掲載日:2024/01/15

『システム開発』は多くの人や企業が参画しながら、分業によって進めていくことが多いといえます。そのため、「『システム開発』の全体像や『工程』がなかなかわかりづらい」と感じる方もいるでしょう。
『システム開発』における基本的な『工程』や、代表的な開発手法をきちんと把握して、必要な知識を習得してみましょう。この記事では、『システム開発』の意味やステップ、開発を円滑に進めるためのポイントなどを解説します。
『システム開発工程』とは

『システム開発工程』とは、システム(またはアプリケーション)を最小限の時間とコストで、高品質に開発するための枠組みのことです。『システム開発工程』には、要件定義・基本設計(外部設計)・詳細設計(内部設計)・開発(コーディング・プログラミング)・テスト・リリース・運用保守など様々な『工程』(フェーズ)があります。
一般的には、要件定義に近い『工程』(フェーズ)ほど上流工程と呼ばれており、運用保守に近いほど下流工程と呼ばれています。開発するシステムによって必要とされる期間は様々であり、長い場合は1年以上かかることもある点を押さえておきましょう。
高品質なシステムを開発するためには、それぞれの『工程』における作業を正しく行う必要があります。『システム開発工程』があることで、プロジェクトの進捗管理や状況把握を適切に行えるため、品質向上が期待できます。
『システム開発工程』の基本的なステップ

『システム開発工程』を正しく理解するには、それぞれの『工程』(フェーズ)について基本的なポイントを知っておく必要があります。詳しく見ていきましょう。
要件定義
要件定義とは、システムを開発するにあたってどのような課題を解決したいのか、何を実現したいのかを洗い出し、定義する『工程』(フェーズ)です。要件定義においては漏れや重複がないようにしておく必要があり、後から要件が変更されるとプロジェクトの進行に大きな影響が出る場合もあります。
仕様変更が発生しないように、クライアントと適切なコミュニケーションをとり、要件定義を進めていくことが大事です。
基本設計(外部設計)
基本設計(外部設計)とは、クライアントが抱えている課題の解決や要求を実現するために、システムの仕様をまとめる作業を指します。どのような機能が必要であるかや、他の機能とのつながりなどを決め、システムに実装する機能を明確化していきます。
基本設計においては、開発者の視点だけでなく、クライアントの視点も反映させていくことが大切です。開発の段階でクライアントとの間に認識の齟齬が生まれないように、しっかりとコミュニケーションを重ねていく必要があります。
詳細設計(内部設計)
詳細設計(内部設計)とは、システム・アプリの機能や動作といった中身に関する設計をいいます。サーバーやデータベース、開発言語、APIとの連携など技術的な部分をもとに設計を進めていくことになります。
詳細設計は、開発段階の前に行われる工程です。基本設計で定義した内容をプログラマーやエンジニアに伝え、効率的に作業を行えるようにするのが目的だと言えます。詳細設計の『工程』(フェーズ)を経ることで、詳細設計書を作成します。
なお、要件定義・基本設計(外部設計)・詳細設計(内部設計)の『工程』(フェーズ)をまとめて、一般的に上流工程といいます。
開発(コーディング・プログラミング)
上流工程の作業を経て、次は実際に開発を進めていきます。この時点からの『工程』(フェーズ)が、一般的には下流工程と呼ばれるものです。
すでに決定された仕様に沿って、開発言語による開発やインフラ(サーバー、データベースなど)の構築が行われます。プロジェクト全体で見たときに、開発にかける時間と労力が最も多くなるといえるでしょう。
テスト
開発が完了したら、テストと呼ばれる『工程』(フェーズ)に移ります。テスターと呼ばれる担当者が、作成したプログラムに問題がないかを納品前にチェックするのがおもな目的です。
不具合(バグ)が発生していないか、機能が正しく作動するかなどを一つずつ検証していきます。問題が見つかったときには、テスターは開発者に知らせて修正してもらい、再度検証します。
テストを疎かにすると、未完成のシステムをリリースしてしまうことになり、評判を低下させる恐れがあるので注意が必要です。
リリース
IT分野におけるリリース(公開)とは、ソフトウェアを提供可能なパッケージなどにまとめ、ユーザーが導入・使用できるように提供することを指します。実際のリリースにおいては、予定されているすべての機能が一度にリリースされるわけではなく、段階的にリリースされることもあります。
運用・保守
運用・保守の『工程』(フェーズ)は、リリース後に問題がないかをチェックするのがおもな目的となります。リリースしてから間もなくは予期していない不具合が発生することもあり、システムを安定的に稼働させるために必要な人員を確保しておくことが重要です。
システムは一度リリースすれば終わりというものではなく、リリースした後もメンテナンスを行わなければなりません。急なトラブルなどにも対応できる体制を事前に整えておきましょう。
『システム開発工程』の種類

