掲載日:2024/04/04

AWSやMicrosoft Azureをはじめとしたクラウドサービスを導入する企業が増える一方で、従来からあるオンプレミスは時代遅れのシステムなのか?と思われる方もいるかもしれません。
本記事ではオンプレミスの意味やメリット、クラウドとの違いについて詳しく解説します。
オンプレミスとは

オンプレミスはハードウェアを自社で所有し、システムなどのソフトウェアについても自社で構築する運用形態です。サーバーやソフトウェアを自社で所有せずに、インターネット上で提供されるサービスを利用して運用するクラウドとは対照的です。
クラウドが2000年代に登場したことによって、従来の運用方法と区別するためにオンプレミスと呼ばれるようになりました。オンプレミスでは、ネットワークやサーバーの管理、システムの運用も自社で行います。データセンターの一部を借りて、自社が所有するサーバーを設置するハウジングもオンプレミスに該当します。
クラウドとの主な違い
オンプレミスとクラウドはサーバーなどのハードウェアやアプリケーションが自社所有であるかどうかで区別されますが、これによってコスト面などで違いが生じます。
オンプレミスの場合、サーバーやソフトウェアの購入、ネットワーク構築などの費用が発生するため、初期費用が高額になりやすいです。ただし、自社の状況に合わせて最適な運用が可能です。
クラウドの場合、サーバーなどを自社で購入する必要がないため初期費用を抑えられます。ただし、クラウドサービス事業者が提供する仕様に準じる必要があります。
このように両者の違いは大きいです。具体的な機能の比較については後段で詳しく解説します。
オンプレミスとクラウドの利用割合
総務省の「令和4年通信利用動向調査」によると、クラウドサービスを利用する企業の割合は72.2%です。利用割合は近年増加を続けており、その主な用途は「ファイル保管・データ共有」や「社内情報共有・ポータル」でした。
また、クラウドサービスを利用する理由として「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」と回答した企業も多く、サーバーなどを自社で保有する必要がないクラウドのニーズは高いです。
出典:総務省「令和4年通信利用動向調査」
オンプレミスのメリット

現在クラウドを利用する企業は多いですが、オンプレミスにはクラウドにはないメリットがあります。
●他社に依存せずに運用できる
●既存システムとの連携がしやすい
それぞれ順番に見ていきましょう。
他社に依存せずに運用できる
サーバーやソフトウェアを全て自社で所有しているため、運用体制を他社に依存することがありません。
クラウドでは、クラウドサービス提供者に運用体制が依存します。そのため、提供者側のメンテナンス日に利用できなくなるなどの問題が生じる場合があります。特に、クラウド上に構築されたシステムでサービス提供を行っている場合は、サービスを停止しなければなりません。
また、提供者がクラウドサービスの停止や仕様変更を行った場合も、それに従う必要があります。オンプレミスでは、他社の事情に振り回されることなく安定したシステム運用が可能です。
既存システムとの連携がしやすい
部門ごとにシステムを構築し多くのデータを蓄積している企業の場合、システム間での連携がうまくできないと業務に支障が出る場合がありますが、オンプレミスで自社で構築、管理していれば、柔軟な対応が可能になります。
一部をクラウドへ移行すると、他のシステムとの連携がうまく行かない場合があります。システム間の連携が必要な場合は、オンプレミスでシステム構築を行う方が無難でしょう。
オンプレミスのデメリット

今回紹介するオンプレミスのデメリットは次の2点です。
●災害やトラブル発生時に自社で対応が必要
●拡張性が低い
それぞれ順番に見ていきましょう。
災害やトラブル発生時に自社で対応が必要
オンプレミスでは、サーバーやソフトウェアを全て自社で保有しているため、システムメンテナンスや保守運用作業も自社でおこなう必要があります。
特にシステムトラブルや災害時の復旧作業は急を要するため、システム部門に大きな負担がかかるでしょう。この点は、自社でトラブルや災害時の対策を取れるようなシステム部門の体制作りが難しい場合は、大きなデメリットになります。クラウドを利用している場合は、トラブルや災害が発生してもクラウドサービス側で対応するため、自社での対応は不要です。
拡張性が低い
オンプレミスでは、サーバーやソフトウェアを全て自社で保有しているため、システムメンテナンスや保守運用作業も自社でおこなう必要があります。
特にシステムトラブルや災害時の復旧作業は急を要するため、システム部門に大きな負担がかかるでしょう。この点は、自社でトラブルや災害時の対策を取れるようなシステム部門の体制作りが難しい場合は、大きなデメリットになります。クラウドを利用している場合は、トラブルや災害が発生してもクラウドサービス側で対応するため、自社での対応は不要です。
拡張性が低い
オンプレミスは導入後のスケールアップ・ダウンといった拡張性が低い傾向にあります。機器だけをみても、スケールアップを行いたい場合は、新たにサーバーを調達する必要があり、スケールダウンを行う場合には、既存のサーバーの設置コストが一部無駄になってしまいます。
クラウドでは、利用量に合わせて自動で最適化されるものや簡単に拡張・縮小が可能なものが多く、拡張性が高いです。オンプレミスは一度構築してしまうと後から変更を加えるのが難しいため、利用状況に合わせて柔軟な対応が可能なシステム構築を行いたい場合は、クラウドがおすすめといえるでしょう。
オンプレミスとクラウドの比較

