進のサポート
DX推進のサポートもDXコンサルタントの仕事です。DXを推進する際は、ユースケースを作成し、アイデアの仕組みを提示するケースがあります。ユースケースとは、ソフトウェアの設計時に使用する図解術で、システムがどのように役割を果たし、機能するのかを表したものです。
ユースケースを作ることで、企業側がDXコンサルタントの意図を理解でき、DX推進を効率的に進められます。コンサルティングをする企業にシステム開発に長けた人材がいない場合、DXコンサルタントがシステム開発から導入、保守といったDX推進全般をサポートします。
3.人材育成
一般的なコンサルティングと同様に、人材育成もDXコンサルタントの仕事のひとつです。DXを推進するためには、デジタル技術を活用できる人材が欠かせません。DXを推進するための人材も必要です。DXの推進には、以下の職種に該当する人材が求められています。
● プロデューサー:DX推進のリーダー
● ビジネスデザイナー:DXの推進や管理
● アーキテクト:システム基盤の設計
● データサイエンティスト:データ分析
● UXデザイナー:製品やサービスのUXを設計
● エンジニア:システム開発
リーダーであるプロデューサーや、DX推進や管理をするビジネスデザイナーについては、特にDXコンサルタントが育成すべき人材です。専門の技術習得が必要なアーキテクトやデータサイエンティスト、UXデザイナー、エンジニアについては、技術を持った人材を採用する場合もあります。企業の人材を見極めたうえで、育成に取り組みましょう。

DXコンサルタントの将来性
DXコンサルタントの将来性は以下の3つが影響してきます。
● 労働人口の減少
● 消費者行動の変化
● 既存システムの不具合
これらの事象により、DXが求められるようになっています。労働人口の減少は、DXが求められるようになった理由として真っ先に挙げられるものです。日本は高齢化が加速しており、それに伴い労働人口も減少しています。労働人口減少による人手不足を解消するためにも、業務効率化を狙いとしたDXが求められているのです。
消費者行動はこれまでの商品を購入する「モノ消費」から、サブスクリプションサービスをはじめとした「コト消費」へと変化しています。
支払い方法も現金からキャッシュレスへと移行する流れとなっており、DXは欠かせないものとなっています。システムの変化も必要です。既存の古いシステムは老朽化やブラックボックス化が懸念事項となっています。デジタル技術の進歩により快適なシステムが求められていることも、DXの活用及びDXコンサルタントの必要性が今後ますます見込まれるでしょう。

DXコンサルタントのキャリアアップに必要なスキルや資格とは
DXコンサルタントとしてキャリアアップするためには、求められているスキルを向上させる必要があります。DXの知識をつけるだけでは、DXコンサルタントのスキルが高いとはいえません。コンサルタントとして、経営課題を解決に導く能力やコミュニケーション能力が必要です。ここでは、DXコンサルタントのキャリアアップに必要なスキルや資格について解説します。
必要なスキル1.経営課題を解決に導く能力
コンサルタントである以上、経営課題を解決する能力は必須です。DXコンサルタントは、経営課題を解決する手法として、DXを活用することが求められています。DXはあくまでも手法のため、コンサルタントとして経営課題を解決する能力がなければキャリアアップは望めないでしょう。
経営課題を解決に導く能力を分解すると、リーダーシップや提案力が挙げられます。提案力には分析力や仮説構築能力も含まれます。
企業の状況や抱えている人材、市場といった情報を分析し、企業に適した提案を提示できなければ、企業から信頼されません。企業に納得してもらえるだけの提案を提示し、課題を解決に導く力が求められています。
必要なスキル2.コミュニケーション能力
コンサルティングをするうえで、コミュニケーション能力は欠かせません。経営課題を分析するには、情報収集が必要です。DXコンサルタントに必要なコミュニケーション能力には、ヒアリング能力と説明力があります。ヒアリングは生の情報を入手できる情報収集方法です。コンサルティングする企業の従業員が「何を感じているのか」「何が不満なのか」「どうなりたいのか」を引き出すためにも、ヒアリング能力は重要なものといえるでしょう。
また、考えた提案を説明する力も必要です。日本でDX化が進まない要因として、これまでの慣習を変えたがらないことが挙げられます。さまざまな世代の従業員が在籍する企業や、テレワークへの移行が遅れている企業では、なかなか提案を受け入れてもらえない可能性が考えられます。考え方の異なる人に対し、納得してもらえるような説明をする能力も求められているのです。
必要な資格
DXコンサルタントをするうえで必要な資格はありません。あくまでもスキルや経験、知識が重要です。ただし、取得により転職や案件の獲得に有利となる資格は存在します。代表的な資格は「DX検定」です。DX検定は、日本イノベーション融合学会ITBT検定委員会が発行する資格で、DXに関する知識を問われます。
スコアに応じてスタンダード、エキスパート、プロフェッショナルの3つのレベルに分けられ、2年間有効となる「レベル認定証」が発行され、名刺やプロフィールへの掲載が許可されています。DXの知識があることをアピールできるため、取得して損はない資格です。

まとめ: DX推進で需要が高まるDXコンサルタント
DXとはデジタル技術を活用し、新たなビジネスモデルを生みだすことです。デジタル技術の進歩により、変化の激しい時代へと突入している現代では、DX推進の需要が高まっています。労働人口の減少や、消費者行動の変化、既存システムの不具合といった課題に対応するためにも、DXが必要とされています。
DXコンサルタントの役割は、DXを活用した経営課題の解決です。そのためには、デジタル技術を活用したビジョンの提案やDX推進のサポート、人材育成といった仕事が求められています。DXコンサルタントとしてキャリアアップするためには、DXの知識をつけるだけではいけません。コンサルタントとして、経営課題を解決に導く能力や、コミュニケーション能力が必要です。DXの推進とともにDXコンサルタントの需要や価値も高まるでしょう。