メインコンテンツへ

アグリテック(AgriTech)とは?概要やメリットを解説!

コラム

掲載日:2024/8/15

アグリテック(AgriTech)とは、テクノロジーを活用して農業を効率化し、生産性を高める取り組みです。日本においては気候変動への対策や、農業の後継者不足から、アグリテックへの需要が急速に高まっています。

本記事では、アグリテックの詳細を把握したいエンジニアの方に向けて、概要や求められる理由、メリット、課題について徹底解説します。アグリテックについて体系的に理解できるのはもちろん、アグリテックの導入事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

アグリテック(AgriTech)とは?

まずはアグリテックの概要や、農林水産省が推進しているスマート農業との違いを確認しましょう。

アグリテックの概要

アグリテックとは、「アグリカルチャー(農業)」と「テクノロジー(技術)」を合わせた言葉です。農作物の生産性を高めることを目的として、ICTやロボットなどのデジタル技術を活用する新たな農業の形態を指します。

日本では農業分野での高齢化が進んでおり、後継者がいないという課題があるため、アグリテックの需要が高まっています。人工知能(AI)やドローン、ロボットのほか、人工衛星を活用し、農業を効率化することが、これらの課題に対する解決策になるとして期待されているのです。

アグリテックとスマート農業との違い

スマート農業とは、農林水産省が提唱する政策の一つであり、多くの場合はアグリテックとほぼ同じ意味合いで使用されます。
参考:スマート農業-農林水産省

スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなどの先端技術を活用して、農業を行うことです。 スマート農業もアグリテックも、デジタル技術を用いて農業の生産性を向上させることを意味しているため、ほぼ同じような意味合いで使用されていることがわかるでしょう。

アグリテックが求められる理由

日本でアグリテックが求められている理由として、農業の後継者不足や気候変動への対策などが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

農業における後継者不足

昨今の日本において、農業の後継者不足は非常に深刻です。

日本における基幹的農業従事者は減少し続けており、2015年時点では175万7千人であったのに対し、2020年時点では136万3千人まで減少しました。2015年時点と比較すると約22%、2005年時点の224万1千人と比較すると、約39%減少しています。
出典:(1)基幹的農業従事者:農林水産省

上記のことから、農業における後継者不足が深刻化し、知識や技術の承継が難しくなることによって、生産性の低下を招く恐れがあるでしょう。少ない農業従事者でも効率的に農業を行えるようにするため、アグリテックが求められるようになっています。

気候変動による被害

地球温暖化の影響で異常気象が頻発していることが、農業にも大きな被害をもたらしています。

例えば、2023年夏の新潟では、猛暑や豪雨による災害によって、米の等級低下が相次ぎました。新潟を代表するブランド米であるコシヒカリは、2022年時点では1等米の比率が79.2%であったのに対し、2023年時点では3.6%にまで落ち込みました。
参考①:令和4年産米の農産物検査結果(速報値)-15ページ(1等米79.2%)
参考②:令和5年産米の農産物検査結果(速報値)-14ページ(1等米3.6%)

このことから、激しい猛暑や豪雨は農作物の生育に悪影響を及ぼし、品質低下や収穫量の減少を引き起こすことがわかります。

上記のような気候変動によるリスクを軽減するためには、気象予測などのアグリテック技術の導入が重要です。

アグリテックを導入する3つのメリット

アグリテックの導入には、以下3つのメリットがあります。
● 農作業の生産性向上・効率化が期待できる
● 新規参入が容易になる
● 環境にやさしい
それぞれ詳しく見ていきましょう。

メリット①農作業の生産性向上・効率化が期待できる

アグリテックを導入することで、農業の生産性向上や、作業効率化が期待できるでしょう。

例えば、ドローンやセンサー技術を活用することで、作物の状態をリアルタイムに把握し、農業管理の効率化が可能です。また、AIの活用やデータ分析を通じて、作物管理や生産計画を正確に行うことで、労働力の削減や生産の安定化にもつながります。

これにより、農業従事者は過剰な重労働から解放され、効率化や生産性の向上を実現できるでしょう。

メリット②新規参入が容易になる

アグリテックの導入は、新たに農業分野へ参入しようとする人々にとっても、大きなメリットです。農業のノウハウをデータ化して共有することで、農業に関する知識・経験の継承を容易にし、農業への参入障壁を大幅に下げられます。

また、農業知識や経験がなくても、AIや蓄積されたデータを活用することで、効率的に農業を行えるでしょう。さらに、都市型農業(市街地周辺での農業)の実現により、土地の面積に依存しない農業が可能になり、農業参入のハードルがより低くなると考えられます。

