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『Society5.0』とは? 基本的な特徴と活用事例を紹介

コラム

掲載日:2024/01/30

『Society5.0』とは、サイバー空間(仮想世界)とフィジカル空間(実世界)を融合させた社会を指します。日本が目指すべき未来の社会のあり方として、2016年に「第5期科学技術基本計画」によって内閣府が提唱した概念です。

『Society5.0』においては、経済の発展や社会課題の解決に取り組むことで、一人ひとりが快適で活躍できる社会の実現を目標としています。この記事では、『Society5.0』の基本的な考え方とどのような社会の実現を目指しているのかを解説します。

『Society5.0』とは

『Society5.0』について正しく理解をするためには、基本的な意味や目指しているものが何かを押さえておく必要があります。Society4.0までに抱えていた課題も含めて解説します。

『Society5.0』の概要

『Society5.0』とは、サイバー空間(仮想世界)とフィジカル空間(実世界)を融合させた社会を指します。内閣府が2016年に策定した「第5期科学技術基本計画」で提唱されている、日本が今後目指していく社会のあり方を表した言葉です。

『Society5.0』においては、サイバー空間(仮想世界)とフィジカル空間(実世界)を高度に融合させたシステムによって、経済の発展や社会課題の解決を目指し、一人ひとりが快適で活躍できる社会の実現を目標としています。

Society4.0までの課題

『Society5.0』という概念に至ったのは、Society4.0までに様々な課題を抱えていたからだと言われています。おもな課題として、以下のものが挙げられます。

Society4.0までの課題
・知識や情報の共有、連携が十分に行えていない
・年齢や障害の有無などによって、仕事が限定されている
・情報の探索や分析作業のハードルが高い
・労働人口の減少や地域の過疎問題などの人的な課題が生じている

Society4.0は情報社会と言われていますが、現代においては知識や情報の共有や連携が不十分で、分野を超えてうまく活用できていないという点が課題としてありました。また、年齢や障害の有無などによって就ける職業が限定されており、情報を知っている人と知らない人の間で格差が生じているという点も挙げられます。

そして、労働人口の減少や地域社会の過疎化によって、経済活動や暮らしそのものに影響を受けている地域が増えてきているという課題なども挙げられています。

『Society5.0』で目指すもの

Society4.0までの多くの課題を解決するために、『Society5.0』においてはテクノロジーを活用することによって、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させて課題解決に取り組むことを目指しています。具体的には、以下のような取り組みが進められています。

・IoTの実装による新たな価値の創出
・ロボットや自動運転技術によって、人々が活躍できる機会が増加
・AIによる探索、分析作業の負担軽減
・技術革新によって、多様なニーズに対応

IoT(Internet of Things)はモノのインターネットと呼ばれるもので、電化製品や自動車などをインターネットでつなぎ、知識や情報の共有と連携を図っていく技術を言います。また、年齢や障害などによる就労や行動範囲に関する制約を取り除くために、ロボットや自動運転車の活用が期待されています。

また、AIによって情報の探索や分析の作業の負担軽減を図り、社会の様々なニーズを技術革新で乗り越えていくことを『Society5.0』では目指しているのです。1つひとつの社会課題が解決されることにより、どのような立場の人であっても活躍できる社会の実現を目標として掲げています。

Society4.0までの流れ

『Society5.0』を実現するには、Society1.0から4.0までの流れを把握しておくことが大事です。どのような流れを経て、社会が発展していったのかを解説します。

Society1.0(狩猟社会)

Society1.0は狩猟社会と呼ばれるものであり、狩りや採集などをして人々は暮らしていました。人間社会の第1段階であり、食料を確保するためにチームが形成されたとされています。

Society2.0(農耕社会)

Society2.0は農耕社会と言われ、小麦や米などの作物を育てることによって社会を形成していきました。食料を狩猟だけに頼らず、農耕という手段によって生産することで、飢餓から解放されていった時代だと言えます。

農耕が広まったことで、人間は一定の地域に定住するようになりました。集落を構成する人たちが助け合って生活する共同体が生まれ、ルールに基づいた社会が形成されます。

Society3.0(工業社会)

18世紀後半になると、イギリスで産業革命が起こり、工業社会へと転換しました。機械の発明によって、人の力ではそれまで不可能であった大量生産の時代に突入します。

生産能力の増加に比例して人口も飛躍的に増え、製造業を中心とした工業だけでなく、多くの商品やサービスを取り扱う資本主義社会へと移行していきました。また、蒸気機関などの発明によって移動能力も高まり、多くの国や地域の交流が生まれた時代でもあります。

Society4.0(情報社会)

現代は情報社会であるSociety4.0の時代であると言われています。アメリカで1960年代頃に誕生したインターネットの普及によって、多くの情報を誰でも手軽に得られる時代になりました。

コンピューターだけでなく、スマートフォンやタブレット端末などが登場したことで、インターネットに接続すれば世界のどこにいても、必要な情報を得られる社会となっています。そして、情報社会の発展に伴って様々な課題も顕在化し、時代はSociety5.0 へと歩みを進めようとしています。

Society5.0において解決すべき社会課題として、温室効果ガスの排出削減や持続可能な社会の形成、地域や世代による格差の是正、少子高齢化に伴う人材不足や労働力不足を防ぐ取り組みなどが挙げられます。

