掲載日:2024/9/5

システム運用は、システムを日夜監視し、安定的なシステム稼働を支える重要な業務です。障害発生時には、最初にアラートを検知して初期対応やエスカレーションを行う役割も担います。本記事では、システム運用の概要から主な業務、生産性向上のポイント、求められるスキル・資格までを解説します。システム運用に興味をお持ちの方は、ぜひご一読ください。
システム運用とは

システム運用とは、システムを日常的に監視し、障害の未然防止や万一障害が発生した際の初期対応を行い、安定稼働を維持する業務のことです。システム運用管理とも呼ばれます。
企業や組織でのIT活用が欠かせない現代において、システムのダウンタイムを最小限に抑え、業務の継続性を確保するシステム運用は不可欠です。システムの安定稼働は、顧客満足度の向上やセキュリティ強化、競争優位の確保にもつながります。
このように、システム運用は企業の信頼性を支える重要な役割を担う業務です。
システム保守との違い
システム運用と混同して使われることが多い用語に『システム保守』があります。
一般的に、システム運用は先述のとおり、日常的にシステムを監視して安定稼働を維持することが主な役割です。一方でシステム保守は、障害発生時の対処やメンテナンス、システム改善などを担います。
このように、システム運用と保守は異なる役割を持ちますが、実際の現場での境界線は必ずしも明確ではありません。両者の業務は密接に関連しており、『システム運用保守』として両方の役割を兼任するケースもあります。組織や現場によって役割分担の違いはあるものの、運用と保守のスムーズな連携が重要であることに違いはありません。
システム運用の主な業務一覧

システム運用の担当者は、システムの安定稼働を支えるために、日常的な監視や緊急時の対応などの業務を担います。その中から代表的な、3つの業務を解説します。
システム監視
システム監視は、システム運用の中心的な業務です。
システム監視では、システムの稼働状況をリアルタイムで監視し、異常や障害の兆候を素早く検知します。それにより、障害を未然に防いだり、異常を早期に発見して適切に対処したりすることが可能です。
具体的には、以下のようなタスクがあります。
● サーバーリソース(CPU・メモリ・ディスク容量など)の使用率監視
● ネットワークトラフィックの監視
● アプリケーションの応答時間やエラーログの監視
こうした活動により、システムの状態を常に把握し、問題の早期発見・解決を実現しています。
トラブルの初期対応とエスカレーション
トラブルへの迅速な初期対応と保守チームへのエスカレーションも、システム運用の重要な業務の1つです。
検知した障害に対して必要な初期対応を行い、速やかに保守チームへ障害の内容や初期対応の状況を報告します。それにより、システムのダウンタイムを最小限に抑えて、ビジネスへの影響を軽減することが可能です。
具体的には、以下のようなタスクがあります。
● アラート検知後の問題の切り分け
● マニュアルに沿った初期対応と保守チームへのエスカレーション
● 保守チームと連携して問題解決をサポート
これらの活動により、障害の影響を最小限に抑え、システムの安定運用の維持に貢献します。
バックアップとリカバリ
バックアップとリカバリもシステム安定稼働のための重要な業務です。
バックアップは、障害や災害によるデータ消失のリスクを軽減し、迅速にデータ復旧して業務への影響を最小限に抑えるために欠かせません。多くの場合、バックアップは自動で取得され、システム運用の担当者はデータの管理や復旧手順の実行を担います。
具体的には、以下のようなタスクがあります。
● バックアップスケジュールの実行と監視
● バックアップデータの管理と定期的な復旧訓練の実施
● 障害や災害時のリカバリ手順の実行
データはビジネスの生命線であり、適切なバックアップとリカバリ体制の確立は事業継続性の観点からたいへん重要です。
システム運用の生産性を高めるポイント

システム運用の業務は、工夫やツールの活用によって生産性を高めることが可能です。システム運用の生産性を高める3つのポイントを解説します。
運用手順の標準化と可視化
システム運用の品質や効率を高めて生産性を向上させるためには、運用手順の標準化とシステム状況の可視化が重要です。
標準化の代表的な方法には、詳細な運用フローやマニュアルの作成があります。運用手順の標準化により、システム運用の知識やノウハウの属人化を防ぎ、組織的な運用品質の確保が可能です。
また、可視化には、システムの動きを人間が理解しやすく表示するダッシュボードの導入が役立ちます。可視化により、システムの状況をリアルタイムに把握でき、効率的な管理が実現可能です。
自動化技術の導入
システム運用の生産性を大幅に向上させる施策として、自動化技術の導入も効果的です。
自動化の手法には、スクリプトによる運用コマンドの自動実行や、RPA(RoboticProcessAutomation)、RBA(RunBookAutomation)などの自動化ツールの導入があります。
定期的に行う業務やセキュリティパッチの適用など、ルーチン作業の自動化によって、作業効率の向上が期待できるでしょう。また、自動化により作業ミスが減ることで、運用品質の向上も可能です。
運用プロセスの継続的な改善
システム運用の生産性向上は、一度やって終わりではありません。変化するビジネス要件や技術環境に適応していくためには、継続的な運用プロセスの改善が不可欠です。
継続的な改善として、定期的な業務の棚卸しやチーム内でのレビュー会の開催、トラブル発生後の振り返りなどが挙げられます。
PDCAサイクルを回すことで、運用プロセスの問題点を早期発見・解決し、システムの安定稼働を継続的に維持することが可能です。
システム運用エンジニアに求められるスキル

