掲載日:2024/6/27

DX認定制度は経済産業省の認定制度です。この制度では、経済産業省が「デジタルによって自社のビジネスを変革するためのビジョン・戦略・体制などが整った事業者」を認定します。DX認定を受けた企業は、競合他社との競争に打ち勝てる強みを有しているため、高い将来性があるといえるでしょう。
この記事では、DX認定制度の詳細を把握したいエンジニアの方に向けて、概要やメリット、必要となるステップを解説します。ぜひ参考にしてください。
DX認定制度とは

DX認定制度を理解するためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)の概要やDX認定制度の目的・背景を把握する必要があります。ここでは、概要や制度の背景などを解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
経済産業省が2019年7月に公開したDX推進指標によれば、DXの定義は次のとおりです。
『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』
「デジタル化」や「IT化」などはDXに類似した言葉です。これらは、アナログな業務をアプリケーションなどデジタルな手段に移行することを指します。一方でDXは、単にデジタル・IT化するだけではなく、「ビジネスモデルの変革」や「競争上の優位性確立」が求められます。
経済産業省が推進するDX認定制度の目的と背景
DX認定とは、経済産業省が「デジタルによって自らのビジネスを変革するためのビジョン・戦略・体制などが整った事業者」を認定する制度です。
企業が利用している既存システムは、企業独自のカスタマイズをはじめ、長年の運用による複雑化あるいはブラックボックス化などの課題を抱えています。経済産業省が2018年に公開した「DXレポート」では、そのような既存システムの課題を解決できない場合、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性を指摘しています。いわゆる「2025年の崖」と呼ばれているもので、日本経済の将来を左右する大きな問題のひとつです。
「2025年の崖」を解決するには、複雑化あるいはブラックボックス化した既存システムを取捨選別すると同時に、DXの推進が必要となります。そのために経済産業省は、DX認定制度を運用し、企業のDXを後押ししているのです。
DX認定制度の認定基準とは

ここではDX認定制度の申請期間や認定基準、デジタルガバナンス・コードについて解説します。
DX認定制度の申請期間と認定基準
DX認定制度は、特定の申請期間などは設けられておらず1年を通していつでも申請可能です。企業規模や業種も問われないため、個人事業者を含むすべての事業者が対象となります。さらに認定申請や維持にかかる費用は無料です。
認定基準は経済産業省令で定められていますが、それらの基準に適合するかを独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が審査し、経済産業省が認定します。具体的には、下図の「DXに取り組んでいる企業(DX認定企業)」について認定を行います。
出典:DX認定制度概要|企業DX推進施策の全体像
なお、認定は2年間有効であり、更新を受けるためには認定後2年を経過する日の60日前までに認定更新申請書を提出する必要がある点には注意しましょう。
DX認定基準であるデジタルガバナンス・コードとは
デジタルガバナンス・コードとは、経営ビジョンの策定・公表など経営者に求められる対応を取りまとめたものです。「デジタル」を冠しているとおり、デジタル技術による社会的イノベーションを踏まえている点がポイントといえます。
現在、世の中に存在するあらゆるものがデジタルと融合するSociety5.0に対応する企業が、続々と生まれはじめています。その一方で、企業間の競争はグローバル化が進み、新たに誕生したビジネスモデルに既存のビジネスモデルが破壊されるデジタルディスラプションも起こりはじめました。しかし、日本企業の多くはDXへの取り組みが遅れているため、この状況が続くと、やがて競争力を失い淘汰されてしまうリスクが高まっています。
そこで、経済産業省がDXに関する自主的な取り組みを促すために、経営者に求められる対応を取りまとめたものがデジタルガバナンス・コードです。DX認定制度は「情報処理の促進に関する法律」に基づき、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。企業はデジタルガバナンス・コードに沿ったアクションを実行すれば、DXを着実に推進できます。
DX認定がもつ5つのメリットとは