『Society5.0』を実現するための技術

『Society5.0』を実現するためには、最新のテクノロジーの活用が欠かせません。ここでは、『Society5.0』において重視されているおもな技術を紹介します。

IoT

IoTはモノのインターネットと呼ばれるもので、電化製品や自動車、家など暮らしに欠かせないあらゆるモノをインターネットに接続し、相互に情報共有していく仕組みを言います。例えば、スマートフォンからエアコンのON・OFFを制御したり、ドアの施錠を行ったりすることなどが挙げられます。

IoTの仕組みを運用するには、膨大なデータを収集し、分析する仕組みづくりも必要です。IoTによって離れた場所からでも遠隔操作できる仕組みを構築すれば、生活の質を高めるだけでなく、医療や防災などの分野においても大きなメリットがあると言えます。

AI

AI(Artificial Intelligence)は人工知能のことであり、膨大なデータを高速に処理したり、分析したりすることに活用されています。様々なデータを学習させたAIにテキストや画像、音声などをアウトプットさせるジェネレーティブAIの利用も進んでおり、日常的に触れる機会も出てきています。

IoTによって収集されたビッグデータを分析し、あらゆるシーンに応じて最適な解決方法を導き出し、社会課題の解決に活かすことが期待されていると言えるでしょう。

5G

5Gは第5世代移動通信システムのことであり、高速かつ大容量なデータ通信、多数同時接続といった点が特徴として挙げられます。離れた場所でもリアルタイムで大容量の通信が行えるため、高齢化や過疎化が進んでいる地域においても活用が期待されています。

ロボット

『Society 5.0』において、現在よりもロボットと共存した社会が形成されると考えられています。AIを搭載したロボットによって、ものづくりや農業、医療や介護といった分野でさらに大きな活躍が期待されています。

これまではロボットの操作を人が行っていましたが、『Society5.0』においてはロボット自らが考えて行動するようになり、生産性向上や、人手不足の解消が期待されています。

ビッグデータ

ビッグデータはVolume(量)、Variety(多様性)、Velocity(速度または頻度)を高レベルで備えているのが特徴です。人間の手では全貌を把握するのが難しい膨大なデータ群を指している言葉だと言えます。

『Society5.0』では、ビッグデータを活用することで社会課題の解決につなげたり、技術革新に結びつけたりできると考えられています。

『Society5.0』で実現される世界

最後にIoTやAIなどの技術を用いて『Society5.0』で実現される世界では、具体的にどのような社会課題を解決できるのかを解説します。

交通

AIの活用によって目的地までの的確なルート表示や、道路状況などを踏まえた旅行プランの提案などが可能です。公共交通機関とカーシェアなどのサービスを組み合わせた移動や、自動運転による安全な走行などモビリティ分野において最新のテクノロジーを活用できる場面は多いと言えます。

より快適な移動が行える環境が整うことによって、地方の活性化につながったり、温室効果ガスの排出削減に貢献したりすることが考えられます。

ものづくり

ものづくりの分野においては、最新技術を用いた新たな価値の創造が期待されています。AIによるビッグデータの解析によって、サプライヤーの連携強化やリアルタイムの在庫管理、消費者のニーズの分析などに活用されています。

また、製造業の現場ではAIを搭載したロボットの活用によって、人手不足の解消や熟練した技術の継承などが期待できるでしょう。物流の分野では、自動運転が実現することでドライバー不足の解消などにもつなげられます。

防災

人工衛星や気象レーダー、ドローン、建物に設置されたセンサーなどから収集するビッグデータをAIで解析することで、災害予測に役立てられます。災害時には安全な避難経路の提示、救助ロボットによる速やかな救助、支援物資をドローンによって配送することなどが挙げられます。

さらに災害予測によって災害に強いまちづくりが形成されるなど、都市の防災力を高めることにつながるでしょう。

エネルギー

気象情報や発電所の稼働状況、家庭での使用状況などをビッグデータとして収集し、AIで解析することによって、エネルギーの需要予測や省エネ対策などにつなげられます。効率的なエネルギー利用の結果、温室効果ガスの排出削減などに結びつけていくことが期待されています。

医療・ヘルスケア

『Society5.0』では、健康寿命の延伸や生活の質の向上、医療費や介護費のコスト負担の軽減、医療従事者などの働き方の改善などが期待されています。リアルタイムで個人の医療情報などが共有されることで、自動健康診断が可能になったり、病気の早期発見につながったりするでしょう。

また、AIを搭載したロボットによって、高齢者の生活をサポートすることなどが考えられています。

まとめ:『Society5.0』で実現される技術を役立ててみよう

『Society5.0』はIoTやAIといった最新のテクノロジーを用いて、経済発展と社会課題の解決を実現し、より豊かで快適な社会にしていくための一連の取り組みを言います。人手不足の解消や多様なニーズへの対応など、様々な分野で実証実験が行われており、新たなイノベーションのきっかけとしても期待されています。

サイバー空間とフィジカル空間をテクノロジーによって融合させ、Society4.0までに解決できなかった課題に挑戦していくことが求められていると言えるでしょう。これからも様々な方面で話題が出てくる分野のため、最新情報をチェックしていくことが大切です。

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