メリット③環境にやさしい

アグリテックの導入は、環境に対する負荷を軽減する効果もあります。AIやビッグデータを活用することで、必要なときに必要な量の肥料や農薬を散布することが可能です。これにより、肥料や農薬の使用量を減らせるでしょう。

また、最新技術の活用はCO2排出量の削減にもつながり、地球温暖化対策にも貢献できます。例えば、ドローンや自動運転トラクターのようなスマート農機具を使用すれば、効率的に農作業を行えるため、燃料消費を抑え、CO2排出量を削減できるでしょう。こうした環境への配慮は、持続可能な農業の実現にも寄与します。

アグリテックを導入する上での3つの課題

アグリテックの導入を検討する際には、以下3つの課題があることを認識しておきましょう。
● 導入コストが高い
● 技術を利用するハードルが高い
● 通信環境が不十分な可能性がある
それぞれの課題について、詳しく解説します。

課題①導入コストが高い

アグリテックの導入には、多くの初期投資が必要です。例えば無人トラクターを購入しようとする場合、1,000万円以上の費用がかかることも少なくありません。
参考:2.ロボットトラクター●価格帯(目安)-農林水産省

また農場管理システムを導入すると、導入費に加えて保守費が必要となり、ランニングコストも発生するケースがあります。これらのコストは大きな負担となる可能性が高く、特に小規模農家にとっては導入をためらう要因となるでしょう。

長期的な視点でアグリテックの費用対効果を見極め、適切なテクノロジーを利用することが求められます。

課題②技術を利用するハードルが高い

アグリテック製品は先端技術を使用して開発されているため、操作や管理には一定の知識が必要です。

しかし日本の農業従事者の約70%は65歳以上であり、新しい技術を習得し、運用することが難しいという人も多いでしょう。 参考:(1)基幹的農業従事者:農林水産省

これらの技術を利用するハードルを下げるためには、実地指導などによる人材育成が必要になると考えられます。

課題③通信環境が不十分な可能性がある

一部のアグリテック技術には、インターネットやGPSなどの通信技術を利用しているものもあります。

しかし農地が広範囲に分散している地域や山間部などにおいては、通信環境が整っていないケースがあり、この場合アグリテックの技術を十分に活用することが困難でしょう。このため、全ての農地でアグリテックのメリットを存分に享受するためには、通信インフラの整備が必要という点が大きな課題です。

将来的には、通信技術の進歩や、通信環境を問わずに利用できる技術の開発が求められています。

アグリテックの事例

最後に、アグリテックの事例について、以下の2つをご紹介します。
● アグリロボ|株式会社クボタ
● みどりモニタ|株式会社セラク
これらの事例を確認し、アグリテックの技術について理解を深めましょう。

事例①アグリロボ|株式会社クボタ

2017年から取り扱いが開始されたクボタの「アグリロボ」は、農業の自動化に大きく貢献しています。

アグリロボは自動運転機能を搭載しており、障害物の検知や作業ルートの自動生成が可能であるため、利便性と安全性が高まるでしょう。

特に、2020年に発売された「アグリロボ田植機NW8SA」は、リモコン操作で旋回から田植えまでを自動で行うことができ、高齢化や人手不足の解決に活用できるでしょう。

実際に福井県の農事組合法人では、アグリロボを導入することで、農業の効率化や若手の育成課題の解決に役立てています。

事例②みどりモニタ|株式会社セラク

セラクの「みどりモニタ」は、温度や湿度、日射量などの環境データをリアルタイムでモニタリングできるツールです。 センサーから取得したデータは「みどりボックス」を通じて、クラウド環境へ自動的に送信され、PCやスマートフォンからいつでも確認できます。そのため、何度も農地の状況を確認しに行く必要がなく、農業従事者の負担を大幅に軽減できるでしょう。

農作物の生育状況をリアルタイムに把握して、適切なタイミングでの作業を可能にすることで、収穫量の増加と品質の向上を実現します。

まとめ:アグリテックは農業の効率化を実現するテクノロジー

テクノロジーを活用して農業の効率化・省人化を目指すアグリテックは、後継者不足が深刻化する日本の農業において、需要が非常に高まっています。

農業の生産性向上や効率化が期待できることはもちろん、新規参入のハードルを下げることや、環境にやさしい点も大きな魅力といえるでしょう。

アグリテックは日本の農業において必要不可欠な技術であるため、今後の動向にもぜひ注目してみてください。

募集職種一覧
募集職種一覧