『システム開発工程』には、いくつかの種類がある点も押さえておきましょう。それぞれの『システム開発工程』について、基本的な特徴を解説します。
ウォーターフォールモデル
ウォーターフォールモデルとは、滝のように上流から下流に向かって進んでいき、戻ることのない一方通行の開発プロセスのことを指します。ウォーターフォールモデルの最大のメリットは、一つの『工程』(フェーズ)が完了してから、次の『工程』(フェーズ)に着手する流れとなるため、進捗状況の把握を行いやすい点があげられます。
そのため、品質をある程度維持しやすいのも特徴としてあげられるでしょう。しかし、ウォーターフォールモデルの場合、仕様変更や確認漏れなどが生じてしまったときに多くの時間やコストが発生してしまうことに注意が必要です。
仮に、上流工程でミスが発生すれば、大きな負担となります。前の『工程』(フェーズ)が完了するまでは次の『工程』(フェーズ)に進めないという特徴があるため、スピーディーに進めなければならないプロジェクトにはあまり向いていないともいえます。
アジャイルモデル
アジャイルモデルは、スピーディーにプロジェクトを進行させたい場合に向いている開発工程モデルです。前述のウォーターフォールモデルとは異なり、随時修正を行うことを前提としているため、設計段階では詳細を決めるよりも、スピード重視であるのが特徴だといえます。
デメリットとしては、進捗管理が難しい点があげられます。仕様変更における柔軟性は大きなメリットといえますが、一方で仕様変更の回数によってはリリースのタイミングが大幅に伸びてしまう可能性があります。
スクラム開発
スクラム開発はアジャイルモデルの一種であり、チームを編成してそれぞれの役割やタスクを分散し、コミュニケーションを図りながら開発を進めていく手法です。アジャイルモデルのなかでもコミュニケーションがより重視されるものであり、誰が・いつ・何をすべきかという点が明確になっている必要があります。
各作業が他のメンバーの作業を支えている形となるため、チームワークが大切です。多くの作業を同時進行で行える点が、スクラム開発のメリットだといえるでしょう。
スパイラルモデル
スパイラルモデルとは、サブシステムごとに開発を進めていくモデルであり、一つひとつの開発はウォーターフォールモデルとして進めていきます。スパイラルモデルを採用するメリットは、サブシステムごとに計画を立てられるため、途中で仕様変更が行われても、柔軟に対応しやすい点があげられます。
また、試作品をクライアントに随時チェックしてもらいながら進めていけるので、クライアントと認識を共有しやすいといえるでしょう。ただし、不具合が発生するたびに何回も修正を行わなければならないので開発コストが高くなり、プロジェクトの進捗管理を行いづらいのが難点でもあります。
『システム開発』を円滑に進めるためのポイント

システム開発を円滑に進めるためには、いくつかの点で注意しておく必要があります。どのような点に気をつければよいかを解説します。
コミュニケーションを重視する
開発の遅れやトラブルの発生を防ぐには、すべての関係者がお互いに適切なコミュニケーションをとっておくことが大切です。特に、『システム開発工程』の最初に取り組む要件定義においてはコミュニケーションが不足していると、後述の仕様変更が頻繁に発生する原因にもなるため、注意しておきましょう。
仕様変更はリスクの把握が大事
プロジェクトが下流工程の段階に入ってから仕様変更が生じてしまうことは、実質的に開発するシステムそのものが変わることを意味するといえます。一部分の変更であっても、連携する機能(ユニット)に影響が出る恐れがあるので、大幅な見直しと修正のためのコストがかかるといえるでしょう。
また、仕様変更によってスケジュールが遅れてしまい、結果的に開発コストが膨む懸念もあります。後から仕様変更が発生するのを防ぐためには、上流工程の段階で仕様をきちんと確定させておく必要があるのです。
まとめ:『システム開発工程』の流れや開発モデルの種類を押さえておこう

『システム開発』は様々な『工程』(フェーズ)によって、開発が進められていきます。開発モデルもウォーターフォールモデルやアジャイルモデルなど複数あり、プロジェクトによって適したモデルを選択することが重要です。
また、開発が下流工程に移ってからの仕様変更は、大きな労力やコストが伴う場合があります。開発に携わるメンバーとのコミュニケーションを重視し、円滑にプロジェクトの進行が行えるようにしていきましょう。