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『NoSQL』とは?利用するメリットや採用すべきポイント、活用事例をわかりやすく解説

コラム

掲載日:2024/01/17

『NoSQL』はNot Only SQLの略と言われており、リレーショナルデータベース(RDB)ではないデータベースを指します。これまでよく利用されていたデータベースはリレーショナルデータベース(RDB)と呼ばれ、データをExcelのような表形式で管理していました。

ビッグデータという言葉が注目されるようになってから、多くのデータを格納できるデータベースとして『NoSQL』に関心が集まっています。この記事では、『NoSQL』を活用するメリットやデメリット、活用事例などを解説します。

『NoSQL』とは?

『NoSQL』)は、現在広く使われているリレーショナルデータベース(以降RDB)ではないデータベースの総称をいいます。これまでのデータベースは、OracleやMySQLなどのRDBが主流でした。

RDBにおいては、列と行をもつ表形式でデータベースを管理していました。一方、『NoSQL』はあらかじめ定義された関連データを持たないのが特徴で、特定のデータベースのことを表す言葉ではありません。

2000年代半ばから後半にかけて、RDB以外の様々なデータベースが使われるようになりました。

おもな『NoSQL』のデータベースとして、以下のものがあげられます。

データベースの種類 特徴
ドキュメント型 JSONやXMLといった形式でデータを保存、データ構造の変更に対応しやすいのが特徴。MongoDB、CouchDBなど。
ワイドカラム型 大量のデータを効率良く処理するのに向いている。Apache Cassandra、HBaseなど。
キーバリュー型 高いパフォーマンスと拡張性を備えている。Amazon DynamoDB、Riakなど。
グラフ型 ノードとエッジを使ってデータを表現し、データ相互の関連性を深く分析できるのが特徴。Amazon Neptune、Neo4jなど。
インメモリ型 データをRAM(主記憶装置)上に保存し、スピーディーな書き込みが行えるのが特徴。Redis、Amazon MemoryDB for Redisなど。
検索型 大量のテキストデータを効率的に検索することに向いている。Amazon OpenSearch Service、Elasticsearchなど。

上記のように様々な種類のものがあるので、利用する場面に応じて使い分けていくことが大切です。

『NoSQL』が注目される背景

『NoSQL』が注目されるようになった背景には、ビッグデータの重要性が増していることがあげられます。ビッグデータとは膨大で様々な内容をもったデータ群のことを指しますが、これまでのRDBは高速で多様なデータを処理するのが不得意だという点があります。

それに対して、『NoSQL』は処理速度が高く、データ構造も問わないので様々なデータの処理が可能です。そうした理由から、ビッグデータにうまく対応できる『NoSQL』が用いられるようになってきています。

しかし、『NoSQL』に注目が集まっているからといって、RDBの役割が消えてしまったわけではありません。データの一貫性や正確性が問われる分野においては、依然として多くのシーンで使われています。

具体的には、金融機関の預金データやECサイトの購入履歴などのデータがあげられます。つまり、処理するデータが『NoSQL』とRDBのどちらに適しているのかをよく見極めた上で、活用していく必要があるといえるでしょう。

『NoSQL』を活用する3つのメリット

『NoSQL』を利用することによって、多くのメリットが得られるといえます。おもなメリットとして、次のものがあげられます。

・処理速度が速い
・システムの拡張・分散性がある
・様々な形状やデータ構造に対応している

具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

処理速度が速い

『NoSQL』の特徴の一つとして、処理速度が速いという点があげられます。『NoSQL』はシンプルな構造とすることで高速処理を実現しており、トランザクションが存在しません。

RDBの場合は、データ量が増え過ぎてしまうと性能が劣化するという欠点があります。ビッグデータを取り扱う場面においては、RDBの処理速度に不安があるといえるでしょう。

『NoSQL』はRDBと比べて、高速な処理を実現できるので多くの場面で注目されているのです。

システムの拡張・分散性がある

『NoSQL』はシステムの拡張や分散性が高いといった特徴があります。スケールアウト(サーバーの台数を増やしてシステムの処理能力を高めること)に対応しやすいというメリットがあげられます。

RDBの場合、原則として1台のサーバーで稼働することを前提としているため、処理するデータ量の増加にうまく対応できないところがあるでしょう。その点、『NoSQL』においては、データ量の増加に伴った柔軟な対応がしやすいといえます。

様々な形状やデータ構造に対応している

RDBが固定されたスキーマ(構造)を必要とするのに対し、『NoSQL』は柔軟なデータモデルを採用しているため、様々な形状や構造のデータを簡単に管理・操作できるというメリットがあります。画像や音声といった非構造化データやJSON・XMLなどの半構造化データに対応しています。

昨今注目されているビッグデータには、構造化されたデータだけでなく、非構造化や半構造化されたデータが多く含まれていることに留意しておきましょう。処理速度が高く、様々な形状のデータ構造に対応している『NoSQL』は、ビッグデータの分析との相性がとても良いといえます。

『NoSQL』を活用する際の3つのデメリット

『NoSQL』には多くのメリットが存在していますが、一方で気をつけておきたいデメリットもあります。おもなデメリットとして、以下の点があげられます。

・学習コストが高い
・データ処理の正確性を担保できない
・複雑なクエリに対応しにくい

どのような点に気をつけるべきかを解説します。

学習コストが高い

『NoSQL』のデメリットとして、まず学習コストの高さがあげられます。『NoSQL』は一般的なSQLとは違って、標準言語が存在していません。通常のSQLはISO(国際標準化機構)によって規格が統一されていますが、『NoSQL』の場合はデータベースの種類ごとにクエリ実行で使う構文が異なる点に注意が必要です。