システムの安定稼働を担うシステム運用の業務には、ITの知識に加えて、緊急時でもスムーズに業務を進めるためのソフトスキルも重要です。システム運用エンジニアとして活躍するために特に重要な3つのスキルを解説します。
サーバーやネットワークの基礎知識
システム運用の現場には通常、詳細なマニュアルが用意されています。しかし、効果的な運用を行うためには、サーバーの設定や管理、ネットワークの構成やプロトコルなどの基礎知識が必要です。
システム運用では、サーバーやネットワークに関連する問題が頻繁に発生します。基礎知識を持つことで、突発的な問題やマニュアルにないイレギュラーな事態にも柔軟に対応でき、システムの安定稼働への貢献が可能です。
サーバーやネットワークのスキルは、資格取得や開発現場での実践経験を積むことによって高められます。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力も、システム運用エンジニアに欠かせないスキルの1つです。
システム運用業務では、自チーム内での情報共有や、保守チームへの報告などが頻繁に行われます。特に障害時には、迅速かつ適切な情報連携が問題解決のスピードと質を左右する重要な要素です。そのため、システム運用エンジニアはコミュニケーション能力が欠かせません。
コミュニケーション能力を磨くためには、日頃から報連相(報告・連絡・相談)を徹底することが大切です。また、結論から話す・相手の理解度に応じた言葉を選ぶといったコミュニケーションのテクニックの活用も有効でしょう。
問題発見力と分析力
システム運用エンジニアには、システムの異常や潜在的なリスクを早期に発見し、適切に対処するための問題発見力と分析力も必要です。
障害の予兆を見逃さず、迅速に原因を分析・特定するスキルは、システムの安定稼働につながります。
問題発見力と分析力を向上させるためには、実際の障害対応の経験を積むことがもっとも効果的です。加えて、過去障害のケーススタディを使った学習や、ログ解析・モニタリングツールの習熟度を高めることもスキルアップにつながるでしょう。
システム運用に役立つ資格

システム運用エンジニアとしてのスキルアップや専門性の証明には、資格取得が有効です。システム運用に役立つ資格を、国家資格と民間資格からそれぞれ3つずつ紹介します。
まずは、国家資格です。『独立行政法人情報処理推進機構(IPA)』が主催しています。
資格名 | 説明 |
---|---|
ITサービスマネージャ(SM) | システム運用管理に関する高度な専門知識を問う資格 |
ネットワークスペシャリスト(NW) | ネットワークに関する高度な専門知識を問う資格 |
応用情報技術者(AP) | システム運用を含む幅広いIT知識と応用力を問う試験 |
続いて、民間資格です。IT製品のベンダーや業界団体などが主催しています。
資格名 | 説明 |
---|---|
シスコ技術者認定資格 | 米シスコシステムズ社が主催するネットワーク分野の国際的なベンダー資格 |
ITIL資格 | システム運用管理の考え方をまとめたガイドである『ITIL』の知識を問う国際的な資格 |
LPIC | Linuxを使ったサーバー構築や運用に関する汎用的な知識を問う国際的な資格 |
これらの資格を取得することで、システム運用の専門知識や技術力が身につくのに加え、スキル証明としてキャリアアップにも役立つでしょう。
関連記事:ネットワークエンジニアにおすすめの資格|メリットや勉強方法も解説
まとめ|システム運用は安定稼働に欠かせない重要な役割を担う仕事

システム運用は、システム監視や障害時の初期対応・エスカレーションを通じて、システムの安定稼働を支える重要な業務です。システム運用エンジニアとして活躍するためには、サーバーやネットワークなどのITスキルに加えて、緊急時にも適切に対処するためのコミュニケーション能力や問題解決力・分析力が求められます。
本記事を読んでシステム運用の仕事に興味を持った方は、紹介したスキル・資格を参考に、キャリアアップやキャリアチェンジを目指してみてはいかがでしょうか。