DX戦略を推進できる
DX推進といっても、どのように進めるべきか経営者や担当者は悩みがちです。しかし、DX認定取得に必要な次のような項目を検討するプロセスを通じて、効率的にDX戦略を推進できます。
● 企業経営や情報処理技術活用の方向性及び戦略
● 戦略を効果的に進めるための体制や環境の整備
● 情報処理システムの課題把握
● サイバーセキュリティへの対策策定及び実施
単なる認定取得に向けたアクションに留まらず、必要なステップに沿ってDX戦略を進められる点がメリットといえるでしょう。
企業イメージの向上につながる
DX認定を取得するとDX推進ポータルのDX認定制度 認定事業者の一覧で公表されます。DX認定では厳格な審査が実施されるため、この一覧に掲載されれば、取引先はもちろん一般消費者に対しても企業イメージの向上が期待できるでしょう。
その結果、新規顧客との取引開始や既存顧客の取引増大をはじめ、採用活動などにもポジティブな効果を生み出す可能性があります。
DX認定制度のロゴマークを利用できる
経済産業省は、DX認定制度の認定を受けた事業者が自社のコーポレートサイトやパンフレットをはじめ、名刺などでアピールできるようにDX認定のロゴを公開しています。
自社サイトや名刺にDX認定ロゴを利用すれば「DX推進に積極的に取り組んでいる企業」あるいは「今後も将来性が期待できる企業」としてアピールできるでしょう。
税制優遇を受けられる
DX認定事業者になれば、DX投資促進税制を活用できる可能性があります。この税制は、DX実現に必要となるクラウド技術を活用したデジタル関連投資に対して、3〜5%の税額控除あるいは30%の特別償却を受けられるというものです。
なお、本税制を利用するためには、DX認定を受ける以外にもいくつかの認定要件をクリアする必要がある点には注意しましょう。
金融支援措置を受けられる
中小企業のDX認定事業者が日本政策金融公庫から融資を受ける場合、基準利率より低い特別利率が適用されます。また、民間金融機関から情報処理システム関連の設備資金について融資を受ける場合、中小企業信用保険法の特例を活用可能です。この特例では、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険などとは別枠で追加保証あるいは保証枠の拡大が受けられます。
このようにDX認定を受ければ資金調達がより容易になる点は、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
DX認定事業者になるために必要となるステップ

DX認定事業者になるためには、下記のステップが必要です。
ステップ | 概要 |
---|---|
経営ビジョンの策定 | 自社ビジネス状況を整理・分析し、企業の経営ビジョンを策定する。また、経営ビジョン実現に必要なビジネスモデルの方針検討を行う。 |
DX戦略の策定 | 経営ビジョンに基づくビジネスモデル実現に向けたDX戦略を立案する。主に戦略は「体制・人材育成」と「ITシステムの整備」の2つに分けられる。 |
DX戦略に関する進捗指標の決定 | 戦略の進捗管理体制を策定し、KPIを設定する。 |
経営者による情報発信 | DXに関する自社の取り組みを対外的にアピールする。 |
DX推進指標などを用いた課題把握 | DX推進指標をもとに自己分析を行う。 |
サイバーセキュリティ対策の推進 | セキュリティ監査の実施概要などをまとめる。 |
なお、経済産業省はDX認定申請にあたり必要となる準備や手順を、DX認定制度 申請要項にまとめて公開しています。
まとめ:DX認定事業者で働こう

本記事では、DX認定制度の概要やメリットに加えて、認定に必要なステップなどを解説しました。
企業が既存システムの課題を起因とする「2025年の崖」を乗り越え、持続的な成長を遂げるためには、DX推進が必要不可欠です。現在もDX推進に着手できていない企業、あるいは着手したものの計画通りに推進できていない企業は、近い将来において競合他社との競争が厳しいものになると予想されます。ビジネスパーソンとして、このような市場のトレンドやDXの重要性は抑えておきましょう。
なお、SBテクノロジー株式会社はDX認定を取得済みであり、DXを活用した業務効率化やコスト削減など自己改革に取り組んでいます。「DXに強い企業で働きたい」あるいは「顧客のDXを自らの手で推進したい」と考えている方は、ぜひ当社の中途採用サイトからエントリーをご検討ください。