したがって、ドキュメント型やグラフ型といった様々なデータベースを活用しようとする際には、新たな言語の習得が必要になります。そのため、学習コストが高くなりがちなのが『NoSQL』のデメリットだといえます。

データ処理の正確性を担保できない

『NoSQL』で膨大なデータを処理するときには、処理速度を高めるためにスケールアウトを行うのが一般的です。しかし、スケールアウトを行うことで処理が分散してしまうと、正しい結果が算出できない可能性があります。

複数のユーザーでデータを参照したときに正しいデータが出ずに、データの一貫性を担保できないといった事態を招く恐れがあるでしょう。『NoSQL』は高速で処理を行うことに強みがありますが、一方でデータ処理における正確性を求められるような場合には、不向きであるといえます。

複雑なクエリに対応しにくい

様々なデータ形式に対応している『NoSQL』は、効率的なクエリ(データの抽出や検索などの要求)を実行しづらいというデメリットが存在します。取り扱うデータ形式の種類が増えることで、処理が複雑になってしまうことがおもな原因としてあげられます。

処理するデータが少なければ問題にはなりませんが、処理するデータが多いときには注意が必要です。そのため、複雑なクエリが要求されるような場面においては、RDBを活用してみたほうがよいでしょう。

『NoSQL』が適している3つのケース

『NoSQL』の基本的な特徴を理解した上で、うまく活用できるシーンにおいては、積極的に用いることが可能です。『NoSQL』の活用が適しているケースとして、次の3つがあげられます。

・非構造化データを扱うことが多い
・データ型の拡張が頻繁に見込まれるデータを扱う
・強いスケーラビリティが必要なシステム

それぞれのポイントについて見ていきましょう。

非構造化データや半構造化データを扱うことが多い

『NoSQL』は非構造化データや半構造化データを多く扱う場面で、優れた能力を発揮します。非構造化データとは、画像・音声・動画などが該当し、半構造化データはXMLやJSONなどが該当します。

一方、構造化されたデータであれば行と列の概念があるため、RDBで対応できるでしょう。『NoSQL』は行や列の概念を持たないデータについて大量に保持、管理が行えるので向いているといえます。

データ型の拡張が頻繁に見込まれるデータを扱う

RDBを用いたシステムであっても、後からデータ構造の変化に対応しなければならない場面があります。例えば、テーブルにカラム変更が必要になる場合、データの整合性を保ちながらシステム運用が継続できるようにしなければなりません。

また、カラムの追加ではなく、カラムの削除といった場合には実施そのものが難しい場面もあるでしょう。システムの運用中にデータ構造の変化がたびたび見込まれるときには、『NoSQL』の活用が適しています。

キーバリュー型やワイドカラム型のデータ管理方式を用いることによって、データ構造が変化したとしてもシステムの運用を継続することが可能です。

強いスケーラビリティが必要なシステム

時間帯によって、同時にアクセスする人数が大きく変わることが予想される場合についても、『NoSQL』が適しているといえます。具体的には、スマートフォンのアプリケーションやSNSなどがあげられるでしょう。

特に、SNSにおいては投稿やコメントなどをリアルタイムのデータとして処理していく性能が求められます。グラフ型の『NoSQL』であればユーザー間の関係性を見える化するのに適していますし、ドキュメント型の『NoSQL』であれば、プロフィール情報や投稿の内容などを保存したり、検索したりすることに役立つでしょう。

強いスケーラビリティ(拡張可能性)が求められるシステムにおいて、『NoSQL』はその特性を活かすことができます。『NoSQL』はそもそも、シングルアーキテクチャの制限を受けることがなく、必要に応じてスケールアウトできるように設計がなされています。

そのため、特定の時間帯に急激にアクセス数が増加したとしても、新たにサーバーを立ち上げて全体の処理速度を保つことが可能なのです。

『NoSQL』の展望

『NoSQL』はSNSの利用者数の増加や、IoT技術の進展などに伴ってますます活用される機会が増えていくものと予想されています。膨大なデータを管理する一つの方法として、『NoSQL』の基本的なポイントを押さえておくことが大切です。

また、『NoSQL』を扱えるエンジニアへの需要は今後さらに増加していくことが見込まれているため、キャリアパスの一つとして捉えておくことも重要です。『NoSQL』は前述のように学習コストが気になる部分ではありますが、毎月無料の利用枠を設けているサービスもあるので、個人の開発レベルであれば活用してみるのもよいでしょう。

システム開発においてビッグデータを取り扱う要件があった場合には、ぜひ『NoSQL』にチャレンジしてみましょう。

まとめ|『NoSQL』のメリットを活かした活用事例が多数ある

『NoSQL』はRDBのように正確なデータ処理には向いていませんが、大量のデータを高速で処理することに向いています。高い拡張性を備えているのが特徴であり、スマートフォンのアプリケーションやSNSなどに適しているといえるでしょう。

ただし、『NoSQL』さえ利用できればすべてのシステム開発が行えるわけではありません。『NoSQL』とRDBのそれぞれの特性を正しく理解した上で、適切に使い分けていくことが求められます。

画像や音声データなどの非構造化データを大量に処理するシステムの需要は今後ますます伸びていく可能性があるため、『NoSQL』を習得すれば仕事の幅を広げていくことにつながるでしょう。

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