掲載日:2024/04/23

『データドリブン経営』とは、データに基づいて意思決定する経営プロセスのことです。近年のビジネス環境において、データの重要性はますます高まっており、『データドリブン』の考え方はさまざまな分野へ浸透しています。今回は『データドリブン経営』の基本的な内容と重要性、成功させるためのポイントや注意点などをまとめて解説します。
『データドリブン経営』とは

『データドリブン』(Data Driven)経営とは、一言で言えばデータに基づいて意思決定を行う経営プロセスのことです。経験や勘に頼るのではなく、マーケティングデータやWeb解析データのような客観的なデータに基づいて判断・行動することを指しています。
経営におけるデータの重要性そのものは、以前から着目されていましたが、近年ではより幅広い分野で活用されるようになっています。まずは『データドリブン経営』が注目されている理由について詳しく見ていきましょう。
DXとの関係性
『データドリブン経営』が重要視されている背景には、国をあげて推進が行われている「DX」(デジタルトランスフォーメーション)への動きが関係しています。DXとは、デジタル技術を用いて企業風土の変革や革新的なサービスの創出を行う取り組みのことです。
現代のビジネス環境は目まぐるしく変化しており、直前まで使われていたテクノロジーやサービスも、わずかな要因であっという間に通用しなくなってしまうリスクがあります。このように不確実性の高い市場を生き抜くには、DXの推進があらゆる企業において急務とされます。
そして、DXを実現するうえで重要となるのが、『データドリブン』に基づく経営です。企業が競争力を保つためには、データをもとに環境の変化を素早く見抜き、柔軟に受け入れた上で対処法を見つけるという仕組みが不可欠となっていくのです。
注目されている理由
『データドリブン経営』が注目される理由をより詳しく紐解くと、その背景には消費者行動の多様化・複雑化がかかわっていると考えられます。近年ではインターネットの発展やスマホの普及によって消費者の情報収集の手段が多様化しており、商品・サービスを手にするまでに無数の選択肢が存在しています。
そのため、企業としてもデータがなければどのアクションを選択すべきか判断が難しくなってしまうのです。また、技術の進歩により、データ活用の幅が広がっていることも、『データドリブン経営』が注目される要因といえます。
現在では後述するさまざまなマーケティングツールやアクセス解析ツール、SNSなどを通じて、質・量ともに膨大なデータを取得できるようになっています。これらのデータを有効活用できるかどうかが、競争優位性をつくり出す重要なポイントになっているのです。
『データドリブン』を経営に活用する3つのメリット

『データドリブン』を経営に活用することで、どのようなメリットを得られるのかを紹介します。
意思決定の精度を高められる
『データドリブン経営』では数値による合理的な根拠があるため、意思決定の精度が高まります。勘や経験に頼るよりも、決定された内容に客観性が生まれるので、合意形成もスムーズに行われやすいのがメリットです。
さらに、業務の属人化が起こりにくくなるのも『データドリブン経営』の大きな利点といえます。判断基準が個人の経験に左右されず、担当者が代わっても同様のロジックで安定した意思決定を行えるのです。
また、『データドリブン経営』には、意思決定における立場や経験の差を解消してくれるという特性もあります。たとえば、チームメンバーの経験値や年齢にバラつきがある場合、経験の浅いメンバーから自身の意見を主張するのはなかなか難しいものです。
業務の進め方や実行中の施策に違和感を覚えても、思い切って発言することは困難といえるでしょう。しかし、データによる明確な根拠があれば、自信を持って考えを主張することができます。
ボトルネックを発見できる
主観に頼らない意思決定プロセスを踏めば、思いがけないところに隠れたボトルネックを早期に発見することができます。個人の経験や勘による判断では、どうしても過去の体験が先入観を生み出し、判断にズレが生じてしまうことがあります。
「この方法でうまくいっていたから今回も問題がないだろう」という感覚から判断を誤り、業務に大きな支障をきたしてしまうというケースも少なくありません。変化の激しい現代のビジネス環境では、こうした判断ミスが致命的になる場合もあります。
『データドリブン経営』を実践すれば、直近のデータをもとにボトルネックを発見できるため、素早く改善の手を打つことが可能です。
消費者のニーズをより深く理解できる
マーケティングで『データドリブン経営』を実践すれば、消費者のニーズをより詳細に分析することができます。多様化する消費者ニーズに対応するためには、企業側もできる限りパーソナライズされたマーケティングを実行することが重要となります。
それには、膨大な顧客データの分析を行い、リアルタイムで市場や顧客の行動を可視化することが大切です。『データドリブン経営』を用いれば、顧客のニーズに合わせた柔軟なマーケティング施策が実行でき、顧客満足度の向上や新規顧客の獲得が期待できます。
『データドリブン』な経営を成功に導く4つのステップ