ここでは、オンプレミスとクラウドの機能性の違いを具体的に比較します。
●コスト面
●カスタマイズ性
●セキュリティ面
●既存システムとの親和性
●拡張性
●障害発生時の対応
コスト面
コスト面においては、クラウドの方が安価で導入が可能です。オンプレミスでは導入時にハードウェアなどを全て自社で購入する必要があるため、初期費用が高くなってしまいます。導入後も機器の設置場所やメンテナンス等に運用コストが発生します。
クラウドでは、低コストで導入が可能です。運用コストについては、利用量に応じて料金が発生する従量課金制を採用していることが多いです。そのため、利用量が多い場合はオンプレミスより費用が高くなる場合もあります。
カスタマイズ性
カスタマイズ性はオンプレミスの方が優秀といえるでしょう。オンプレミスは自社で環境構築を行うため、システムに合わせてカスタマイズが可能です。
クラウドでは、提供されるクラウド環境に合わせる必要があるため、オンプレミスと比べてカスタマイズ性は低いです。ただし、クラウドサービスにおいても機能を充実させ、カスタマイズ性を高める動きがあることや、サーバーの拡張性が高いことなどから、カスタマイズ性がないわけではありません。
セキュリティ面
セキュリティ面ではオンプレミスの方が自社内で一貫したセキュリティ対策がしやすいです。オンプレミスにおいては、自社の環境に合わせて強固なセキュリティ環境の構築が可能です。
また、社内利用に限ったシステムの場合は、ローカル環境で運用・構築するためさらに安全性を高められます。ただし、セキュリティ要件を高めれば高めるほど高度な知識とそれに見合った費用がかかります。 クラウドにおいては、クラウドサービス事業者が提供するセキュリティ要件に準じる必要があります。 そのため、オンプレミスの方が自社で一貫したセキュリティ対策が可能といえます。
既存システムとの親和性
システムをクラウドへ移行する際、既存のシステムとの親和性が担保されているかどうかに注意しましょう。場合によっては、システムの操作性に大きな変更が生じたり、機能にエラーが発生する可能性があります。
システム連携にトラブルが生じると、部署を跨いだ大きなトラブルが発生することもあります。すでに運用しているシステムとの親和性はオンプレミスの方があるでしょう。
拡張性
保存容量や機能を簡単に拡張できるのはクラウドの方といえるでしょう。オンプレミスでは、拡張する際にサーバーやアプリケーションを購入し、都度設定を行う必要があるため、大きなイニシャルコストがかかります。また、サーバーなどの購入にあたって、機器選定から納品・設定まで一ヶ月近い期間を要する場合もあり、ニーズに合わせた迅速な対応が難しいです。
クラウドでは、利用量に合わせた柔軟な対応が簡単に行えるため、容量や機能の拡張がしやすいという点では拡張性が高いと言えるでしょう。一方で拡張する内容のカスタマイズがききやすいのは、独自の開発がしやすいオンプレミスでしょう。
障害発生時の対応
システムトラブルなどの障害が発生した際の対応は、クラウド提供者が行うことが多いため自社の負担を減らすことができます。しかし、復旧作業はサービス提供者任せとなるため、復旧までの期間などをコントロールできません。
オンプレミスでは全て自社で対応しなければならない分、社内の工数がかかりますが, その分復旧までの期間などを自社でコントロールすることが可能です。ただし、災害発生など物理的にサーバーへ影響が及んだ際は、オンプレミスでも実質的な復旧時間のコントロールは難しいといえるでしょう。
ハイブリッドクラウドとは

ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスとクラウド、またはパブリッククラウドとプライベートクラウドを連携している運用形態です。ここまで紹介してきたオンプレミスとクラウドそれぞれの長所を組み合わせた運用が行えるため、注目されています。
総務省「令和5年版情報通信白書」では、2022年のパブリッククラウドサービス市場規模は前年比29.8%増の1,594億円となっています。この成長率から、今までオンプレミスを主流で使っていた企業の中にも、今後パブリッククラウドとプライベートクラウドを組合わせたハイブリッドクラウドを利用する数が増えていくのではないでしょうか。
ハイブリッドクラウドのメリット
ハイブリッドクラウドではセキュリティ面や拡張性などにおいて柔軟な対応が可能です。 セキュリティ面では、機密性の高いデータはオンプレミスやプライベートクラウドなどへ保存することでデータを厳重に保存できます。
拡張性では、柔軟な対応が求められるシステムなどをパブリッククラウド上に構築すれば、容易にスケールアップ・ダウンの対応が可能です。
このようにハイブリッドクラウドではオンプレミスとクラウドの長所をニーズやシステムの特性に合わせて使い分けられるメリットがあります。
まとめ│運用形態に合わせてオンプレミスとクラウドを選択しよう

今回はオンプレミスのメリットやクラウドとの違いについて解説しました。従来の運用形態であるオンプレミスですが、カスタマイズ性が高く、既存システムとの親和性も高いため、今後も完全にクラウドに置き換わることは難しいでしょう。
オンプレミスとクラウドの長所を組み合わせて運用できるハイブリッドクラウドも登場し、各社に合った運用が可能になりました。本記事を通して、ご自身が身に着けたいのがオンプレミスの開発スキルか、クラウドでの開発スキルなのかを意思決定する指針となれば幸いです。