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『Web3』とは? 基本的な捉え方とメリット・注意点を紹介

コラム

掲載日:2024/5/21

『Web3』(ウェブ・スリー)とは、2020年頃から注目を集めているインターネットに関する新たな概念です。『Web3』ではネットワークのあり方が大きく変化し、ユーザーにさまざまなメリットがもたらされると考えられています。

ブロックチェーン技術を用いて、データの分散化が図られていることに大きな特徴があり、多くの分野での活用が期待されています。このような新しい分野の出現は、エンジニアにとっても新しいキャリアの発見につながるでしょう。この記事では『Web3』の基本的な捉え方やメリット、想定されている課題について見ていきましょう。

『Web3』とは

『Web3』は、ブロックチェーン技術によってインターネットがさらに分散化された状態を指す言葉です。従来の中央集権型のシステムと比べて、個人が自分のデータを所有・管理できるようになることから、分散型インターネットとも言われています。

よく『Web3』と混同して使用される言葉に『Web3.0』があります。Web3.0は『Web3』とは異なる概念であり、静的な情報を伝えられるようになったWeb1.0、ブログやSNSといった双方向のやりとりが可能になったWeb2.0の流れを踏まえ、情報とどのように接していくかという概念を指します。一般的には同義語として扱われていますが、この記事では『Web3』について記載します。

ここではまず、『Web3』に関する基礎知識として、ブロックチェーン技術の仕組みとWebが発展してきた経緯について見ていきましょう。

ブロックチェーン技術とは

ブロックチェーン技術とは、ブロックと呼ばれる細かな単位で管理されたデータをチェーン(鎖)のようにつなげて保存する技術のことです。各ブロックには、取引データとともに1つ前のブロックをもとに算出されたハッシュ値が記録されています。

ハッシュ値によって、途中でデータの改ざんが行われた場合でもすぐに発見できるようになるため、ブロックチェーンでは従来よりも取引データのセキュリティが格段に強化されるのが特徴です。また、従来のように単一のシステムがデータを管理するのではなく、各端末がデータ管理を行えるようになるのも利点といえます。

複数人でデータ共有・管理が行えることで、システムダウンのリスクが大幅に低下し、システム運用のコストも抑えられるのです。

『Web3』が注目されるまでの歴史的経緯

『Web3』について理解を深めるためには、これまでのWebにおける発展の流れをつかんでおくことも大切です。ここでは、『Web3』がどのような経緯で注目されるようになったのか、Webの進化の歴史に沿って見ていきましょう。

Web1.0:静的コンテンツが主流

Web1.0はインターネットの黎明期にあたり、年代で言えば1990年代が該当します。この時代のネットワーク技術は、情報発信の主体が一部の個人や企業に限られており、コミュニケーションが単一方向に限定されていたのが特徴です。

個人で発信の機会を持つケースはまれであり、一般ユーザーは新聞やテレビのようなマスメディアと同じ感覚で情報収集を行っていました。また、回線の速度が遅かったことから、発信される媒体もテキストが中心であり、コミュニケーションの手段はメールが主流でした。

Web2.0:双方向のコミュニケーションが生まれる

2000年代に入ると、通信速度の高速化によって、より大きな容量のデータをやりとりできるようになります。この状態をWeb2.0と呼び、双方向のコミュニケーションを可能にしたSNSや、YouTubeに代表される動画サイトなどが次々と普及していきました。

Web2.0では、マスメディアの総売り上げをインターネット広告が上回るなど、インターネットが一般ユーザーに広く浸透していったのが特徴です。また、スマホの登場によってポータブル化が進むとともに、IoTによってさまざまなものや情報がインターネットに接続されたことで、生活の利便性も向上していきました。

一方で、サービスの運営企業に個人情報が集中することで、情報漏えいなどのセキュリティリスクが問題視される面もあります。この点は、一部に企業にデータが集約されることが前提のWeb2.0において、解決すべき大きな課題とされてきました。

『Web3』:中央集権型から分散型へ

『Web3』は分散型のネットワークの実現によって課題の解消を目指しています。従来のようにプラットフォーム企業のような存在を前提とせず、ネットワーク参加者が相互に接続し合うP2P(ピアツーピア)のつながりを基礎とするため、情報の偏りによる弊害を解消できると考えられています。

次に、『Web3』が備えているメリットについて見ていきましょう。

『Web3』が備える3つのメリット

『Web3』は分散型ネットワークの実現によって、さまざまな課題解決を目指しています。『Web3』がもたらす具体的なメリットについて、3つのポイントから見ていきましょう。

セキュリティの向上

『Web3』の重要なメリットとしてあげられるのがセキュリティの向上です。前述のように、ブロックチェーン技術によってデータの改ざんは極めて困難になるため、個別の情報そのものが高度なセキュリティに守られるようになります。

また、個別ユーザーがデータを管理できるようになる点も、セキュリティ性の向上に大きく関係しています。Web2.0におけるほとんどのサービスは、利用するためにプラットフォーム企業へ個人情報を提供しなければなりませんでした。

万が一、企業側の誤操作や第三者からのハッキングがあれば、情報がまとめて流出してしまうリスクもあるということです。しかし、『Web3』ではプラットフォーム企業のサーバに情報を登録するというステップが必要なく、個人情報の登録なしでサービスが利用できます。

そのため、情報漏えいのリスクが大幅に解消され、より安全にサービスを利用できるのです。

サービスの継続性が向上する

『Web3』では、メンテナンスのたびにサービスが利用できなくなるということがなく、いつでも安定して利用できるようになるのも特徴です。サービスが特定の管理者によって運営されるわけではなく、プログラミングによって動きます。