『データドリブン経営』そのものは、データに基づいて意思決定を行うというシンプルなプロセスです。しかし、組織やチームとして実践するには、しっかりと段階分けをして取り組む必要があります。
ここでは、『データドリブン経営』を成功させるための手順を4つに分けて紹介します。
データの収集を行う
『データドリブン経営』を成功させるためには、何よりもデータの正確な収集が重要となります。現時点でデータ収集が行われていないのであれば、質・量ともに十分なデータを集められる仕組みを確立しなければなりません。
具体的な方法としては、POSシステムの導入や顧客管理システム(CRM)の導入などがあげられます。また、データが社内の各部門で独自に収集している場合は、ITツールを用いて一元管理できるようにしましょう。
データの可視化に取り組む
続いて、収集したデータを可視化する仕組みを構築する必要があります。ツールで収集されるデータは量が膨大であるため、あらかじめ可視化する仕組みを用意しておかなければ、意思決定の材料として加工するまでに大きな労力が生じてしまいます。
後述するDMPやBIツールやWEB解析ツールなどを用いれば、データの集計や検索をスムーズに行えるようになるので、積極的に活用を検討してみると良いでしょう。
データを分析して、施策を決定する
収集されたデータは、そのままでは単なる数値であり、具体的な施策として反映させることができません。データの可視化によって活用できる段階まで進んだら、状況に応じた分析を行い、具体的な改善案として落とし込む作業が必要です。
ITツールのなかには、AIによるデータの分析や改善策の提案まで行ってくれるものもありますが、企業の実情を踏まえた判断はまだ難しい面もあります。そこで、「データサイエンティスト」や「アナリスト」といった専門的なスキルを持つ人材を確保し、より実用的なデータ分析を行うことが大切です。
施策を実行する
『データドリブン経営』によって生まれた施策は、客観性に優れている一方で、必ずしも企業の細かな実情が反映されているとは限りません。最終的な意思決定を行う際には、予算や人員といった現実的な側面にも目を向ける必要があります。
また、実行される施策もデータ収集の対象であるという点を意識することも大切です。ある程度の試運転を行ったら再び『データドリブン経営』を実践し、柔軟にPDCAサイクルを回しながら改善を続けましょう。
『データドリブン経営』の実施に役立つ支援ツール

『データドリブン』を経営で実践するには、データを効率的に扱うためのツールが必要となります。膨大なデータを手動で管理するのは現実的ではないため、状況や目的に応じたツールを導入し、効率的な運用を目指しましょう。
ここでは、代表的な4つの支援ツールをご紹介します。
DMP(Data Management Platform)
DMPとは、Web上に蓄積されたデータを収集・統合して一元管理できるツールです。ユーザーの行動履歴やターゲットの属性、広告配信による効果など、多様なデータをまとめて扱うことで、活用しやすい状態を整えるのが目的です。
なお、DMPには第三者が収集したオーディエンスデータ(外部サイトでの行動や訪問履歴など)を取得する「オープンDMP」と、自社が保有しているデータを扱う「プライベートDMP」の2種類があります。
MA(Marketing Automation)
MAツールはマーケティングに必要なプロセスを自動化するツールです。顧客情報の蓄積はもちろん、見込み顧客の抽出や育成、これまでに実践したマーケティング施策の効果検証といった幅広い業務を効率化できるのがメリットです。
SFA(Sales Force Automation)
SFAは日本語で「営業支援システム」と呼ばれており、文字通り営業活動をサポートすることを目的としたツールです。主な機能は「顧客管理」「案件管理」「行動管理」「予算実績管理」「商談管理」の5つであり、なかにはMAツールに含まれるような機能を備えたものもあります。
バックオフィスにあたる業務を自動化・効率化することで、従業員を人が担わなければならない業務に専念させられるのがメリットです。
BI(Business Intelligence)
BIとは企業内のさまざまな場所に分散しているデータを統合して、可視化と分析を行うツールです。データの一元化を行うという点ではDMPと似ていますが、DMPが主に集客や新規顧客の獲得に活用されるのに対し、BIツールは集客から施策の立案までを幅広くカバーするのが特徴です。
ただし、実際には個別のツールで対応できる業務範囲は異なり、両者の機能を併せ持ったツールも存在します。
『データドリブン経営』の注意点

『データドリブン経営』を実施する上では、いくつか注意しておきたいポイントがあります。ここでは、主なポイントを2つに分けて見ていきましょう。
社内やステークホルダーの理解を得る
『データドリブン経営』を実行するためには、さまざまな部門の協力が必要となるため、全社的な取り組みとして向き合うことが重要です。あらかじめ社内の従業員やステークホルダーと十分なコミュニケーションをとり、データの取り扱いに関する相互理解を図りましょう。
そのためには、推進者自身がデータ利活用による価値を正しく理解し、社内にどのような利益をもたらすのかを把握しておく必要があります。特に、意思決定を行う経営層が『データドリブン経営』の目的に納得し、データサイエンティストなどの専門職に丸投げしない意識を持つことが重要です。
必要な人材を確保する
『データドリブン経営』をスムーズに実践するためには、あらかじめ必要な人材を確保しておくことも重要です。『データドリブン』による経営を実現するには、前述したデータサイエンティストやアナリストのほかに、CDO(Chief Digital Officer:データの活用による競争優位性を確立するための最高執行責任者)の役目を務められる人材が必要となります。
社内で適切な人材を見出し、十分な時間をかけて育成していくか、ふさわしい人材がいなければ新規採用で確保することも検討してみましょう。
まとめ:『データドリブン経営』の実施ステップや注意点を正しく把握しておこう

激しく変化する経営環境に立ち向かうには、経験や勘のみに頼らない『データドリブン』の実践が重要となります。データを上手に活用すれば、企業の弱点を素早く見つけ出したり、顧客ニーズを的確につかんだりすることが可能です。
『データドリブン』を実現するためには、企業に散らばった膨大なデータを収集・管理し、可視化できる状態まで整備することが必要不可欠となります。この記事でご紹介した実施ステップや注意点などを正しく把握し、『データドリブン』に関する基本的な知識を身につけておきましょう。