プログラミングに変更がなければ、定期的なメンテナンスを考える必要がありません。メンテナンスを行うためにサービスが利用できなくなるといった心配がいらず、24時間安定して使うことが可能となります。

ユーザーがデータを保有できる

特定のプラットフォーム企業ではなく、各ユーザーが自らのデータを所有できるのも大きな利点です。Web2.0ではプラットフォーム側がデータを所有していたため、仮にサービスが停止されれば、購入していたデータであっても利用できなくなってしまいます。

たとえば、音楽配信サービスでは、アプリなどを通じて楽曲を購入していたとしても、サービス自体が停止されれば同じ環境で聴くことはできなくなってしまいます。しかし、『Web3』では複数の端末でシステムを分散管理するため、ユーザー自身にきちんとデータの所有が移るのです。

その結果、データの消失や改ざんのリスクが大幅に低減されます。

『Web3』を構成する要素

『Web3』はすでにさまざまな形で具体的に活用され始めています。ここでは、『Web3』を活用した代表的な技術・サービスをご紹介します。

NFT(非代替性トークン)

NFT(Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーン技術によって成り立つデジタルデータのことであり、日本語では非代替性トークンと呼ばれます。そもそも、トークンとはプログラミングコード上で意味を持つ最小単位の文字列のことであり、しるしや証拠といった意味を持つ用語です。

そこに非代替性という修飾語が加わることで、替えの利かない唯一無二のしるしという重要な意味を備えるようになります。現代の技術ではアート、動画といったさまざまな資産がデジタル化しており、利便性が高まる一方で、改ざんや複製のリスクが問題視されています。

そこで、これらのデジタル資産に対して1点ものであることの価値を証明するとともに、持ち主に明確な所有権を与えるのがNFTの役割です。NFTによってデジタルアートやデジタルトレーディングカード、仮想不動産といったさまざまな資産の取引が可能になります。

DAO(分散型自律組織)

DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、ブロックチェーン上で世界中のユーザーが平等に協力して共同管理を行う組織のことであり、日本語では分散型自立組織と呼ばれます。DAOの特徴は、参加者同士に階層構造が設けられず、非中央集権的に運営される点にあります。

従来型のトップダウンによるシステム運営ではなく、すべての意思決定が合議や投票による民主的な方法で行われるため、有機的で透明性の高い組織運営が行えるのが利点です。DAOの概念は、スタートアップ企業と投資家を仲介するInvestment DAOのような新たなサービスとして発展しているほか、会社組織などにも変化をもたらすと考えられています。

DeFi(分散型金融)

DeFi(Decentralized Finance)とは、ブロックチェーンの活用によって実現できる低コストかつ安全性の高い金融サービスのことです。従来の金融サービスでは、金融機関がデータを管理する中央集権型であったため、運用にあたって高いコストが発生していました。

しかし、DeFiはユーザー同士で直接取引が行えるため、やりとりの手間やコストが大幅にカットされます。このように利便性の高さと優れた応用性によって、DeFi技術はすでに仮想通貨やデジタル資産への投資、保険商品の取引といったさまざまな分野で活用されています。

『Web3』の注意点

さまざまな活用方法が期待される『Web3』ですが、現時点では運用にあたっていくつかの問題点が存在しているのも確かです。技術面と法律面の2つの側面から、『Web3』の注意点を確認しておきましょう。

技術的な課題

『Web3』の土台となるブロックチェーン技術は、まださまざまな面で技術的な課題を抱えています。従来の取引処理と比較して、ブロックチェーンは新規データの記録に時間がかかってしまうため、処理パフォーマンスが低くなるのがデメリットです。

データの改ざんも困難であるため、セキュリティに優れる反面、あとからデータを削除することは難しいのも課題といえます。また、現時点での技術では利用するために専門的な知識やリテラシーが求められる、現在の技術でも十分なクオリティが実現されているといった理由から、Web2.0からの移行ハードルも高いとされています。

『Web3』が発展を遂げるためには、技術仕様の標準化と一般ユーザーへの浸透が大きなカギになっていくと言えるでしょう。

法律面での課題

『Web3』ではネットワークのあり方が根本から変化するため、影響を与える範囲がとても膨大です。現実的な運用を考えるには、まだきちんと法整備が進んでいないのが現状です。

たとえば、NFTにおける著作権や意匠権の限界、暗号資産を使ったマネーロンダリングの問題などは、従来の法体系ではカバーしきれません。また、DAOが本格的に活用されれば、法律上の位置づけや税制上の取り扱いなども明確に定義する必要性が生まれます。

法制度の整備は、技術が一人歩きしてしまうのを防ぐためにも欠かせないプロセスです。こうした理由から、『Web3』の社会的な受容が進むまでには、まだ時間がかかると考えられています。

まとめ:『Web3』の基本を押さえて、変化に対応していこう

ブロックチェーン技術を基礎とした新しいネットワークシステムの構築を実現するためには、『Web3』の存在が欠かせません。従来のWeb2.0と比べて、データのセキュリティ性が格段に向上するとともに、個人が自らのデータを管理できるようになるのが大きな特徴です。

現時点ではまだ技術面や法制度に関する課題が残されているものの、『Web3』が人々の暮らしやビジネス環境に大きな影響をもたらすものだと考えられています。『Web3』に関する知見を深め、エンジニアとして変化に対応できる準備を進めていきましょう。

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